第38話「夏休みの計画」
夏の暑さが続いている。
梅雨だった時が懐かしいくらいに、毎日のように晴れて、日中は容赦なく暑くなっていく。夏は嫌いではないが、ちょっと暑すぎるなと思っている俺だった。
今日も昼休みになった。さすがにこの暑さだと体育館裏は外だから暑いので、俺は校舎端の階段の最上階に来ていた。ここなら陽は当たらないし、いいかなと思っていた。
……だが、ちょっと困ったことがあった。
『やっぱりこの暑さだと外は厳しいよねー、ここなら校舎のエアコンもわずかに届いているね!』
『そうですね、さすがに外は暑いでしょう。ここなら大丈夫そうですね』
俺の隣から流暢な英語が聞こえる。何度も言うがここはアメリカではない。日本だ。
いつものようにリリアさんと黒瀬さんが俺について来たのだ。ああ、俺のひとりぼっち生活が懐かしいな……。
まぁ、いつものようにと言えるようになったのは、俺も気持ちに変化があったからかなと思った。以前だったら二人ともどうでもいいと思って無視してたはずだからな。俺も丸くなったというか。
『まぁ、この暑さだと外は厳しいな……中庭のベンチにもあまり人がいないみたいだし』
『そうだねー、みんな教室かレストランかって感じだもんねー。まぁ私はショウタのひとりぼっちスポットがいいんだけどね!』
『レストラン……ああ、学食ですか。そうですね、みんなそんな感じですね。そういえばリリアさん、フランスは日本と同じくらい暑かったのでしょうか?』
『うん、リヨンも暑かったよー、三十五度を超える日もあった!』
『そうでしたか、さらに今は地球温暖化の影響もあって、世界各地で気温が上昇しているみたいですね』
『そうだよねー、暑すぎて将来人が住めなくなってしまうんじゃないかなー』
なぜか地球温暖化の話になってしまう女の子二人だった。そんなことを真面目に話す女子高生もなかなかいないだろう。まぁいいんだけど。
『そういやもうすぐ夏休みだな、今年ももうそんな季節か……』
『ああ、そうですね、今年もまた課題が出るのでしょう。しっかり取り組まないといけませんね』
『あ、日本も夏休みがあるんだねー! 長い休みかぁ、楽しみだなー!』
『リリアさん、フランスにも夏休みがあったのでしょうか?』
『うん、だいたい七月中旬から八月って感じで、夏休みがあったよー! 家族で旅行したり、友達と遊んだり、楽しかったなぁ』
なるほど、フランスも日本とあまり変わらないようだな。こうしてフランスのことを聞くのは勉強になるな。
……ん? それもまた俺が変わったのだな。以前だったらどうでもいいと思っていただろう。
『そうでしたか、外国の方は家族との時間を大切にするイメージがあります』
『うん、パパも休みを取ってね、色々なところに連れて行ってくれたよー! ドイツに行ってみたり、スペインに行ってみたり、楽しかった!』
『そうだよな、ヨーロッパだと国同士が隣接しているから、行きやすいんだろうな』
『そうですね、日本は島国ですからね、簡単に隣国へという感じではないというか』
『そうだねー、あ、そうだ! 夏休みにこの三人でどこかに出かけない? 友達同士楽しいことしようよー!』
急にそんなことを言うリリアさんだった。ど、どこかに出かける……? お、俺も夏休みに友達と遊ぶという、これまでにない経験をすることになるのか……?
『お、おお、友達と出かける……か』
『ああ、いいですね、食べ歩きでもいいし、ショッピングをするのもいいし、何か楽しいことがありそうです』
『だよね!? えへへ、友達と出かけるって楽しいよねー! あ、前にショウタとお出かけしたね! あれも楽しかったー』
笑顔で言うリリアさん……って、そ、それは内緒にしてほしかった……!
『そうなんですね、二人とも本当に仲がよくて、とてもいいことです』
『あ、ま、まぁ、そんなこともあったなと……あはは』
『恥ずかしがらなくていいんですよ。私も夏休みを楽しみにしておくことにします。あ、よかったら二人のRINEを教えてくれませんか? 連絡もとりやすいでしょうし』
『うん、いいよー! フウカを登録しよーっと!』
結局俺も黒瀬さんとRINEを交換して、さらに三人のグループRINEを作ることになった。お、おお、グループなんて初めてだ……俺はそんなにRINEする人なんていなかったからな。
「ありがとうございます」
黒瀬さんが日本語で言うと、
「うん! フウカ、ありがとう」
と、日本語で返事するリリアさんだった。俺も慌てて「あ、ありがとう」と言った。ちょっと恥ずかしかった。
なんだか、こうして友達と話したりRINEしたりするのも、悪くないなと思っていた俺がいた。
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