あなたと私と娘

筑紫榛名@9/8文学フリマ大阪

(一)

「様子はどうだ」

 海上輸送コンテナの上で腹ばいになり狙撃銃のスコープを覗いている黒づくめの男の耳に、フリーハンズの携帯からインカムを通じて中国語の音声が響く。

「ひざまづいている女に、男が銃をつきつけています」

 男が静かに答える。

「その女がターゲットだ。そして男に殺させる」

「上手くいきますかね」

「ダメだった場合は撃て。頼むぞ、元北京市警雪豹突撃隊員」

「了解」

 スコープの中は緑色の景色が見えた。コンテナの谷間で髪が長くスーツ姿の、膝立ちの女が何かをしゃべっている。男は小さいリボルバー式の拳銃を女の額に当てている。


(続く)

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