第3話

「前に、先生に殴られているのを見た。それでも髪色そのままって、すごいね」

 ほかの子だったら黒く染めるんじゃないかと思う。内申を気にしたり、殴られるのがつらくなったりして。

「反抗するのがかっこいいって、そういう意味じゃなくて?」

「かっこよくないよ。不良はよくない。たばこなんて、もっとだめでしょ」

 はっきりと言ってしまった。

 いつもの私なら、反論なんてしていない。嫌な雰囲気にならないように、顔色をうかがっていたはず。

 でも、そうならなかった。見るからに苦手な不良なのに。

「あなた、一年生?」

「そうだけど……三月までランドセル背負ってたガキがいきがるなって?」

 かわいた笑みが、痛々しく感じる。

 そっか。この痛々しいところに引き寄せられたんだ。

「いきがるなって……そこまでは思ってないよ。そっか、一年生かー」

 何も喋らなくなると、波の音がうるさく感じるように聞こえる。

「あんたは?」

「私は、三年だよ。あんたって呼び方は嫌いかな……」

「え、三年? やべぇ、年上だった……」


 彼はうつむいて耳を赤くしながら「ごめん……なさい」と言った。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る