第14話 ポイント割り振りは慎重に

リトルピクシーのヨヨ。

ヨヨはラック村でヨヨ様としたわれている。

なぜ村人から慕われてるのかはヨヨの能力に関係していた。


ヨヨは天候を変えることのできるウレールに存在する守護神の1人なのだと言う。


守護神は厳密に何体いるのかはわかっていないが、ウレールの民を救う宿命を背負うことになる特殊な役職だとヨヨは説明してくれた。


そして天候の中でも雨をつかさどるヨヨは農民達にとってはあがめるべき神だったのだ。


普段は田畑の多い土地を巡って雨を降らせ、大地の恵みに貢献するのがヨヨの役割だと言う。

だからヨヨはずっとラック村にいたのではなく、たまたまラック村に雨を降らせるために来ていたのだ。

シエロとかち合ったのはただの偶然だった。


雨を降らせる能力というのには驚いたが、ヨヨの話を聞いて個人的に驚いたことが1つある。


「ヨヨ様のスキルはウレールの加護なんですか?」


「そうだ。ウレールの加護から派生してできたアーツが俺を雨の守護神にしたんだ」


雨を降らせる能力というのはシエロと同じスキル、ウレールの加護によって得たアーツなのだとヨヨは言うではないか。


ウレールの加護ってそんなすごいことができるスキルなのか?

だったら俺もウレールの加護にスキルポイントを割り振れば守護神と呼ばれるように…。


シエロは淡い期待を抱く。

だがヨヨはシエロがウレールの加護にスキルポイントを割り振ることをあまりお勧めしなかった。


「何故ですか、ヨヨ様?」


「うーん、まぁ見ながら説明するのがわかりやすいか。ほれ、俺のステータス」


ヨヨはステータスプレートを開き俺に見せてくる。




名前:ヨヨ・ガナルザンド

役職:守護神

Lv:28

体力:66

MP:204

攻撃力:56

防御力:32

すばやさ:88

水属性:56

信仰:32

スキルポイント:2

スキル:ウレールの加護Lv7

アーツ:めぐみの雨Lv15/雨霰あめあられLv6/流水の舞Lv3/テレポートLv1/雷鳴/風車/アースドラフト




「………」


「な?、ウレールの加護ってよくわからんだろ?」


ヨヨはステータスプレートを見て無言になるシエロに、ウレールの加護に割り振ってもいいことないぞと言う。

だがシエロはヨヨの言うよくわからんという表現をすることがよくわからんだったのだ。


え?、普通に強くね?

MP204って何?、何回全回復できるよ。

それ以外のステータスも俺なんかより遥かに上。

雨の守護神とか言うから雨を降らせるだけのお飾り神様と思ってたのに。

アーツとか……名前オシャレ!!!


ヨヨのステータスはシエロにとって魅力的な物ばかり。


何がオススメしないだよ。

ちゃんと雨の神様として誇れる能力持ってるじゃんか!

……さては俺がウレールの加護を持ってるからLv上げまくったら守護神の座を奪われるとか思ってるんだな?

騙されないぞ俺は!、やってやるよ!。

俺が雨の守護神になってやろうじゃないか!!


シエロはヨヨが言うよくわからん加護という意味を理解せず、自分のスキルポイントをウレールの加護に割り振り始めたのだ。


「あ、おま、待」


「しゃー!、ウレールの加護Lvアッッップ!」


ステータスプレートでウレールの加護に入れれるだけステータスポイントを投入。

ヨヨは止めに入るが時すでに遅し、ウレールの加護をLv2にしたシエロのステータスプレートに新たな能力が浮かび上がってくるのだった。


スキルの下に新たに加わったアーツ。

果たして何を会得したのか、シエロはウキウキでステータスプレートを読み上げる。


「えー何何〜?、酸攻撃に〜、ほうほう、鉄の楽園か〜」


……酸?、……鉄?……………………?。

ウレールの加護を上げて雨の守護神になるつもりだったんだが……なんじゃこれ?


シエロは見間違いだろうと一度目を擦り、再度ステータスプレートを見直した。

しかしステータスプレートにはこう書いてある。



アーツ:酸攻撃/鉄の楽園



「………」


「言わんこっちゃない」


シエロは頭が追いつかずフリーズ。

ヨヨは呆れた顔でシエロをじーっと睨む。





「23………24……これで25!。しゃあ!、これでどうよ!!」


シエロはスキルの割り振りが失敗だったと思い、一心不乱にスライムを討伐していった。


「はぁ、はぁ、はぁ。これでレベル上がったろ」


ステータスプレートを表示。さてさて、いくつになったやら。




名前:シエロ・ギュンター

役職:勇者

Lv:5

体力:20

MP:6

攻撃力:14

防御力:8

すばやさ:10

魅力:45

幸運:0

スキルポイント:6

スキル:勇者の加護/ハートの加護/ウレールの加護Lv2

アーツ:酸攻撃/鉄の楽園



さっきの倍はスライム倒したはずだけど、元いた世界のRPGゲーム同様、雑魚モンスターばっかり倒してもLvは急に上がらないのね。

でもステータスもだいぶ上がってるし、スキルポイント6はデカい!。

MPが6なのは時間が経つと回復するらしいので、MPだけは最高値でなく、現在値で表記されているのだろう。



Lv毎におんなじだけ増えるんじゃないんだな。

あ、やべ。ステータスメモしとかないと。


シエロはステータスプレートを見ながら近くに落ちてた板状の岩に自分のステータスを刻んでいく。


「よしよし。ちゃんと話を聞いてたな」


ヨヨは俺の行動を見て偉いぞと褒めてくれる。

スライム倒した時もそれぐらい素直に褒めて欲しかった。

褒められるのは嬉しいが……正直この作業ちょっとめんどくさい。

いつかやらなくなりそうだな。


シエロはヨヨに言われたステータスの記録をめんどくさいと思いながらも、いつ表記が変わるかもわからないステータスプレートに困らないためにもステータスの印字をする。


この世界に何故ステータスプレートがあるのか。その理由はウレールの住人ですら知らない。

そしてこのステータスプレートが厄介なのは人によって書いてる項目が違い、また個人でも書いてある項目が変わる可能性があるのだ。


今の俺のステータスプレートには体力、攻撃力、防御力、すばやさ、魅力、幸運、そしてスキルとアーツが書かれている。


しかしヨヨの場合は魅力と幸運の表記がない代わりに水属性と信仰という項目がある。


これはその人間が知る必要のあるステータスを優先度の高いものから表示されると考えられているらしい。


そして表示される項目は個人でも時たま変化するらしい。

その時にその人間が1番知っておいた方が良いステータスを表示してるのではないかと思われているのだ


ただ1番表示してほしいHPの部分だけは誰にも表示されないのだとか。

本当にこの世界の事柄は変なことばっかりである。


シエロはステータスの印字を終え、これから大事な作業に取り掛かる。


「次はどう割り振るべきでしょう?」


そう、俺はスキルポイントの割り振りをしっかりやらなくてはならない。

ヨヨの話も聞かず、ウレールの加護にポイントを全部割り振ったのは間違いだったかもしれないのだ。


俺とヨヨは同じウレールの加護持ちだ。

しかし会得したアーツが全くの別物。

その理由は『会得するアーツはランダム』だからだ。


ヨヨは雨の守護神だから雨系に特化したアーツを持っているのではなく、雨系のアーツを多く獲得して極めたから雨の守護神という役職になったのである。

その証拠にヨヨのアーツにはテレポート、雷鳴、風車、アースドラフトという、雨には全く関係のないものが存在していたのだ。


ヨヨはランダムで会得するスキル、言わば『スキルガチャ』で雨系統のアーツを立て続けに会得したおかげで、雨系のアーツに最初からポイントを割り振ることができたのだと言う。


水流の舞を獲得した後に出てきたものが自分のステータスにある水属性とは関係ないと思ったヨヨは、会得したアーツにはポイント割り振りをせず、Lv0のまま放置しているのだと言う。


「スキルを伸ばして強力なアーツを手に入れる可能性に賭けるか、それとも今持っているアーツを伸ばすか。それはお前が考えてやらないといけないことだぞ」


「これは……かなり究極の選択ですね」


ヨヨの言うポイント割り振り選択は勇者シエロの戦いを大きく左右するものだとシエロ自身も確信していた。


勇者の加護、ハートの加護、ウレールの加護にポイントを入れて新しく会得するアーツが強力であることを祈るか。

もしくは今あるアーツ、酸攻撃と鉄の楽園にポイントを振り分けて技として習得するか。


「技は欲しいけど……この2つはな〜……本当にどうしよう」


シエロは2つのアーツの説明文を読みながら頭を抱えるのであった。

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