60 私はなにをしたかったのだろう

純子は、ウスヤがあるパラ横商店街の人達に感謝される存在になりつつある。


勇太はパンの歌の権利を純子に譲ろうとして、断られたりした。


すると、伊集院君が折衷案?を出してくれた。


色んなところにツテがある伊集院君が曲として完成させてくれて、著作権を純子と勇太の共同制作として渡してくれることになっている。


純子と勇太は、レコード会社と契約を結ぶことになる。


ネットの反応を見ると売れること間違いなし。


ただ、伊集院君が関わっているから、しっかりした権利の元に作られた曲だと思っている人が多い。


大企業、政治家のバックボーンがある伊集院君とは、そんな存在だと勇太は改めて知った。


無断使用で訴えられたくないけど歌ってみたい。だから使用権に関する問い合わせはどうなるのか。


アップロードして1時間で質問が殺到している。


だから伊集院君が動いてくれる。手数料も収益から出せばいいらしい。


その曲は最初の1週間はパンのウスヤがあるパラ横商店街で、純子と愉快な仲間達が独占して歌うことになった。


その後なら、誰かが歌ってネットにアップしてもOKと告知した。


今、パン屋で勇太、ルナ、純子、麗子の4人。純子が困っている。


「これの著作権のあり方はダメだよ。伊集院君の話だと私が儲かっちゃう」


伊集院君は以前、ルナに気があって、ルナのことを純子に聞きに行った。


それが悪く波及して、自称・伊集院親衛隊と純子が険悪になったことを知った。


余計なことをしたお詫びだそうだ。


「その程度のものの対価として貰うものじゃないでしょ。ルナお姉ちゃん、勇太君」


「う~ん、ま、勇太がいいなら問題ないんじやない?」


「純子が臼鳥さんを手助けするために使ってよ。臼鳥さんの片方のお母さん、完治してないんでしょ。これからも病気の治療でお金がかかるよ」


あまり口には出さないが、病人を抱えた家族、すなわち前世の自分の家族のことを思い出す勇太。


その問題にパラレルでも純子が直面していると思うと、甘くなってしまう。


「あ、そうだルリさんのためになるね。それなら・・」

「え、私の身内のことですよ。純子のお金なのに、これ以上は甘えられません」


「じゃあ純子、臼鳥さんと籍入れれば」

「うわっ、ルナ軽い」


「え、ルナさん。結婚を認めてもらえるんですか。純子との入籍は大歓迎です」

「へ、麗子さん?」


「ついでに勇太のとこにまとめて嫁入りして欲しいけどね」


「ええと、そこはまだ・・」


軽いぞルナ。顔を赤らめるな麗子。勇太は俺だ。俺を置いてきぼりにして、話を進めるな。


勇太は心のなかで突っ込んだ。


こういう世界でルナ、麗子の直進型2人が揃うと、展開早すぎてしまう。


現実的に、そんないきなりはない。けれど、大切なものを知った純子だ。


◆◆◆


次の日から。純子は1週間ほど、1人で消える日ができた。


「けじめをつけてくる」


そう麗子、ルナ、勇太に言った。



以下純子。


先はまだ見えないけど、いい方に流れが変わってきた。


麗子、勇太君&ルナお姉ちゃんに助けられた。



一気に好転しそうで嬉しいけど、私が2か月前までクズだったのは確かだ。


なんで、ルナお姉ちゃんに悪い称号まで立たせてしまったんだろう。


情けない。



私には母親譲りの美貌がある。他人から見たら、ルナお姉ちゃんより恵まれているそうだ。


髪の色から瞳の色、体型や顔まで違いすぎる。


友達だって私のとこに沢山寄ってくる。


だけど、本当に近くにいて欲しい人は、みんなお姉ちゃんのところに残った。


ルナお姉ちゃんは飄々としている。


心ない知り合いに言われたことがある。

「純子は外国の人形みたいだけど、ルナはこけしだな~」


お姉ちゃんは笑っていた。

「でしょ。純子って綺麗でしょ。お母さんも美人なんだよ」


そんな健気なお姉ちゃんに両親は愛情を注いだ。



両親を取られたと思ってしまった。


小さいときの親戚の集まりでは、美形の父と母の両方に似た私はちやほやされた。よく叔母、年上の従姉達の間で取り合いされた。


ルナお姉ちゃんは、1人でぼ~っと庭を眺めてたりしたけど、必ず父か母に肩を抱かれていた。


お姉ちゃんの笑顔が眩しく見えた。


そんな場面が日常でも良くあった。悪い言い方をすると、私が目立ってお姉ちゃんが下に置かれる状況。


そんなときほど両親はルナお姉ちゃんの側にいた。


両親は悪くない。普段は何の差もなく愛情を注いでくれる。だけど感情の振り幅が大きくなる場面では、2人してルナお姉ちゃんを守っていた。


だから気になっていた。


共通の友達も、人を裏切らないと信じられるタイプが3人いる。3人ともルナお姉ちゃんと親密だった。

そして私からお姉ちゃんを守るような動きをし始めたけ。


周りには、私達姉妹の溝を深めるのはやめてくれと思った。


その反面、お姉ちゃんが羨ましかった。


沢山の人に囲まれてるくせに、私には子供じみた嫉妬心が芽生えた。ゆがんでいたと思う。


そして間接的にお姉ちゃんを傷付けるようになった。





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