第17話

 今日からメイシア様が受付の仕事ではなく、本来の領主様の妻としての仕事をなさりにお屋敷の方に行ってしまわれました。

 メイシア様は私達の憧れのお方なので一緒に仕事ができるのがとても嬉しいので残念ですが、あの方を調べるのが大変になるので今回だけは良かったと思ってしまいます。

 それなのに今日はあの方は来てくれませんでした。


 ですが、また不思議な方が新しく試験を受けに来ました。

 真っ黒いフードを被り、さらに目だけ穴の開いている仮面までつけている不審者でしたが、その力の圧力は私でもハッキリと分かるほどの力でした。

 その方はユアちゃんの方に行こうとしていましたが、あの方を連想させる服装とその強さから話しかけてしまいました。

 ぶっきらぼうな方でしたが、威圧的ではなく助かりました。

 ただ、冒険者を勘違いしている方や問題を起こす方に多いのですが、説明を聞かずに契約をしたのでこの方に対して不安になってしまいました。


 この方は別の意味でも注意が必要だと、ユアちゃん達と情報を共有しておこうと思います。


 それと、この方はシンという名前らしいです。




 翌日、おやつの欲しくなる時間帯にシンさんが入ってきました。

 シンさんは私に向かってきて、驚くことに全ての試練の達成をしてCランク冒険者としての登録を求めてきました。

 正直、この方がいくら強そうといっても白銀に勝つとは思っていませんでした。

 13周期もなかったCランク合格を2人も同じ冒険者チームが出してしまっては他の冒険者達から軽んじられ、今後の冒険者活動に悪影響が出てくる可能性があります。

 ですので、弱体化の腕輪を着け、尚且魔装を解放しないとはいえ全力で倒しに行くと思っていたからです。

 それを1人でCランクチームを、それもBランク間近の白銀を倒す等、最低でもCランク上位の実力があるということです。

 どのように倒したのか気になりましたが、手の内をさらす事を嫌がる方もいらっしゃるので、聞くことは止めておきました。


 その日の夕方に白銀の方々がユアちゃんに報告にきていました。するとユアちゃんの驚く声が聞こえてきて、その場にいた全員が彼らに注目しました。それが原因なのか奥の会議室の方に白銀の方々と入っていきました。

 一冒険者チームを会議室に通して話すことは珍しいので、先ほどの声も相まって、冒険者の方々が何があったのかと騒がしくなってしまいました。私もシンさん関連の事だと思うので気になりましたが、今日は話は聞けそうにないので明日聞きにいこうと思います。




 朝の修羅場をくぐり抜け、早速ユアちゃんに昨日のことを聞いてみました。

 やはり試験の事だったのですが、なんとユアちゃんが言うにはシンさんは白銀に苦戦もせずに勝ったらしいです。

 シンさんは初手で強烈な閃光と爆音で目と耳を潰し、その間に神官と魔法使いを落としたそうです。

 その後、槍の方とリーダーは足下を爆発され、体勢を崩されましたが各々スキルで少しは粘ったそうです。

 ですが、最初の爆音より更に大きな爆音で完全に動きを止められ、魔法で落とされたそうです。

 ここまで一方的な戦闘になった原因は、魔法で直接の状態異常ではなく純粋な音と光だったので、物理防御の高さが問題になった事と、最初に神官を行動不能にして落とされたことで強化が間に合わず、回復をして立て直す事も出来なかった事らしいです。

 もし神官が初めに落とされていなければ回復をして立て直すことも出来ていたのでしょうし、直接的な状態異常の魔術であれば対策されていたのでもっと違う結末になったのかもしれませんが、シンさんが一枚上手だったということでしょう。

 これは益々気になってきました。

 これからも積極的にシンさんの相手をしていこうと思います。


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