【第3話】不登校児の親と薬 の巻①


はじめにお伝えしておきたいのは、『不登校児の親の薬』というような、効能が期待できる教訓めいた話は一切ない。我が子の状態と、私の薬遍歴から得た見解をお伝えしたいと思う。


◆◆市販薬でやり過ごしていた時期◆◆


長男たこ・長女ぴこ・次女ちぃは、絶賛不登校・不安定登校の日々だ。

不登校には4段階ある、なんて話は調べればすぐに出てくるが、不登校の子どもが3人ともなると、親は絶えず『混乱期』だ。


一人が上向きでも、一人が落ちている。

誰かひとりを支持して応援したら、残された子たちが劣等感を抱えて不貞腐れている。


『子どもをよく観察して!親の適切なアプローチが回復のカギ☆』

そんな文章を腐るほど読んできた。


一人一人を観察し、分析し、アプローチできれば、一番いい。けれど、子ども3人に対して、親は2人だ。“絶対数”が足りない。

しかも、この不登校の表には、きょうだいの相互作用は書かれていない。


誰かを立てれば誰かを落とすような、兄妹という人間関係へのフォローが親には必要だ。どうすりゃいい?誰か教えてくれ!!と切に願っていた。


◇ ◇ ◇ ◇


そもそもちぃが、不登校になった原因は、

「お兄ちゃんとお姉ちゃんばっかり休んでてずるい!!」というものだった。

両親は焦った。

「ちぃはちぃとして学校に行くの!兄姉が行かないことと、ちぃが休むことは何の関係もないよ!」

何度も説得して、引きずって登校させたが、活発で弁の立つちぃは、兄妹を引き合いに出してくる。


「どうして、お姉ちゃんは休んでいいの?ちぃはぴことずっと一緒に居たい!」

ぴこは、『学校が怖い』と頑なで、とても登校できるメンタルでは無かった。ちぃには、姉を救いたい、支えたいという思いがあった。家庭内でも情緒不安定なぴこを見ていて、「どうしたの?大丈夫?」とぴこに声をかけるのはちぃだった。


「どうしてお兄ちゃんは学校に行かないの?家でYouTubeみて、ゲームしてるんでしょ?ちぃだってYouTube見たいよ!!」

たこは、『システムが嫌だ』と感じており、自分にとって有益であるとは思えない時間に辟易していた。座って受け身で授業を聞く45分が苦痛だった。脳内トリップしては、「また、ボーっとしてる!聞いてください!」とトントンと先生に肩を叩かれていた。


◇ ◇ ◇ ◇


両親は、学校に行かない選択をしやすくなっている子どもたちに疲れていた。

親の方が寝ても寝ても、疲れが取れない。子どもとの朝の押し問答を思うと、気分が落ちる。

リポビタンDをグッと飲み干して、気合を入れて子どもたちを起こす日々が続いた。


しかし、そんな日々も長くは続かない。母は、過緊張から不眠を誘発してしまう。布団に入って考えてしまうのだ。

「6年生、明日テストだって、クラスルーム(配布端末への一斉メール)でお知らせ来てたな。明日、たこは学校行ってくれるかな。」「明日は雨か。登校に3割増しで時間がかかるから、いつもより早く起こさなきゃ。車で送っちゃったら、癖になるかな。」


そして、重たい朝がやってくる。子どもたちは布団から出てこない。起きているはずなのに、包まり続けている。母は寝不足で元気がない。けれど、子どもを学校に行かせて、自分は仕事に行かなければならない。


寝不足から片頭痛を発症し、痛みで目を覚ます。7時には活動開始しないと色々間に合わない。朝の5時にロキソニンを服薬する。

脈打つこめかみをなんとか誤魔化し、子どもを叩き起こして学校に引っ張る日々だった。

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