第29話 極東ヒカゲ。よろしく①
今日はエマ――極東ヒカゲのデビュー日。
今日の為に私は毎日の配信でアホみたいに宣伝を重ね、そして初配信に 1つ変わった手法を取り入れた。
「おーっす! お前ら! 極ライブの極道ミネネが来たぞー!」
コメント欄:
『おーっす! じゃないがw』
『人のデビュー配信で何してんだw』
『授業参観かな?』
『分かってたけど開幕から姉御が出てくるんかい!』
『妹の初配信に出しゃばってくるなwww』
『相変わらずの破天荒で草』
………………………………
そう、これは極東ヒカゲの初配信。
しかし、私はエマを差し置いて開幕と共に登場していた。
「あーっはっはっは! ヒカゲが来ると思った? 残念! ミネネ様だ!」
コメント欄:
『早くヒカゲちゃん出せ!』
『今日は姉御の気分じゃない』
『可愛い女の子と喋りたい』
『失せろ』
『うざ可愛い』
………………………………
「ふむふむ。何人か私の配信で見た名前があるなぁ。失礼なこと言ったの覚えとくからな?」
コメント欄:
『姉御最高!』
『ミネネさん可愛い!』
『やっぱり姉御最高だな!』
『姉御以外ありえない!』
『ひぇっ』
『脅迫やんけw』
『え、なに? コメ欄こわい……』
………………………………
視聴者たちの掌はクルックルだ。そのうち手首がねじ切れるだろう。
「初見さんに怖がられてるじゃねぇか! お前らのせいだぞ!」
そんなこんなで冗談を挟みつつ本題に入る――。
「私の配信を見てくれてる人なら承知してるだろうけど、今から出てくるヒカゲは私の妹だ。可愛い奴なんだが、どうにも人見知りでな。そんなわけで、私はヒカゲのサポートに来た。妹のヒカゲに失礼ぶちかました不届き物は、私が闇討ちするぜ! そこんとこも、よろしくな!」
基本的には初配信は当人が一人で実施するのが通例なのだろうが、エマの場合はいきなり一人でやらせると一言も喋らないで配信を切りかねない。
そんなわけで、ちょっと変わったやり方になるが、私が配信を上手く回しつつエマの言葉を引き出すことにした。
あと、話題性のある極東ミネネが出てくるということで配信を見に来る人もいるだろうという打算も多分に含まれている。
「それじゃあ、前置きが長くなって悪かったなぁ。そろそろ妹のお披露目と行くぜ!」
私の言葉に視聴者たちがざわつく。
コメント欄:
「遂に来るのか……」
「生配信であの声が聞けるのか」
「ドキドキ」
「来るぞ来るぞ~!」
「うおおおおおおお!」
………………………………
熱気に満ちた生配信。しかし、良い意味でも悪い意味でも、エマは平常運転だ。
「極東ヒカゲ。よろしく」
コメント欄:
「きたあああああ!」
「やば……」
「やっぱめっちゃ声可愛い!」
「サンプルボイスでも思ったけど唯一無二の声だわ」
「加工なしでこれ……?」
「メスガk……。おっと誰か来たようだ」
………………………………
遂に、エマの声が世界に発信される。
唯一無二、あまりにも特徴的な高めの声質。
聴いた瞬間に覚えてしまうような、理屈を抜きに嫌でも頭に残ってしまう声。
それはたとえ100人の中に混ざっても埋もれることは無い。
それほどに奇抜、鮮烈、そして何よりも
彼女のその声は、奇しくもメスガキキャラが板につきそうなものだった――。
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