第1章4話:屋敷

――――キルティナてい


ほどほどの大きさの屋敷。


小さな庭園と居館きょかんがある。


その居館きょかんはしの部屋は、厨房ちゅうぼうとなっている。


俺は、料理用りょうりよう衣服いふくに着替えさせてもらい……


キッチンに立っていた。


現在、厨房には、


キルティナ、


屋敷の料理長を務めている女性、


そして俺。


……この三人がいた。


キルティナが言ってくる。


「好きなタイミングで作り始めていただいて構いませんわよ」


「おう」


「わからないことがあれば、料理長に聞きなさい」


「わかった」


と俺は答える。


そのとき料理長の女性は言った。


「貴族のご令息が料理をなされるなんて……珍しいですね」


俺は答える。


「そうかもな。ああ、一応言っておくが、俺は実家を追放された身だ。だからもう貴族の令息ではない」


「さ、さようですか。それは失礼いたしました」


料理長の女性は謝罪してきた。


謝らせるつもりはなかったんだがな……


まあいい。


とりあえず調理を開始しよう。


「ちなみに、何を作るんですの?」


「見ての通り、魚料理さかなりょうりだ。俺は魚料理だけは、誰にも負ける気がしないんでな」


と俺は答える。


並べている食材。


メインディッシュとなる魚をデカデカと置いてある。


銀色に、ところどころ青いラインが入ったこの魚は――――ミズマダイ。


異世界の海に生息する真鯛マダイだ。

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