9. エクスプローラーズギルドの説明

 ワイルドアンクレットのことを見せ終わった私は、おじさんに案内されてエクスプローラーズギルドの奥にある応接室へお爺ちゃんと一緒に通された。

 装飾品も豪華だし、やっぱりエクスプローラーズギルドってなにか違う。

 そこで出されたお茶を飲みながら少し待っていると、ドアがノックされて上等な革のズボンをはいたおばさんが入ってきた。

 この人は誰なんだろう?


「久しいな。リア」


「お久しぶりです、ヴェルドリア様。まさか、この街の近くに住んでいらっしゃったとは」


「正体がばれないように偽装していたからのう。今日の用件じゃが、孫のルリをエクスプローラーズギルドに登録させてもらいたい」


「話は伺っております。そちらがお孫さんですか。メノウ様の雰囲気も感じますね」


「じゃろう? 儂の自慢の孫じゃ」


 よくわからないけど、話はとんとん拍子に進んでいる。

 というか、このふたりは知り合いなんだろうか?


「あの、リアさんはお爺ちゃんやお婆ちゃんのお知り合いなんですか?」


「ん? ああ、知り合いなんてもんじゃないさ。エクスプローラーズギルドを発足させたのはメノウ様だからね」


 お婆ちゃんがギルドを立ち上げた!?

 どういうこと!?


「エクスプローラーズギルドは、元々『ポーター』って呼ばれていた荷物運び専門の冒険者が主軸になって作られたギルドなんだよ。ポーターの中でも特別な技能を持っていたり、特殊な環境下でも荷物を運べたりする連中が『エクスプローラー』としてギルドを立ち上げたんだ」


「それは……すごいですね」


「まあ、最初は苦労の連続だったさ。結局、ポーターと同じにしか見ない連中が多かったからね。でも、メノウ様はその腕で特別な依頼を受け、困難な条件下での任務をまっとうし、エクスプローラーの有用性を示してくれた。だからこそ、エクスプローラーズギルドは特別なんだよ」


 お婆ちゃん、そんなすごいことまでやっていたんだ。

 でも、そんなすごいところに私が入っても大丈夫なんだろうか?

 ちょっと不安である。


「なに、気にすることはない。最初のうちはそれこそポーターでは難しいが安全な荷運びしか任せないし任せられない。それで信用を積み上げていきな。そうすれば、ギルド内での評価が上がり、難しい仕事も任せられるようになるからね」


 リアさんに詳しく話を聞くと、エクスプローラーズギルドもクラス分けがされており、基本的にはそのクラスの範囲内の仕事しかできないそうだ。

 ただ、私のような特別な魔導車を所持しているエクスプローラーは例外で、場合によっては高難易度な依頼を任されることもあるらしい。

 受けるかどうかは私に一任されるらしいけど、高難度な依頼は報酬もいいらしいのでがんばって受けたいところだ。


 そのほかにも細かい規則の説明を受けたけど、基本的にはケンカをふっかけるなとかお酒を飲んでから運転するなとか当たり前のことばかりだった。

 気になった点はクライアントと揉めたら必ずギルドに報告する点である。


 エクスプローラーズギルドでは、ギルドを通して斡旋した依頼は必ずギルドが責任を持つ。

 つまり、エクスプローラーはギルドの看板を背負って仕事をするわけで、仕事上のトラブル、特に報酬の出し渋りなどがあった場合はすぐにエクスプローラーズギルドに報告することになっているようだ。

 クライアントがどこかの商人なら、出し渋った報酬を取り立て同じ商人からの依頼は受けないようにすべてのエクスプローラーズギルドに通達が行く。

 冒険者ギルドだった場合、冒険者ギルドに取り立てが行き、今後のお付き合いについての話し合いがもたれるそうだ。

 エクスプローラーズギルドの歴史は冒険者ギルドに比べると非常に浅いけど、発言力はその短い期間での実績によりエクスプローラーズギルドの方が上らしい。

 なんというか、強いな。


「……大まかな説明は大体こんなところね。どう、エクスプローラーズギルドで働いてくれる?」


「もちろんです! お婆ちゃんのようになれるかはわからないけれど、がんばって働きます!」


「よろしい! それじゃ、この契約書を読んでサインをお願い」


「はい。……ほとんどいま説明された内容ですね」


「そうね。契約書の文面はどうしても硬くなっちゃうから、噛み砕いて説明するようにしているのよ」


「そうなんですね。……読み終わりました。サインはここですね?」


「そう。よろしく」


「はい。……完了しました。これで終わりですか?」


「あとは身分証の登録ね。運転免許を持っているということは運転免許証があると思うのだけど、持ち歩いている?」


「はい。常に持ち歩くように教わりましたから」


「じゃあ、それにエクスプローラーズギルドの登録情報を書き足すわ。受付まで付いてきて」


 リアさんに連れられて受付までやってきた。

 そこで先ほどの新規入会申込書と運転免許証を提出すると、受付係が申込書を確認したあと奥にある機械へと運転免許証を通す。

 そして、運転免許証を返してくれたのだが、運転免許証に新しく『エクスプローラーズギルド所属 信頼度:0』の文字が記載されている。

『信頼度』というのは、エクスプローラーズギルドを仲介して受けた依頼の報酬によって上がって行く仕組みらしい。

 ちなみに銅貨1枚で信頼度1だそうだ。


 この国の通貨単位だと銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で大銀貨1枚、大銀貨100枚で金貨1枚である。

 信頼度を上げるのは結構時間がかかるかも。


 私は早速仕事を受けようと思ったんだけど、この時間ではもう割り振れる仕事はないということで、施設内の案内をしてもらうだけに留まった。

 明日は夜明け頃にやってくれば、青果ギルドから市場まで野菜を運ぶ仕事を受けさせてもらえるらしい。

 本来はワイルドアンクレットの持ち主がやる仕事ではないそうなんだけど、何事も基本が大切である。

 明日は早起きしてその仕事を受けに来よう。

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