第9話 不審なDVD

前回書いた「アドレス」絡みで思い出した話がもう1個。


昔、住んでいたアパートのポストに、差出人不明の謎の袋が投函されていた。

封筒にはパソコンで書かれた紙がクリップでとめられており、「見終わったらこちらに感想を下さい」とアドレスが書かれている。


気持ち悪いが、共用のゴミ箱もなかったので、そのまま置いておくわけにもいかず、とりあえず持ち帰って捨てることにした。


部屋に戻っておそるおそる袋を開けてみると、中にはDVDが1枚入っていた。

タイトルも印字も何もない。




いや、絶対に怪しいだろ。

100%危険なやつだ。




でも、犯人はなんのためにこれをポストに投函したんだろう。


こんな金のかかる手の込んだ嫌がらせをわざわざ全ての家のポストに投函しているのだろうか。

一体なぜ?


???

????

?????


考えても考えても、答えは出ない。



このDVDには一体何が映っているんだろう。

中身はもしかしたら殺人事件の映像かもしれない。

あるいは殺人予告かもしれない。

あるいはこのマンションが何者かに狙われているのかもしれない。



そんなことが頭をよぎり、恐怖と好奇心の間でずいぶん長い事葛藤した。


そのまま捨てようかとも思ったが、何が映っているのかわからない以上、どうしても怖くて捨てられなかった。


残念ながらDVDプレーヤーは所持していなかったので、見るためにはパソコンで見るしかない。


そのときタカナシは思った。

いや、待てよ!一番可能性が高いのは、ウィルスではないだろうか!!


うん、それが一番説得力がある。これを配布し、パソコンに入れ、ウィルス感染させる…それこそが、犯人の目的なのではないだろうか。


ちょうど世間では当時強力なウィルス感染が話題になっていた。


うん、そうだそうだ。危険だからやっぱり触らないでおこう。



タカナシは捨てられないそのDVDを押入れの奥に閉まった。



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—数年後。



引っ越しの準備をしていたら、DVDが出てきてしまった。


なんてことだ。

早く捨てればよかった。


引っ越し作業をずいぶん中断された。



またしてもタカナシは、DVDをどうするか悩まされ、結局捨てられずにダンボールに詰め込んで次の家に持ち越した。



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—数年後。



使っていたパソコンが壊れたので買い替えることにした。

データを移し終わったタカナシは閃いた。


今だ!!この廃棄する方のパソコンで、あのDVDを開けばいいのだ!!

ウィルスだったとしても、廃棄するだけなので壊れようが問題ない。



ついに数年越しのもやもやが解消される日が来た!!!


さあ、一体何が映っているのか!!!


ワクワクしながらDVDを読み込んだ。














—…中のデータは、空だった。










チーン(。-_-。)






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