真、旅の記録 女子高生首吊り事件

つよし

第1話 真夜中の巡回

 石田誠一は慣れた感じで、懐中電灯で灯しながら、廊下を歩いていく。


 ここは公立西京高等学校。時刻は深夜を回っている。学校の先生たちが下校した後に、巡回をしていくのだが、大体十二時半頃に一回目を回っている。

 警備員は三人高校に在籍しているのだが、二十四時間体制なので、一人を午前に帰し、もう一人は休日にしないと、会社が回らない。


 石田は十年前から警備会社に勤めて、三年前から西京高等学校に配属になり、週に三回ほど深夜の見回りをしている。

もう六十という年齢になる。一人暮らしだ。結婚もしたこともない。しかし、転職はしたものの絶えず仕事をしてきた石田にとって、そこは誇らしく思っていた。


 仕事が好きというわけではない。だが、仕事が目の前にあると、そこに向かって行動している自分がいる。


 石田はいろんな教室を回っていく。次は理科室だと思った時に、ちょっとだけドアが開いているのが気になった。


 たまに、先生たちがドアを閉め忘れて帰るときはある。しかし、それは主に校長室や職員室が多く、生徒が使う教室などが開いているということは考えられなかった。


 ”鍵を閉め忘れたのか?“


 石田はそう思って、理科室の中を、ライトを照らしながら覗いた。


 何かがあると思った。足が浮いていると、そのままライトを上に焦点をずらす。そこには首を吊っていた女子生徒が映し出された。


「うわああああ」


 石田は思わず懐中電灯を放り投げて、警備室にある緊急の固定電話に向かって走り出した。

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