第2話 入学


 2024年 3月


 新発田しばた家は箱根魔法学園はまがくの事を色々と聞くために春休みで帰省中の真凛まりんを含めた水上家を誘って食事会をすることにした。


あきら君、久しぶり♪」


「久しぶりだな、真凛まりん


「お父さんから聞いたよ〜! 明君も魔法使いになったんだって? これで明君とも遠慮なく魔法の事が話せるね♪ 今までは詳しく話したらだめだったから困ってたんだよね~」


「俺は『魔法開発』魔法っていうのを使えるみたいなんだよな。真凛は水系統なんだろ?」


「そうだよ〜♪その中でも結構上位の方なんだよ。凄いでしょ〜♪」


 かいが明を、軽く肘で小突きながらささやいてくる。


「おい、何やってんだ。 せっかく真凛ちゃんが、おしゃれしてきてるんだから、ちゃんとほめんか」


 今日の真凛は、春めいた淡い桜色のワンピースを着ているが、それが彼女のふんわりとしたストレートロングの水色の髪と見事に似合っている。


 整えられた前髪の下には、吸い込まれるような光を放つ水色の瞳。すっきりとした鼻筋と、みずみずしい桜色のくちびる。手足がスラリと長くスレンダーな体型にも関わらず、出る所は出ている。どうやら会っていなかったこの半年の間にかなり成長したようだ。


 真凛は控えめに言っても、モデルがつとまる程の美少女なので、明は直視すると幼なじみといえどもドギマギしてしまう。


「あっと、その、今日のワンピース凄く似合ってるな。 それに半年見てない間に随分成長したんだな」 


 途端に前からは見えないようにして、左右から明へと強めの肘打ちが飛んでくる。


 斜め前の海人かいとの目がギラリと光った気もする。コメカミがぴくぴくしているし。


「でしょ〜! なんたって半年で5センチも伸びたからね! でも明君の方が伸びたんじゃない?」


「そうだな、俺は7センチ伸びたよ」


 何とは言わないが、本人にはセーフだったようだ。


「ところで箱根魔法学園はまがくの事について教えて欲しいんだけど。 パンフレットに載ってないような情報ね」


「良いよ〜♪ 大先輩の私が教えてあげる。 まずね、困った事に攻撃系の魔法が使える子は、選民意識がかなり強いかな。自分は選ばれた存在だと思ってて、言動がかなり攻撃的なんだよね」


「そっか、真凛もそうなのか?」


「普通、面と向かっていうかなぁ。 私は違うよ。 ほら、私は一番最初だったじゃない? だから近寄ってくる大人の人とか、利用してやろうって気満々で話しかけてくる子達って凄く苦手なんだよね。 だから比較的大人しく学園生活をしているよ」


「そっか、真凛はあの時からずっと苦労してるんだな」


「そうなんだよ~。 下手したら生体兵器扱いされてたかもしれないしね。 ねっ!お父さん!」


 うなずきながら、海人かいとが答える。


「そうだな、そんな事は絶対に!させんがな。 どんな手を使っても真凛まりんは私が護る。」


「ふふっ、ありがとね、お父さん。 あっ!そうだ! 明君、小学生の時に同じクラスだった土田君って覚えてる?」


「覚えてるよ、あいつ中1の時に、突然いなくなったからな。 箱根魔法学園はまがくにいるんだろ?」


「そうそう、学園では結構幅を利かせてるから明君も気をつけてね」


「え〜! 土田ってなんかねっとりしてて苦手なんだよなぁ」


「それからね、どこかの研究室に入るなら第1研究室が良いよ、顧問の先生が演算処理の世界で凄く有名な人なんだよ。 あとね、加藤 文代かとう ふみよちゃんっていう凄く特殊な魔法を使える子がいてね、明くんと良いコンビになると思うんだよね」


「へ〜、その加藤さんってどんな魔法が使えるんだ?」


「えっとね、学園で教わるけど、勝手に他の人の使える魔法を他人に教えたら駄目なんだよ。だから自分で確かめてね」


「そうなのか、これからは気を付けるよ」


「それから寮の食事は凄く美味しくてね、おかわり自由なんだよ。・・・。•••」


「○♡◇□•••」


「☆△♧♤•••」


 リサーチは続く•••



 2024年4月


 国立箱根魔法学園 高等部入学式


 新入生代表として真凛まりんが挨拶をしていた。列に戻る途中あきらと目が合い真凛は微笑みかけた。


 それを目ざとく見付けた暗い茶色の瞳をした男がいた。髪も茶色でヤンキー然とした態度の悪い男だ。その男の名は土田 力つちだ ちからという。


 入学式が終わり、その後の最初のホームルームも終わり解散となった。明は寮に向かう途中で早速土田にからまれた。


「おい。新発田しばた。高校からようやく魔法使いになったんだってな。髪も黒のままだし、どうせ大した能力じゃないんだろ。雑魚のくせに調子にのるなよ」


「調子になんか乗ってないぞ、高校デビューなのはその通りだしな。能力についてはまだ俺にも良くわからんからなんとも言えんがな」 

 

「その口の聞き方が調子に乗ってるって言うんだよ。 まぁ良い、この先時間はたっぷり有るんだ。 すぐに俺とお前の格の違いってやつを見せ付けてやるよ」


 そう言うと土田は肩をいからせ、取り巻きと共に寮へと足早に向かって行った。

 


 何なんだあいつは?入学式のイベント要因か?真凛が言ってたとおり、本当に態度がデカくなったな。頭大丈夫かあいつは?


 箱根魔法学園はまがくの流儀に全くなれていない明は内心でそう思いつつ、ゆっくりと寮へと向かった。



 



 

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る