第24話天使の顔をした魔王
先程の手合わせで、あれほど激しく動いていたにも関わらず、どちらも汗ひとつかいていない。
表情も始める前とまったく変わらぬまま、これには流石に驚いた。
玲は戻って来て早々、お腹空いたーと言い出し猿田を連れてコンビニへと向かった。
残った私達は早速、稽古してもらうことになったのだが、玲とコンビニへ行く猿田に行かないでと目線を送り助けを求めたが、すぐに帰ってくると言われとりあえず、渋々頷いた。
別に、天明とふたりきりが嫌という訳ではない
だけど、あの手合わせを見た後だからか、流石に自分も天明のお相手をする羽目になったらと、変に緊張してしまうのだ。
暇だから、余計誘われたらどうしようとヒヤヒヤしていれば、天明から口を開いた
「海、手合わせしてみる?」
「え?!…む、無理です」
「…ふふ、冗談だよ」
先程の2人の手合わせをちゃんと見ていたからこそ、はっきりと分かる。
確実に今、彼と手合わせなんかしたら命に関わる
流石に慌てて、返事を返すと天明は冗談と楽しそうに笑い、私の持ってきていた双剣ではなく、また別の剣を手渡された。
「これは?」
「銅の剣、これなら怪我してもすぐに傷が治るから海は慣れるまでこっちを使った方がいい。ソレはまだ危ないネ」
ソレと、私の横に置いてある双剣を指差す。
流石に銀の刃ではまだ早いと判断した天明の言葉にすかさず了承した。
最初は、剣の持ち方や扱い方を覚えてと言われ早速持ち方を教わる
「うん、両手に持って。振り方によっては握り方が変わってくるから、一通り覚えたら後は楽になる、海…双剣を扱うならスピードだよ、いかに相手より早く動けるかが大事」
持ち方を教わりながら、双剣はとにかく速さが大切だという事を学んだ。
鞘から抜く時、剣を振るう時など構えや敵の攻撃を防ぐ場合も、全てこの速さだと。
「…正直、双剣は1番難しい。だから海は刀も握れる様にならないと、一応ここに銅の刀もあるから、これも握って刀の扱い方を覚えるといい」
最初はこのぐらいと、言われ暫くはこの銅の刀と双剣を使って練習することになった
最初は1人でこれを振るう練習、それから体力を鍛えるために、走りと縄跳びも追加。
走りは分かるけれど何故縄跳び?と聞けば双剣を扱うには、ちょうど言い鍛え方らしい
両手に握り腕や足の筋肉を鍛え、飛び跳ねる事でリズム感を鍛えられるのは天明曰く一石二鳥なのだとか。
後は剣の重さに慣れるために、普段から持ち歩くのが大事らしく、街を歩く時には剣道でよく使われる竹刀袋に入れて歩く事となった。
天明に言われたのだから、さすがにきちんと守らなければ。
「それに慣れたら次は死人狩りにいくよ。早く立ちまわりと振り方に慣れて…その刃じゃ死人は狩れない、はやく銀の剣を使える様になってネ?」
「し、死人狩り…がんばります!!」
この剣や刀に慣れれば終わり、ではなくその後はすぐに死人狩りが待っているらしい
決して、冗談で言っているとは思えない天明の表情から察するに、彼は本気で言っているのだろう
死人は、未だに見た事がないし正直怖いけれど天明が言っているのだから返事は一つしかない
力強く、頑張りますと言えば天明は穏やかな笑みを浮かべた
「うん、頑張って。じゃあとりあえずは両手に持って、腕を横に広げて…そのまま20秒Tの文字をキープして」
天明に言われるがままに、剣を両手に持ち腕を広げそのままキープを続けると、剣の重さに腕がプルプルと震え、T状態を保つが腕が疲れて下へと剣が下がってしまう
すると、天明は私の腕に銀の刃を向けると一言恐ろしい事を放った
「それ以上、lowerしたら…この腕切るヨ?」
「ぐぬぬ…て、てんめいさんー?!きっつい!」
「ホラ、ちゃんとUPして?」
バランスを崩し傾く度に私の持つ剣を、天明の銀の刃があたりカキン!と音が響き、その度にハッとしどうにか力を入れて、まっすぐと腕を張るがなかなか20秒は長い
プルプルと震える腕に耐えながら、目を瞑れば天明から目を瞑るなと怒られた
「ぐっ…鬼だ…」
「聞こえてるよ?…鬼じゃないでしょ?師匠って言って」
「は、はい、師匠…」
ついつい、心の声が出てしまい天明に鬼と言ってしまえば、師匠と呼べと軽く怒られることに
暫くこの腕の辛さに耐えれば、もういいよと言われやっとこの辛さから解放された
暫く持っていただけなのに、この汗だく。
頬を伝う汗を拭えば、まだ終わってないよと悪魔の声が聞こえてくる、苦笑いを浮かべ天明をみれば次は剣を持ったまま腕を上にあげろと
すぐに、柄を持ち直し天明に言われた通り腕を上に上げるが、先程よりも剣の重みが増して正直きつい
泣きそうになりながらその重さと腕のキツさに耐えれば、ふふと笑う悪魔、ではなく天明
「ホラ、20秒頑張る」
はい…と声にならない声で返事を返せば、見てるからねと言われ、ふらつかない様に気をつけてはいるが、腕は未だプルプルと震えている
少しでも気を抜けば、柄から手を離してしまいそうになるのを、どうにか落とさない様に我慢し、耐えているけれどこれは流石に…
「ぐ、ぐるしぃぃぃ…」
「剣、落としたら許さないよ」
腕と手の痛みに耐える私とは違い、天明は涼しい顔をして、応援という名の脅迫をしてくる。
腕の辛さと彼の恐怖に耐えながら、早く20秒がくる事を切に願った
きっと、この腕は明日筋肉痛になるだろう
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