未来に思いを馳せて、可愛さという星を散りばめて完成するのはどんな世界?

 悲しみの雨が降る。それは、幕引きを告げる終演の合図か。それとも、世界の終わりを告げる終焉か。
 機械船都市の都市の構造から、世界時計のようなものをイメージしました。中心から各方面に伸びた針。その針の先には、船がついていてそこから色々な世界へと漕ぎ出していくような。
 そんな都市の第三階層にポツンと佇むウェタ。かつての魔法使いの友達の教えは嘘か真か。その魔法に導かれるまま向かう先に待つのは、果たして。
 水晶殻と言いつつ、それが水晶と呼べるかどうかが不透明というのはまさにその矛盾を内包しているからに他ならないのではと思いながら読み進めました。水か氷か。それをはっきりと確定させる要素がないというのが、さらにその水晶殻の透明度を濁しているようで。
 まるでレトロな映写機のようにくるくると世界が回っていく。そのフィルムには人類の歴史が刻まれていて、右往左往したりしているさまを、もしその構造毎俯瞰して見る神様のような存在がいるのだとすれば、どのように見えるのか非常に興味深く思いました。ミニチュアの箱庭のような感じにでも見えたりするのでしょうか。
 なんてことを呑気に考えていたら、映写機の巻取りが終わり、カタカタと本体に当たるように。それはつまり、世界が決壊したことと同義で。覆水盆に返らず。あふれ出した水が大地のすべてを流し去り、そんな大惨事を目の当たりにして誰が「水に流す」ことができるでしょうか。魔法使いによって守られた211羽のペンギンたち。ウェタもその中の一羽で。これは私見ですが、ウェタが機械船都市に行く魔法使いの友達についていったのは、何かしらの運命めいたものを感じずにはいられません。星と星の巡りは数奇ながらも、巡り合えば、強固な運命となって発現する。そんな出会い。
 ウェタが見上げる空には、未知が溢れていて。魔法使いの指示した道を背にして未知に飛び込むウェタは、好奇心という名の翼を存分に広げて宇宙という果てしない広さの海を悠々と泳いでいく姿は想像に難くありませんでした。
 道は違えども、その道は再び一本の道へと戻ってくる。まるで、運命のように、∞の字を描くように。
 道半ばで閉ざされたウェタの夢。神様が告げる真実は、平たく言えば、夢も希望もない話。現実に即しているといえば、聞こえは良いけれど。安定的な継続を望んだ結果が『今』だというのに、この世界で変化し続けるものだけが世界とは……。変化=不安定と捉えることもできますが、その上で安定した変化を見せ続けることこそが、世界を作る要素足りえると……世界が要求してくるハードルの高さに、早速壁にぶち当たりました……。
 可愛い神様の提案にウェタが乗る。世界を書き換える為に。変化に対して、恐れよりも期待や好奇心が勝るのは、とても稀有だと思います。一旦リセットして、白紙に戻し。
 そして、きっと。次に作られる世界の水晶殻は、向こう側まで一切の曇りなく見通せるほどの透明度を誇るのだと思いました。