幼馴染みの最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。

きなこもち

アッシュとナタリー~幼少期~

アッシュとナタリーは、ルフト大国の外れにある田舎町、ピエニ町で育った。


アッシュもナタリーも両親はおらず、町にある教会に拾われた孤児であった。


アッシュは、白銀の髪とエメラルドグリーンの瞳を持ち、肌の色は透けるように白かった。

幼少期は一見すると、美少年にも美少女にも見えた。


だが、アッシュの性格は、容姿とはかけはなれた、荒れくれ者であった。


シスターのいいつけは守らず、規則は破るものだと言わんばかりに好き勝手に行動していた。


珍しい容姿を、町の少年にからかわれた時は、気を失うほど少年を殴り付けた。


息子が怪我をさせられたと教会に怒鳴り込みに来た、少年の両親に


「失せろボケ!!」


と悪態をつき、シスター達を辟易させた。


そんなアッシュのことを手に負えなくなったシスター達が、お世話係として付けたのが、ナタリーであった。


ナタリーは、ツヤツヤの黒い髪に薄茶色の瞳をした、手のかからない少女だった。


シスターの言いつけを破ったことはないし、同じ孤児の年下の子どもたちに対しても、世話焼きで優しかったので、シスターからも子ども達からも、一目置かれる存在だった。


シスターから突然、荒れくれ者アッシュのお世話係に任命されたナタリーは、内心


(アッシュは無理だ。。。)


と思った。しかし、シスター達から、最後の頼みの綱だと言わんばかりにお願いされると、シスター達の期待に応えたいと、不憫な使命感から、アッシュのお世話係を受けたのだった。



ナタリーが、アッシュに声をかけた。


「アッシュ、これからは、外に出るときは私と一緒に行くから。あと、教会内で行動するときも私と一緒ね。シスター達を困らせるようなこと、絶対しないでよね。」


アッシュはナタリーを一瞥し、はぁ?という顔をしてプイっと無視をした。



アッシュが好き放題しても、教会が彼を放り出せないのには理由があった。


それは、アッシュが教会の前に捨てられていた時期、教皇が予言した内容に関係している。


『ピエニ町に捨てられた、白銀の髪の赤子が、世紀の大魔法使いになる。』


この時期にピエニ町に捨てられた白銀の髪の赤ん坊はアッシュしかおらず、アッシュは大魔法使い候補として、教会で面倒をみることになったのである。



ナタリーがアッシュのお世話係に任命された後も、アッシュはこれまで通り問題を起こし続けた。その度にナタリーはアッシュに抗議したが、聞き入れる様子は微塵もなかった。


アッシュ8歳、ナタリーが10歳の出来事である。


その日も、アッシュは勝手に外出しようとしているのをナタリーに呼び止められた。


「アッシュ!!勝手にどこに行く気なの?もうすぐ夕食の時間よ。戻って!!」


「うるさい。ついてくんな。」


そう言うと、アッシュは路地の方へ走っていってしまった。


ナタリーはアッシュを追って、路地裏に入った。アッシュの後ろ姿が見えたため、路地裏の角を曲がった時だった。


行き止まりなのに、アッシュがいない。


不思議に思い、ナタリーがキョロキョロと辺りを見回していた時である。


ナタリーの視界が真っ暗になった。


アッシュとナタリーは何者かによって、連れ去られたのだった。




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