第51話 悪しき者たち(3)


ジークは身体強化を使い

森の中を走っていた。


(感知に出てくる人数がおかしい)

ダンジョンの際に阻害ジャミングされた時とは違い

索敵魔法は発動するのだが

増えたり減ったり

場所がまばらになったり

全く機能していない。


これではらちが明かないと

知覚を鋭敏する魔法

知覚強化センシティブを発動し

感覚を研ぎ澄ませる。


剣のぶつかり合う音が聞こえ

そちらへと向かうジーク。


(戦闘に血の匂いだ)

知覚強化センシティブにより

近づけば近づくほど

剣のぶつかる音、多種多様な声

血の匂いがきつくなる。


人影が見えてきたため

足に力を入れ

一足飛びに戦闘が行われている

場所へと行こうとするが


(え、魔法が、、。)

身体強化に加え知覚強化センシティブ

までも解除され混乱するジーク。


(くそっ!だが行かないわけにはいかない。)

集団へと近づくジーク


「魔法が使えないのに加勢とは

馬鹿な野郎だなぁ!!」

目の前に剣が振りかざされたジーク


急に人が出てきたため

対応が遅れたジークだったが

レヴィが自動で出てきてくれたため

防ぐことができた。


「なんだぁ?どこに剣なんて

持っていやがった。」

驚いている男にジークは視線を向ける。


(こいつ、どこから出てきた。)


魔法を解除していたジークとはいえ

人を知覚できないほど

魔法に頼りきりではない


「ま、関係ねーんだけどよ。」

後ろから聞こえた声に

振り向くが

剣を振られていたのか

レヴィが自動で

剣を防ぎ

ガキィンと耳の近くで音がする。


「は!アーティファクトか!

おもしれー!!」

男は笑いながら剣を何度も

振りかざす。


「グリウス。あらかた終わった。

エルフたちは捕獲アリアも捕縛した。

ルインもすぐ来る。早く終わらせろ。」


剣を振るう男の近くの木の裏から

年齢不詳の男が出てきた。


「もうか、意外とあっけなかったな。」

グリウスと呼ばれた男は

もう一人の男へと体を向き

声をかける。


ジークはその隙を見計らい

レヴィを使い

剣を振るう。


「あめーよ!!」

グリウスは剣で防御の姿勢をとるが


「がぁ!!うでがぁ!!」


レヴィの力により

グリウスの剣は綺麗に折れ

左腕を落とした。


「こんのやろう!!ぜってー殺す!!」

グリウスは剣を捨てると

素早くジークの胸へと

拳を振りぬいた。


「ぐぅっ!!」


ジークは拳をレヴィでガードしたが

衝撃により吹き飛ばされ

森の開けた場所まで飛ばされた。


(こいつ、人間か?)


ジークは拳の重みと

魔法を使用していない痕跡から

人間業ではないと感じていた。


「ガキが!!俺の腕を!!」


ポーションでも使ったのか

切り落とした腕は綺麗に治っている

グリウスはジークの左肩を蹴った。


「うっ。」


(やばい、回復できない状態でこれ以上の

攻撃は受けきれない。)

けり飛ばされた状態から体勢を立て直すと


今の惨状が目に入った。


けらけらと笑う盗賊たち


血だまりに浮かぶエルフの数々


四肢のどこかを欠損し

捕縛されているエルフ達


アリアはぐったりとし

欠損はないが流血が目立ち

この場所へとついてきたであろう

年齢不詳の男が髪で体を持ち上げている。


「なぜ、こんなことする必要がある。」

ジークは左肩を抑えながら

怒りに顔をゆがませているグリウスに向けて

質問する。


「あぁ?!んなもんどうでもいいだろーが!!」

質問に答える気はないと

グリウスが拳を突き出す。


ジークが腹に受けた一発は重く

レヴィでガードしていたが

持っていた手が

折れてしまっている。


「おら!おら!おら!」

グリウスが何度も

蹴りと拳を突き出す


レヴィが守ってくれているが

ずっとは持たないことが

見てわかる


(守れないのか、、、。)

ジークはエリスたちもこの場に来ていると

考えていた為自分の力のなさに絶望していた。


(また、死ぬのか。)


(ここまで頑張ってきて)


(信頼できる人たちも出来て)


(俺を好いてくれる子たちもいて)


(それなのに)


(もうここで終わりなのか。)

ジークは走馬灯のように

今まで起きた出来事すべてが

一気にめぐる。


(もう無理なのか、、、。)


守ってくれているレヴィだが

グリウスの拳の衝撃に耐えられないのか

少しずつひびが入っているのが分かる。


「おぉぉらぁ!!!」

グリウスの言葉と同時に

レヴィが折れ

拳がジークの頬へと

ぶつかる。


グリウスの拳により

数十M先まで飛ばされ

転がって行ったジークは

悔しさと不甲斐なさにより

涙を流す。


(嫌だ!!こんなところで!

死んでたまるか。約束したんだ。

未来を変えると。)


ジークの感情が爆発すると同時に

グリウスが近くまで来る


(こんなことは許されない。)


(腹立たしい。)


(俺は、、、。)






こいつらを殺したい。






感情とリンクしたのか

レヴィとウィスから

同じ気持ちがあふれる。


(レヴィルエクス、ウィストゥラ

力を貸せ。)


ジークの言葉に呼応するように

ウィストゥラが輝き

折れていたレヴィルエクスも

同時に光りだす。


あまりにも眩い光で

その場にいる全員が目を閉じていた。


『ねぇ、力使いたい?』

優しそうな少女の声。


『あなたと私たちの繋がりが

深くなってしまうけどいい?』

少しつんとした少女の声。


不意に聞こえた

少女たちの声だが

ジークは瞬時に

レヴィルエクスと

ウィストゥラ

だと理解した。


(どうなろうが構わない。

君たちと一緒なら。)


『『わかった。』』


『私の名前はレヴィーレ』


『私の名前はウィスカ』


少女たちはジークに向けて

自分たちの名前を言った。


『『これからずっと一緒だよ』』


『『ご主人様マスター』』


眩い光が一層輝きだした。



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