第11話 帰ったは良いものの、これからどうしようね

 家に帰り部屋に入ると、ダークさんはすぐさまベットに飛び込んだ。


「ぐあぁ……疲れたぁ……」


 ダークさんが疲れているのは重々分かっているし、昨日もベットを盗られているから今更良いのだが、今日に限っては少々困る。


「ダークさん、帰って早々ベットに入るのはやめてください」


「別に良いだろ? てかテメェもこっちこれば良いじゃねぇか」


「行きません。それに、盗られたことに対して文句言ってるわけじゃないですよ」


「じゃあなんだよ?」


「……怪我、まだちゃんと手当てしてないんだから、今ベット入ると汚れちゃいます。それはダークさんも嫌でしょ? ほら、足をベットから出して、こっち向いて座ってください」


「へいへい。テメェは心配性だな」


「心配性で済まされるレベルの怪我じゃないでしょうに。というか、ダークさんが怪我したんだから、普通心配します」


「……! ったく、テメェはまた……」


「あれ、なんかダークさん顔赤くないです? もしかして、風邪かなにかですか? あれだけのことして大変でしたし、疲労から風邪ひいてもおかしくないか……」


「ちげぇよ。こっち見んな」


 怪我をしているというのに、怪我した方の足で蹴ろうとしてくるダークさん。そんなダークさんの足をなんとか捕まえて、手当てを始めた。


 ……やはり、応急処置をした時にも思ったが、傷口が綺麗だ。普通ならこの傷口はガタガタになり、出てくる血も感じる痛みもかなりのものになるはずだが、俺の応急処置だけである程度なんとかできる範囲に収まっている。それはつまり、ハートさんがナイフを真っ直ぐ突き刺し真っ直ぐ引き抜き、尚且つそのナイフもかなり丁寧に手入れされたものだということ。


 確か昨日、ダークさんはハートさんの技が一流だと言っていた。ハートさん……いや、心ちゃんはどうやってこれだけの技を身に着けたのだろう。


「って、あれ?」


「あ? なんだ、手当て終わったか?」


「あっはい。手当ての方は既に終わりました。ですが、昨日の傷が見当たらないんです。包帯変えるついでに傷の確認をしておきたかったんですけど、どこ行っちゃったんでしょうか……」


「んなもん、もう治ったぞ?」


 治った? あの傷が? 病院に行っても痕が残りそうな、あの大きな傷が一晩で?


「……なわけなくないですか?」


「いや、怪我程度、一晩寝れば勝手に治るだろ。テメェはなにを驚いてんだ」


 これ俺がおかしいのか? 俺はちょっとした擦り傷ですら何日も残るんだぞ?


 もしかすると、俺が場所を間違えているだけかもしれない。


 そう思い、足をすみずみまで調べ始める。


「あっ、ちょっ、バカ! あんまべたべた触るな!」


「だってあり得ないんですもん!」


「もう怪我のことは気にしなくて良いから触るな! 変な気分になる!」


「……なんですか、変な気分って。モヤモヤしてるのは俺も同じですよ」


「へっ⁉ て、テメェも、モヤモヤしてんのか……?」


「当たり前です。やっぱり一晩で怪我が治るのはおかしいです。ダークさんの身体、どこかおかしいですよ」


「そっちかよ! てか、俺の身体はおかしかねぇ!」


「おかしいです。こういうのは放置すると大抵面倒なことになるんです。良いから調べさせてください」


「もう良いから! お前は俺よりもお宝について調べろ!」


 お宝? ああ、そういえば盗ってきていたんだっけ。心ちゃんのことを気にしすぎて、そこら辺のことをすっかり忘れていた。


 ダークさんは息を荒くして、動く気力も無くなさそうだな。こんな状態で頭が回るのか?


「はぁ……ほらよ」


「ちょっ⁉ 危ないですよ!」


「別に良いじゃねぇか」


 懐からルルイエのカギを取り出すと、俺の方へと投げてきた。


 なんとかキャッチできたものの、これを床に落としでもしたら大惨事だぞ。俺じゃどれだけの価値があるか分からないが、それでも傷をつけることは、何万相当の損害であること間違いないことくらいは分かる。


 とりあえず置く場所か入れるもの……そう思って周囲を見回すと、ちょうどアタッシュケースがあった。多分綺麗だろうし、アレに置くのも良いかも……


「ん? アタッシュケース?」


「ああ、そん中三千万あるからな」


「嘘でしょ⁉ こんな近くに三千万あったらビビってなにもできませんよ!」


「そっちよりまずルルイエのカギだろ。俺はそれ、お前に仕事振りを見せつける為だけに盗んだからな。はっきり言ってなにも知らん。それ結局なんなんだよ」


「そうですね……心ちゃん……あっ、ハートさんのことです。心ちゃんはそれをなにも分からないと言っていました。なんの鉱石か分からないし、表じゃ値段すらつけられないだろうって」


「んじゃ、今日の給料は一銭にもならなかったわけだ」


「あくまで表ならの話で、裏社会のオークションなんかに出せば値段は付くと思います。……ですけど」


「そこまですんのはめんどくせぇ」


「ですよね。まあ、どのみち貴重なものには変わりないので、このまま持っていれば良いかと」


「とりあえず放置しとくか……そういや、それって鍵なんだよな?」


「そうですね。ルルイエのカギという名前です」


「てことは、そのルルイエに行けば良いんじゃねぇか?」


「あー確かに。ルルイエがなにかは知りませんが、それがなにかの建物だった場合、これを持っていたら中に入れるってわけですか」


「んで、やっぱりこんな鍵を用意するだけあって、ルルイエの中には財宝が眠ってるわけだ!」


「そしたら今日の分も全部取り戻せますね」


「テンション上がってきたな! んじゃ、まずはそのルルイエってやつを調べてみっか!」


「おー」


 調べると言っても、どうやって調べれば良いか、誰が知っているかも分からないのだが。

 

 ……なんか、ダークさんすぐ飽きそうだな。

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