第54話 悪役令嬢達と初詣 その三

「ジークとマイ、声に出てますよ」

「えっ、あっ……」

「すいません……僕、こういう願い事って全部口に出しちゃうタイプなんですよね……」


ラーベルがそう指摘すると、マイは顔を赤らめてとても恥ずかしそうにする。ジークも少し顔を赤らめて申し訳なさそうにへらへらとしている。……うーん、やっぱり本当に可愛いなこの二人。


「そういえばリリーはどんなお願いしたの?」

「えっと私はね~……いつかローズに完勝できますようにって!」

「そんな事でいいのかな……」

「ふふっ、嘘だようそうそ!本当はまた今年も平和に過ごせますようにって!」

「だったら最初から言ってよ、もう。……けど私もリリーと同じ感じかな。今年もみんなとずっと一緒に居られますようにってお願いしたよ!」

「私も同じですわ!だってやっぱりローズ達と遊ぶのは好きですもの!」


なんか微笑ましいな。ゲームの全バッドエンドを回収している私からしたらこうやってみんながみんなとずっといたい、って思えることがとてつもなく嬉しくて微笑ましくて、誇らしい。


「そっか!もしかして皆同じ感じなのかな?」

「いや、俺は違ぇな。確かに俺もお前らとこれからも一緒にいたいが……こっちも身柄が身柄なもんなんでな。『未来で立派な国王になれるように』。それが俺の願いだ」

「素敵ですね、リアン様!ラーベル様は何を願われたのでしょうか」


ジークがリアンにそう言って今度はラーベルに聞く。

ラーベルって何願うんだろ……いまいち予想できないな


「私は……ローズ達とそう変わりありませんよ。今年も皆といれたならそれで結構です」

「ラーベルにもそう思って貰えてすごく嬉しいよ、ありがと!」


ラーベルも私達とそう変わらなかった。けどやっぱり繰り返すけど嬉しいよね。皆がずっとみんなといたいって思えてる事が。


「ね、みんな!絵馬書こうよ!絵馬!」

「お~、絵馬か!確かにいいね!書こ書こ!」

「絵馬か……そいや最後に書いたのいつだっけな」


リリーの提案で私達は絵馬を書くことにした。いやまぁもうみんなの願い事は知ってるんだけど……ま、いっか。今すごい楽しいしね。


「絵馬を書くなら折角ですし破魔の矢も貰いたいですわね!」

「確かにいいね!破魔の矢!」

「破魔の矢……聞いた事はあります」


今度はイリアの提案で絵馬を書き終わったら破魔の矢を買おうという話になった。それにマイがきょとんとするんだけど……マイって破魔の矢知らなかったんだね。


「破魔の矢はおまじないみたいなもの?だね!一年経ったら返さないといけないけど……でもそれでもその一年、魔を祓ってくれるって言い伝えがあるの!」

「そうなんですね……でしたら是非、買いましょう!」

「破魔の矢も大事だけど……今は絵馬書こ!」

「うん、そうだね!」


それから、すぐに絵馬を書き始めた。もちろん願い事はさっき言った通りだ。いや~、何気に絵馬書くの初めてなんだよな~私。前世では書くことなんてまっったくなかったしね!


「さて……こんな感じでいいかな?」

「よし、私も書けました!」

「僕達も書き終わりました!」

「よし、それじゃあ破魔の矢を貰いに行こっか!」


イリアに続いて私達も破魔の矢を貰いに行く。……うわぁ、破魔の矢だぁ……


「これが、破魔の矢……ですか」

「うん!」

「あー、俺らはまぁ別にいいか。雰囲気ぶち壊しで悪いが俺はんな事だとかは信じねぇ」

「……お賽銭とかは信じてたのに?」

「……それとこれとは話は別だ」


とりあえずこれで一通りは終わった。ので後はゆっくり屋台とかをぶらぶら回って私達は帰った。……とりあえず今年も頑張ろ。何か大きな事が起こらないといいけど……

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