第35話 修行

☆☆☆山へ


俺は京都を送ると、家には帰らずに山へ向かった。


と言うのも、次に倒すべき相手がクソ親父であるため、今の俺じゃ敵わないのは一目瞭然だ。


だからこそ、以前の勘を取り戻す必要がある。とあれば、山に籠るのが手っ取り早い。


ここには野生の勘を取り戻す全てが詰まっている。


そういえば、京都と最初に出会った時って、誘拐されそうになってたのを、俺が殴って助けたんだよな。


あの時ほんと男だと思ってたんだよな……


しかも、俺の力に惚れ込んで道場入りまでしたし……京都はクソ親父の指導を受けていたが、明らかに俺より優し目に教えていた。


だって、滝から突き落とされないし、熊とも戦わされない。山にも放置されていなかった。


まあ、今思えば、こんなことよその子供にやったらそれはそれで問題だろうが……


だけど、改めて今日……俺は京都に告白したんだよな。


思い立ったらすぐ行動を信念としていたけど、流石に早計過ぎたのだろうか……


冷静になって考えても俺は京都のことが好きだ。


いや、好きになったと気付いた途端。めちゃくちゃ京都が可愛く見えてくる。


事あるごとに、俺の傍にいてくれる女子とか最高じゃん。ぞんざいに扱っていた過去の俺をぶん殴ってやりたい。


顔だってかわいいし、小柄だから小動物みたいに可愛い。それに普段男子っぽい恰好をしているせいか、今日のワンピースとか破壊力がやばかった。


あぁ……京都かわいい……付き合いたい。付き合いたい……


てか、俺にべったりだったのに……なんで告白した途端。そんな拒絶するんだ……


「京都ぉ……」


そんなことを考えていると、野生の気配を感じる。


「ぐるるるる!」


熊が出てきた。当然修行の相手はこいつだ。俺よりも大きな体格。圧倒的な力を持っている存在だ。


仮想クソ親父としては若干劣るが、仕方がない。


「ぐぉぉぉぉぉ!」


熊の雄たけびと共にロックアップする。本来なら熊の倒し方は殴って脳揺らして終わりなのだけど……


今回は正々堂々戦うことにした。


熊に捕まれる。かなり力が強いな……俺が押されるとは……


熊相手に力負けするぐらいでは、クソ親父に勝つことはできない。


「京都と付き合うため……京都と付き合うため……!」


そう、こんな熊相手に苦戦してるようでは……


力を足と腰に集中する。


これは、技で投げるのではなく力で投げるんだ……


「うおおおおおおおお!」


力……力……力っで……


「ぐがががが!」


そのまま勢いで熊を持ち上げ近くにあった木にぶん投げた。


「おらぁぁあ!」


熊は俺に恐れを抱いたのかそのまま逃げていく。


とりあえず熊に勝利することが出来たな……


力も衰えていない。安心はできないが……熊をぶん投げられる力は残っていた。


よし、これをあと何回か繰り返せば……


いや、それだけじゃ足りないか……クソ親父であれば熊ぐらい簡単にのせる。


まだ足りない……もっと俺は強くならなければ……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る