スクールカースト下位ランクの俺がひた隠していたV系オタク趣味が、カースト最上位のクラスメイトにバレてしまい学校人生が激変してしまったんだが?〜オタクに普通の青春は難しい〜
第11話 昔はよかったなんて言わないで 1
第11話 昔はよかったなんて言わないで 1
監視。俺、藤原京が秘密を知ってしまったリア充同級生、その実は非リア充なオタク趣味丸出しのコスプレイヤーA、有村蓮香はそう言った。
自分とコスプレイヤーB、宮古桐子の秘密を学校内でバラさないか、はたまたは匿名のつもりでSNSでバラされはしないか…。
バラさないか監視する。
そういった理由で、SNSのアカウントを相互フォローさせられ、休み時間も自分に接触するようになった。
非リア充のモブクラスメイトでしかなかった俺が、いきなりクラス内のカースト最高階層住人にまとわりつかれるようになり、クラスは当然騒然となった。
最初は、なあなあで同じつるんでいたリア充同級生に、なあなあで誤魔化そうとしていたが、なあなあで誤魔化せられず、同じ部活に所属させられているとか大嘘を有村がつき、その嘘を本当にするために、マジで同じ部活に入れられた。
そして、その部活動が…。
「楽器何にする? ギターはやってる人多いしドラムは足りてるからベースやって欲しいんだけど」
俺が部活動に入れられた原因の一人、宮古桐子は愛器であるサンバーストのジャズマスター(エレキギター)を手に持ちながらそう言った。
場所は放課後の軽音楽部の部室。たまたま、部室内にいるのは俺と宮古の二人きりだった。
そう俺が嘘を真にするために入れられた隠れコスプレイヤーが所属する部活は、軽音楽部。つまり、バンドの部活。
俺は、勝手に教えられた秘密を守っているか監視するために、強制的に軽音楽部に入部させられた。
ちなみに、拒否権は全く認められなかった。
「楽器の選択権すらないんですか、そうですか…」
げんなりしながら、俺は椅子にもたれかかり項垂れた。
服を買うために、貯めていた貯金があるから楽器を買えないこともないけれど、唐突に予定外にされる出費としてかなり割高である。
だって、今机の上に広げられている楽器のチラシ、書いてる値段が10万以上とかのがあるんだけど。高校生にはクソ高い。
「代々部活内で受け継がれてる、共用の楽器もあるけど、先に部活動に所属してる子が使ってるから、今すぐは無理なんだよね。まあ、自分の楽器買うまでの繋ぎなんだけど」
「それで、楽器買うためにみんなバイトに勤しんでいて、みんな部室に来ないと…」
「読モと違って、スケジュール押さえられまくるからね、稼ぐためにシフト入れたら。まあ、蓮香は楽器目的じゃなくて、コスプレのためだけど」
件の有村のことを聞き、ゲンナリと項垂れる。監視とか言って俺を、部活に放り込んでおいて、バイトがあるからとか言って、有村は宮古に俺を押し付けて基本的に部活に顔を出さない。
優等生とか、接する前は思っていたが、結構奔放で自由人な感じである。本人の自由なのだが、振り回される側としては、たまったものじゃないし、単純に疲れるんですけど…。
「まあ、最初は10万以上のいいヤツじゃなくて、二、三万の入門用のセットみたいなもんでいいと思うよ。ガチでやりたくなった時には、良いの買った方がいいけど…」
そう言いながら、宮古がこちらの顔を何故か観察してきた。
…表情は、無愛想の上にルックスがいいからか、モブとしてはすげえプレッシャーを感じるんですが。
観察されながら、黙っていると、不思議そうに宮古は首を傾げ、近づいてきて手を伸ばし、俺の長めの前髪を軽くかき上げて眺めてきた。
宮古の長いまつ毛の目と目が合い、謎に緊張する。
「確かに素材は悪くない。髪型セットして、格好とかもいじったらモテそうだね。なんで、こんなもっさりしたモブやってるの?」
「うるさい。俺の自由だろ…」
思わず視線を逸らす。
普段、ダサいモブ的ビジュアルでいるのには理由はある。大した理由ではないのだが、平穏無事な学校生活を送るためには大切な理由である。
「まあ、自由だね。つまり、私と蓮香の趣味も自由ってわけだよ」
髪の毛から手を離し、そう言って宮古は笑った。そして、そのまま言葉を紡ぐ。
「自由には対価がつきものだよ。私たちの弱みも握られているけど、それはお互い様。私たちも君のひた隠しにしてるオタク趣味知ってるんだからね。監視させてもらうし、目には目、歯には歯を。バラしたら、私たちも君のV系趣味バラすから。SNS使って、学校中どころか世界中にね」
だから、仲良くしようね?
そう言って宮古はギターをシャカシャカとかき鳴らしながら鼻歌を気分良さそうに歌い出した。
俺はため息をつきながら、楽器のチラシを手に取り窓の外に視線をやった。
言いなりになって監視されたり、同じ部活に入部したのは、結局、俺は二人の秘密を握ったが、俺自身も握られたからだ。
同じクラスメイトの有村は、普段のクラスでの俺の様子から、V系オタクなのを隠していることを、学食で秘密を知った時に気づかれてしまった。
そして、その場で自分たちの秘密、コスプレ趣味をバラしたら、お前のV系オタク趣味をバラすと脅された。
休日にするV系ファッションを隠しているのには、理由がある。
単純にV系オタクは現在、マイノリティー、少数派でバレると迫害の対象なのだ。
平和な学校生活を送りたかったら、隠しておくことに越したことはない。
そして、それはコスプレも一緒だろう。
だからこそ、二人も隠していたのだろう。
表向きは非リア充とリア充で全然違うが、俺と二人はある意味同類だ。
だから、二人は自分たちが監視している気だろうが、俺からしたら、俺も二人をバラさないか監視できて、現在の状況は都合がいい。
だから、拒否りきらず部活に入部したわけだけど…。軽音楽部で、楽器…。
「ラルクモデルの5弦ベース、くそ高い…」
チラシにV系バンドモデルの楽器があって、V系オタクのコレクター欲求を刺激されて、別にプロを目指す気ないのに高い楽器が欲しくなって、別の意味でV系オタクの俺は苦悩をし始めていた。
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