ことりばこ
佐藤 楓
第1話
近隣の者が畑で取れた野菜でも置いていったのだろうと
「一言声でもかけていってくれればいいものを」
じっとりと汗ばむ暑さの中、首にかけたタオルで額の汗をぬぐいながら裸足で廊下を渡る。
土間でサンダルを履き、無施錠の扉を豪快に開くと、足元に塗装のされていない二十センチ四方の木箱があった。
「なんだ、これは?」
身を
「丸い穴があるけど、何も見えない。巣箱? 開けてもいい?」
「……」
誠二は答えに渋った。得体の知れぬものを子どもに開けさせるのは抵抗がある。
「お父さんが開ける」
そう言って蓋と思しき上部の板に手をかけたものの、びくともしない。
釘を打っているようにも見えないが、どういう細工なのだろうと首を傾げながら、諦めて立ち上がった。
「このまま、ここに置いておこう。そのうち、持ち主が現れるだろう」
日の当たる場所ではないので、とりあえず玄関先に置いたまま、誠二は自宅の仕事部屋に籠った。
そろそろ終業前のリモート会議が始まる。
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