第10話 夕飯時の談笑

 目の前に並べられた、フレンチともイタリアンとも違う、ファンタジー世界ならではの美味しそうなお料理達……!

 キラキラと輝いて見える!

「今日、手鞠ちゃんが来るってわかってたから、ちょっと奮発しちゃいました。あ、お金は気にしないでくださいね。寮とは違うけど、一応学校から食費が出てるから、それで遣り繰りしているんです。だから無料なんですよー」

「なんという贅沢……!」

「手鞠もそう思うよね! 美味しいんだよ、ルナさんのお料理! ちなみに前に一度だけ真白さんが作った料理は、地獄を見た……。絶対、食べない方がいいよ。真白さんのは」

「う、うん」

 そういえば、先輩呼びしないんだなぁなんて、ちょっと不思議に思ったけれど、学校が違うこともあるから、その方が適切かもしれないななんて思ったのだった。

「ルナ、刹那、手鞠。飯を食おう。ついでに真白も食え」

 麗孝さんのその言葉を合図に私達は食べ始める。

 でも、一人だけ不満を漏らす。

「なんで僕だけおまけみたいなの! 酷い!」

「酷くない」

 この二人もいつもの通り、と言ったところなのだろう。ルナさんや刹那さんは二人を無視して食べ始めていた。

 私も食べようっと。

 まず、フォークを手に取って、上に赤い実が散りばめられたお肉を赤い実と一緒に食べてみる。

 赤い実はスパイスだったようで、口の中で独特な風味と刺激があった。そしてお肉がそのスパイスでさらに美味しく食べられる……!

 元の世界で言うところの、ローストビーフみたいなものだろう。

 お野菜や香草のサラダも食べてみると、オリジナルのドレッシングだろうか? 柑橘系の香りと味がする美味しい味で、私の好みだった。

「ルナさん、凄く美味しいです……!」

「ありがとうございます。作ってよかったです。ドレッシングとかソースも全部手作りなんですよ。魔法を使っていないんです」

「……ルナの飯はいつも美味い。また、何かモンスターで食えるものがあったら持って帰る」

 麗孝さんがそう言うと、ルナさんは嬉しそうに手を合わせて「ありがとうございます!」とにこやかに言った。

 あ、やっぱりこの世界ってモンスターも食べるんだ……と、ちょっとだけ引いた。

 でも、きっとすぐに慣れることだろう。

 そういう世界を、選んだから。

「えー、いいなー。君達、僕のことを放っておかないでよ。僕、寂しいじゃん……」 

 そう言う真白さんは、本当に寂しそうな表情をしていた。だから、私はついこう言ってしまっていた。

「ま、真白さん。放っておいてすみません。あの、もしよければ、今度、遊びに行きましょう!」

 その発言に、周りが凍り付いた。

 え、なんで?

「それ、本気?」

 真白さんが不思議そうな表情で首を傾げている。

「ほ、本気です。女に二言はありません!」

「そっか。じゃあ、今度デートしようねっ」

 ふにゃあっと柔らかく微笑む真白さん。

 ……そして、ルナさんと刹那、麗孝さんまでもが「ご愁傷様でした」とでも言いたいような顔をして手を合わせてきた。

 まさか、死亡フラグとかじゃ、ないよね……。

 私は自分の言ったことに、後悔してしまった。

 でも、その後の夕飯は楽しく、そして美味しく進み、片づけを手伝ってからお風呂に入って、眠りに就くのだった。

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