第二話 手作りのワンピース
前回のあらすじ
ソフィアは、また転校することになり不安を感じていた。母エレナに励まされ、新しい学校でも頑張ろうと決意を新たにした。父フェリックスにも不安を打ち明け、励ましの言葉をもらった。ソフィアは家族の温かさに包まれ、新しい一歩を踏み出す勇気を得るのであった。
ソフィアはフェリックスの昔について、ふと思いをはせた。
「ねえパパ、どうしてマジシャンになったの?」
尋ねると、フェリックスは昔を懐かしむように語り始めた。
「ソフィアが生まれる前、パパがまだ君と同じくらいの頃のことだ。ある日、サーカスを訪れたパパは、エドワードさん、つまり今の団長のマジックショーを見て、そのかっこよさに心を奪われてしまったんだよ」
「へえ、それで?」
「マジックの魅力に取りつかれたパパは、公演の後にエドワードさんの楽屋に押しかけ、弟子入りをお願いしたんだ。だが、簡単にはいかなかった」
「どうしてかというと、エドワードさんには跡取りの息子、ギルバートさんがいたからなんだ。ギルバートさんは将来サーカス団を継ぐ人だから、エドワードさんは他の弟子を取るつもりがなかったんだ」
ソフィアは驚きに目を見開いた。
「えっ、じゃあパパはどうしたの?」
「パパは諦めずに、エドワードさんの楽屋に通い続けた。ギルバートさんとも仲良くなって、一緒にマジックの練習に励んだ。ギルバートさんは最初はとまどっていたけど、次第にパパの情熱と才能を認めてくれるようになったんだ」
「ギルバートさんがパパの味方になってくれたおかげで、エドワードさんもパパの熱意を認めてくれた。正式に弟子入りが許されたとき、パパはとてもうれしかった」
「すごいね、パパ! ギルバートさんとも仲良くなれて良かったね」
「ああ、ギルバートさんとはライバルでもあり、友でもあったんだ。あの頃は充実した日々だった」
「ギルバートさんは今はサーカス団にいないけど、いつかまた一緒にマジックができる日が来ると信じているよ」
「うん、そうだといいね」
ソフィアは願わしげにつぶやいた。
フェリックスはテーブルから立ち上がると、
「ごちそうさま。それじゃあ、練習に行ってくるよ」
そう言って練習場へ向かって歩いていった。
フェリックスの姿が見えなくなると、キャラバン内の一室で、エレナはソフィアにワンピースを手渡した。
「ソフィア、このワンピース、ママが愛情を込めて縫ったの。」
ソフィアは大切そうにワンピースを身につけると、エレナは優しく髪をとかし、リボンで結んだ。
「ママが作ってくれた服を着ていると、いつもママの愛情に包まれている気がするの」
二人は鏡の前に立ち、ソフィアは深呼吸をして自分の姿を映し出す。
「ママ、今の私、ちゃんとなってる?」
「ええ、とっても素敵よ。胸を張って、堂々と学校に行きなさい」
ソフィアはうなずき、エレナに見送られながらキャラバンを後にした。
しばらく歩くと、色とりどりのテントが並ぶ練習場が眼前に広がった。団員たちはそれぞれの持ち場で練習に励んでいる。
練習場を横切るソフィアの視界に、クリストフの姿が捉えられた。クリストフはソフィアに気づくと、柔らかな笑顔を浮かべ、大きく手を振った。
「ソフィ、がんばろうね!」
ソフィアはクリストフに手を振り返しながら、切ない表情を浮かべた。
「ありがとう、クリス。でも、本当は同じ学校に通えたらよかったのにな……」
「そうだね。ソフィは女子校だから一緒に通えないのは残念だ。でも、放課後は一緒に練習しよう。」
「ありがとう、クリス!」
ソフィアは、精一杯の笑顔を見せた。
クリストフもソフィアの姿を見送りながら、大きく手を振った。
「ママの言葉に勇気をもらったけど、やっぱり不安だらけ。でも、エミリーとの思い出が心の支えになってくれる。新しい学校でも、素敵な友達に出会えますように……」
ソフィアは祈るようにつぶやきながら、学校へと歩き出した。
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