第6話 ぼったくり爆弾販売員と摩訶不思議な店員
「———誰でも手軽に10メートル級の岩石も破壊できる爆弾いりませんかー!? しかも1つたったの5000マニ! これさえあれば大抵のモンスターは倒せます!」
レティシアとの婚約が決まってしまった次の日。
俺は早速学園の一角で、爆弾の入った箱の前に立って声を張り上げ、爆弾の販売を開始していた。
しかし……。
「何だよあの黒いの……」
「爆弾って……あんな小さいのでそんな高い威力出るわけないだろ……」
「何がしたいんだ、アイツ……?」
「さぁ? 頭がおかしいんだろ」
幾ら金遣いの荒い貴族のボンボン達の巣窟である学園でも、流石にこんな怪しさ満載の物を買う人などまず居ない。
「へぇ……面白そうね。ただ……貴方が言う威力は本当なのかしら?」
初めて買う人が大貴族でも無い限り。
レティシアが興味を示したことにより、周りの生徒達がざわめき出す。
俺は予め土下座で頼み込んだレティシア様の俺が考えた問い掛けに、これみよがしに周りに聞こえる程の大声で言葉を返す。
「勿論です! 何なら……一度試してみますか? 彼方に中級魔法用の的を置いていますので、是非ともあそこに投げて下さい」
「因みにどうやって使うのかしら?」
「爆弾に魔力を流して的に向かって投げて下されば、あとは物にぶつかった衝撃で爆発します」
「へぇ……簡単ね」
レティシアはそう言うと、爆弾に魔力を流し込み……軽く的へ投げる。
爆弾が的に飛んでいくと共に、生徒達の視線を的に吸い込まれていった。
———ドカァァァァンッッ!!
的に爆弾が当たると共に爆発し、轟音を響かせながら爆炎を上げる。
爆発によって抉られた土が舞い上がり、砂埃となって的を隠す。
さぁどうだ……!
俺の予測が正しければ、多分的は破壊されてるはず———キタァァァアアアア!!
砂埃が晴れ、吹き飛んで周りに粉々になって散らばる的の姿を確認した俺は、内心喜びの雄叫びを上げる。
同時に、この演習を見ていた生徒達の間でどよめきが走る。
「う、嘘だろ……!? 本当に中級魔法用の的が木っ端微塵になったぞ……!」
「あんな小さいので俺達の魔法より威力が高いだと……!?」
「めちゃくちゃ凄い……」
あと一押しといったところか……よし、トドメと行くぜ!
くっくっくっ……お前らの財布口をガバガバにしてやるからな!
「お客様、如何でしたか?」
「良いわね……10個貰うわ」
あ、あれ……?
確か予定では1つじゃなかったっけ?
何て一瞬思うも……まぁ買ってくれるならいっか、と俺は考えるのを放棄してお金と爆弾を交換する。
「お買い上げありがとうございました!」
「ええ、また買うわ」
しかしその言葉では終わらず……俺が頭を下げるあと、レティシアが俺の耳元で『頑張って、アルト』と囁いてきた。
驚いてレティシアを見れば、誰からも顔が見えない位置で楽しそうに悪戯っぽい笑みを浮かべ……惚ける俺を見て、満足気に校舎に戻って行った。
そんな彼女と入れ替わるように、無数の生徒が集まって来る。
「———お、俺買います!」
「俺も2個買います!」
「わ、私も! これを親に送りますわ!」
「私には5個頂戴!」
「ぼ、僕には3個……」
レティシア……何がしたかったんだ?
まぁそれより———くくっ、まんまと掛かりやがって……このボンクラ共め。
俺は疑問など一瞬で頭の片隅に追いやり、
次々と渡されるお金を受け取りながら内心ほくそ笑む。
何なら顔にも出ていそうだが……そうなるのも仕方ないと思う。
実はこの爆弾……原価は無料、作るのも意外と簡単なのだ。
それも多分作り方を教われば、大体数十分で習得出来るレベル。
つまり……超ぼったくり。
あああぁぁ儲かるなぁ〜〜。
俺はあとでレティシアにだけはお金を返すことを誓い、ウキウキな心で客を捌く。
このあと、あまりに大盛況過ぎて授業が始まるのも無視して並ぶ生徒が続出し、生徒会長室に2日連続お世話になってしまった。
処罰としては、学園内で爆弾を売るのを禁止された。
まぁその代わり———210万マニ稼げたので良しとすることにしよう。
「———ここか……?」
反省文を10枚ほど書かされた俺は、精霊石を買うべく全エンドクリアしたと言うスレ民から教えて貰った場所に来たのだが……外見がとんでもなくボロい。
少し押せば倒壊さそうな程ボロい。
「え、待って。本当にここなのか?」
思わず疑うも……俺のスマホの地図アプリでは確かにここになっている。
また、検索した住所もスレ内に書かれたものと全く同じで間違っていない。
「なら合ってんのか……? まぁ入ってみるだけ入ってみるか」
俺は殆ど崩れかけみたいな木造の建物の中に入る。
すると———外からは想像出来ない綺麗な部屋の中に、大小様々な精霊石が大量に置いてあった。
「いやどう言う仕組みだよ」
「———お客さん……?」
全く理解出来ない内装にツッコむ俺に、店員であろう青年が突然隣に現れた。
青年は驚く俺に柔和な笑みを浮かべる。
「久し振りのお客さんだね。何を買っていくんだい?」
「じゅ、10万マニの精霊石を21個です……」
俺がそう言うと、青年が指を鳴らすと同時に大量の精霊石の山の中から21個の石が一人でに浮かび上がる。
更にそれだけでなく、いつの間にか目の前に椅子と机が出現し、机の上に精霊石が置かれた。
「1個10万マニならこれかな。21個も何でいるのかは分からないけど……これが10万マニ規模の中で1番良いと思うよ」
「は、はぁ……」
「あ、お代は100万マニでいいから残りは生活費に充てなよ。借金生活の君には貴重なお金だろう?」
「え、あ、え……?」
「じゃあまた会おうね」
そんな店員さんの言葉と共に、俺は気付けば店の外に出ていた。
しかも精霊石がいつの間にか袋に纏められているし、財布の中身が100万減っている。
もうわけが分からん。
「てか、マジで聖人か何かかな?」
これじゃあぼったくった俺がより悪い奴に見えるじゃん。
まぁ金が必要でなりふり構っていられないからセーフだろ、セーフ。
「……とりまスレ民に訊くか」
俺は普段とは違い、あまりにも異質な店主の正体を知るのと、この謎の敗北感を誤魔化すようにスレを開いた。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
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