13 これが転生最初の日曜日
勇太は、パラレルでもルナに会って腹を決めた。そして家に帰った。
高校に行って、自分の立場をしっかり作ろうと思った。
そして色んな活動をして、明るいイメージになりたい。
前世で彼女だった花木ルナが、この世界では恵まれていない。
そしてパラレル勇太が情けない存在だ。
さらにルナと並んで大事だった梓に迷惑をかけている。
梓は妹だ。この世界の戸籍では従妹だけど、やっぱり勇太の中では妹だ。
せめて学校で2人に恥をかかせない程度の男になろうと考えている。
ルナには、月曜に学校で会うため連絡先を交換した。
だけど向こうは、勇太に迷惑がかかるから、接触しない方がいいと言った。
それを説得して、月曜は学校の最寄駅で待ち合わせた。
◆◆
勇太が家に帰ると、なぜか梓がルナと会ったことを知っていた。
「なんで」
「ネットに流れてるよ、花木ルナさんと会ったんだね・・」
「そうだ。そんな世界だったね」
気楽な返答だ。
この世界は、男子と女子の邂逅が当たり前ではないことを失念している。
自分程度なら誰も注目しないと考えている。
梓をなだめた。なぜか、ハグさせられた。
明日は正午に、リーフカフェ近くの駅で合流。梓は、外で待ち合わせがしたいそうだ。
◆
勇太は前世の難病が進行したせいで、3年ほどはまともに人としゃべっていない。
とにかく人と交流してから高校に向かおうと思った。
LIMEを開くと、看護師、中学生のグループチャットに多数のメッセージ。
お誘いだらけだったが、早朝から看護師軍団、女子中学生グループの両方と会う。
朝4時から、男子が絡む特殊夜勤明けの看護師のキミカ軍団4人。モーニングの約束。
中学生の由香のグループLIMEには、河川敷グラウンドでランニング、朝7時から1時間と入れておいた。
葉子母さんのリーフカフェが10時~20時の営業。個人経営としては、長めらしい。
だから勇太は9時にカフェに行って、開店の準備を手伝う。そして夏メニューのビラ配りをやることにした。
転生後、のんびりライフを考えていたが、体が動く喜びを実感すると、走り回りたくなる。
それに、ルナのことを考えている。
パラレル勇太は希少な男子なのに、学校では『フラれ男』として女子に見下されている。
底辺のままだと、自分が接触できない。ルナに迷惑がかかると思っている。
さすがに疲れていて12時に寝たのに、かっきり1時に起きた。
すっかり目が冴えている。
もう女神印の回復力がプチチートだと確定。
1日に20時間ほどフル活動できると予想している。
◆◆
5月12日。日曜日、朝4時。
「キミカさーん、お疲れのとこすいませ~ん」
「こっちこそ、お誘いありがとう、勇太君」
「おはよ~勇太君」
「おはよ~」
「お疲れ様でしたー」
むぎゅ!と勇太からハグした。
「え、え、勇太君」
「あれ、これって常識でしょ。間違ったですかね」
キミカをハグで驚かせようと思っていた。
前世で励ましてもらい、新世界で生き返って最初に会った人。
前世では58歳だったが今は22歳。色白で愛嬌がある。
「えへへ、これ採用」
他の美女3人にもリクエストされ、ハグした。
彼女ら行きつけの24時間営業ファミレス。
話が弾んで2時間もいた。
今は勇太17歳だが、前世は21歳まで生きた。22~25歳の看護師との年齢差は気にならない。
ファミレスデートとハグは誰かが撮って、ネットに流していた。
◆
朝7時。
昨日と同じグラウンドに行った。女子が20人いた。
「由香ちゃんおはよ~。誘ってもらってどうもね~」
「おはようございます、勇太さん」
グラウンドを走ること1時間。タンクトップと下ジャージのみの勇太は汗をかきまくった。
昨日の朝は84キロあった体重が、早くも66キロ。
途中のコンビニで差し入れのドリンクを買っていたが、19本しかなかった。
由香を連れてコンビニに行って、飲み物を買ってあげた。
別れ際にリクエストされてハグ。
由香とのコンビニデートも含め、一部始終がネットに流れている。
◆
朝9時。
合鍵でリーフカフェに入って備品の準備。途中から社員さんと合流した。
9時半には女性客15人が店の前に並んでいたので、テラス席に誘導した。
開店までは30分。お客さんとおしゃべりをした。花木ルナのことを聞かれて大切な人だと答えた。
夏メニューのビラ配りで10時から11時半まで手伝うつもりで臨んだ。なぜか、行列ができて20分で配り終えた。
外の掃除風景から、ネットに流れていた。
◆
正午。
いよいよ待望の、梓との待ち合わせ。
勇太は黒のズボンに薄いピンクのシャツ。
もちろん素肌にシャツでボタン2個空け。
勇気を出して花を1輪持って待つと、梓登場。
髪はストレート。白いワンピースに焦げ茶のサンダル。可愛い。
可愛いが、予想通りに装備が安っぽい。パラレル勇太もまた勇太。可愛い従姉に我慢させてきたことを悔いた。
「ほい梓、まずは花をどうぞ。何でもプレゼントするぞ」
「うわあ・・」
混んだ駅前で、汗をかいてフェロモン全開。エロ可愛い勇太のセリフに何人も振り向いた。
当の勇太は、本当に男がいないなと思っているだけ。早朝から動いているのに、まだ4人しか目撃していない。
その4人は、高身長のハンサム。最低でも女性4人に囲まれている。
モブ顔の自分なら注目されていないと安心している。
誤解である。
気分が良くなって、日本の●島ゆき●の名曲を、ちょっと口ずさんでしまった。
声が出ることも、嬉しい勇太である。
勇太が歌うと、周囲がざわついた。
ここにもフェロモン同様、女神が少し細工をしているようだ。
靴三足に始まり、小物に至るまで梓の物を山ほど買った。
「ユウ兄ちゃん、そんなに悪いよ」
服を買いに行ったとき、試着室前に多くの人が集まった。
勇太は梓が可愛いから集まったと思って鼻高々である。
ま、オチは言わずとも勇太。
エロ可愛い男子が、女性店員に腰を低くして話かける姿がリアルタイムで中継されている。
買った物の大半は配送にしてもらい、小物だけ梓が持った。
手を繋いで、男性にもらったプレゼントを持って歩く。これは少女のあこがれらしい。
勇太は、気恥ずかしいながらも嬉しかった。
買い物を終えて、ご飯を食べ、目的もなく歩いたり、公園に寄ったりして帰った。
帰宅は午後8時半。
ネットには、梓とのデートシーンが流れていた。
勇太自身はやっと、普通の1日が過ごせたと思っている。
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