第16話 アルザ・ラグラー

 さて、アルザ・ラグラービッグシスターに呼ばれている。そんな俺にイルザ・ラグラーリトルシスターも俺についてきている。


 待ち合わせ場所は俺の部屋だ。



 いつもの通り部屋に入るとビッグシスターが待っていた。目つきはパパンのように鋭く強者のように風格がある。髪は同じく金髪で青い瞳、髪は肩ほどまでの伸びている。




「遅かったな。ゼロ・ラグラーミニブラザーイルザ・ラグラーミニシスター。お姉ちゃんは待ちくたびれているぞ」

「久しぶり」

「久しぶりね、お姉様」

「うむ。久しぶりだ。相変わらず二人とも可愛いくて安心したぞ。二人の瞳はまるで宝石のようだ。カラスはキラキラしたのが好きらしいからカラスに盗られないか心配になる程だ」

「そう」

「お姉様、相変わらず変わってるわね」




 ベッドに腰掛けようとするとビッグシスターが俺を止める。



「待て、座るのはお姉ちゃんの膝の上だとお姉ちゃんとのお約束条項、1条に記載してあったはずだ」

「あ、そうだっけ」

「ほら、早く座れ。そうでないと話ができないだろう」



 ぺちぺちと自身の太ももを叩く。それを見てリトルシスターがすかさず上に座った。



「ふふ、お姉様アタシが座るわ」

「うむ……まぁ、お前も可愛いから問題はない。ゼロ・ラグラーミニブラザーは隣に座れ」

「はいはい」

「そういえばパッパとマッマは最近どんな感じだ?」

「お父様とお母様は相変わらず仲良しよ。この間も二人で似顔絵を互いに描いてプレゼントしていたもの」

「ふむ、ワタシも四人分描いて渡すか」



 この人ブラコンだけど、同時にシスコンでもあって、ファザコンでもマザコンでもあるからな。普通に家族大好き人間なのはちょっと尊敬している部分でもある。



「パッパ。マッマ。ミニブラザー。ミニミニシスター。全てワタシの宝だ。故に四人の日常はワタシが守ろう」

「いい人だな流石はビッグシスターだぜ」

「お姉様。アタシ、お姉様のそういうところは尊敬しているの」

「ふっ、よせ。愛する弟と妹に褒められると思わずニヤニヤしてしまうだものだ。お姉ちゃんと言うのはな……」



 腕を組みながら不敵に笑っている姿はパパンが若干マイルドになった表情に似ている。



「それで、何の用で来た感じ?」

「あぁ、久しぶりにミニブラザーの顔が見たくなっただけだ。後でミニシスターも見ようと思っていたが一石二鳥で得をした気分だ」

「そう」

「そうだな。それに最近の事情も知りたい。彼女とかはどうだ」

「できてないよ」

「そうか……ワタシは姉として弟の恋は応援すると決めている。幸せになってほしいからな」

「流石、良いこと言うな」

「だが、流石に姉として変な女が弟と一緒になるのを了承はできない。彼女を作る前はワタシに相談をするように。つまりお姉ちゃんとのお約束条項がこれで93条目になる」

「心配してくれてるんだな。少し過保護だけど」

「ふっ、お姉ちゃんなら当然だ。表で言わないだけでどこの貴族もだいたいこんな感じだ」

「あ、そうなんだ」



 日本とは違う文化なのかもしれないなぁ。聞いたことないけど。



「お姉様……(どう考えても嘘じゃない。こうやって建前上は気遣いできるフリをしているのね。こういうのは尊敬してないわ)」

「弟が幸せになるのを止めない姉はいないさ(まぁ、どんな女連れてきても大体却下してやるがな。そうだ、ワタシはブラコンだ。だが何が悪い。ブラコンだと何が悪い。建前上は普通に幸せを願っているふうにはしておくがな)」





 相変わらずビッグシスターは人格者だ。流石は神聖騎士団に内定しているだけはある。姉は現在生徒会長で卒業したら王族直轄のエリート騎士団らしい。


 王国騎士団があって、その中でも聖騎士の位を授かったエリートだけが【神聖騎士団】になれるらしいのだが姉はストレートで直接入団をするらしいのだ。


 流石はパパンとママンの子だ。因みにパパンは入学当初から神聖騎士団に誘われていたとか言われてた。



「家族を守るためワタシが当主となる(当主となれば権力大きいからな。弟をずっとそばに置ける。それに妹もワタシは好きだ。両方ずっと一緒だ。ただ正直ワタシは拗らせたブラコンだからゼロは夫として側に置くがな)」

「いいえ、アタシがなるわ(お姉様の考えているのは大体想像できる。お兄様を手元に置くつもりね。アタシもついでに置きたいんだろうけど。そうはさせないわ)




 二人ともどうしても当主になりたいらしい。流石は責任感の違いなのだろうか。まぁ、どっちかというとビッグシスターを応援しているけどな。リトルシスターは少し子供だし、俺を管理してやるとかたまに寝言で言ってるし。




「そういえば、ミニミニシスターは今度六教乱舞バトル・ウェスタに出場するのは本当か」

「そうよ。お姉様が前回優勝されてたみたいだし。優勝賞品の芥川龍太郎の本も気になるわ」

「うむ。そうか、ワタシは今回解説役だから出れないが頑張るんだぞ」




 あぁ、そうか。前回優勝者はビッグシスターだったか。



 アルザ・ラグラーは天才騎士って言われてたのは覚えている。家族四人で見に行ったなぁ。



「お兄様は今年も見てるだけよね」

「そうだな」

「うむ、ミニブラザーはその方がいい。危険なことなどしなくていいんだ。だってお姉ちゃんが守るからな」



 表ではそう言っているが今年は出場する。なぜなら六教乱舞バトル・ウェスタの優勝賞品は芥川龍太郎の本。つまりは俺が昔に描いた厨二本だからだ!!


 あんなのが世間で読まれているなど納得できない!! 絶対に回収してやる!! ただ、ごちゃごちゃ面倒ごとは嫌いなので変装して、更に暗黒微笑BGMがあるので魔力なしで優勝する必要があるがな。


 まぁ、俺天才だから優勝は間違いない!!!!!!


 俺からしたら余裕だが……この大会はかなり有名らしい。年に一回だけで六大神に戦いの舞を贈るのだとか。


 世界中から戦士が集まったり、または宗教ごとに戦士を輩出し名声を高めたり色々あるのだ。大きな闘技場を貸し切って、と言うかこの大会のためにわざわざ作ったらしいのだ。


 解説役もつき、観客席も広大で闘技場との間に結界魔法を構築している。つまり観客の声を戦士に聞こえなくするシステムという細かい気遣いもあるのだ。


 まぁ、要するに年に一回の凄いでかい祭りなのだ。


 それ故に優勝するのは至難らしく、毎年死者も出てしまうらしいのだ。優勝したらそれはもう凄い戦士の称号が与えられてしまうらしい。

 貴族からの護衛としての一生任務とかあったり、いきなり王族の騎士団に呼ばれたり、魔力とか才能大好きな貴族が婿に来ないかとか言われたりする。


 優勝をすると名が売れるのでわざわざ信者確保の為に神源教団もお金で戦士を買って、信徒のフリをさせて出場をさせるのも裏であったり。


 それほどの大会なのだ、まぁ、そう簡単に優勝は無理なんだけど。だから、優勝したアルザ・ラグラービッグシスターはすごくて生徒会長もやってるんだけどね。まぁ、イルザ・ラグラーリトルシスターは今年は諦めて欲しいかな。俺もこっそり出るしね。







 因みにゴルザ・ラグラーパパンは七回連続で優勝して殿堂入りしたらしい。





 名を売りたい戦士や、信徒が欲しい教団とかから文句が出たんだとか。そりゃ、毎回無神教徒が優勝持ってくのは面白くないよね


 パパンは無神教徒。一応大地神を祀ってる国、宗教国家ラキルディスの貴族だけどあんまり宗教興味ないしね。


 昔は厨二病だったけど今はまともな人だし。そういうのが優勝するのは好ましくないと思う人がいてもおかしくはないな。



 殿堂入りは歴史上初めてらしい。ゴルザ・ラグラーパパンやるじゃん。多分、アルザ・ラグラービッグシスターが今回解説役になったのもパパンのせいだな。


 アルザ・ラグラービッグシスターもそこまで宗教好きって感じじゃないから。二回連続で優勝持ってかれるの面倒なんだろ。宗教好きにも困ったもんだよ。神様アピールしたいんだろうけど。


 神様なんて居ないんだよね。



 悪いけど、今回の優勝もラグラー家が頂くぜ!! なんてな。ラグラー家であることは言いませんけど。






◾️◾️


六教乱舞バトル・ウェスタの前日。聖神アルカディアこと、メイドこと、レイナはラグラー家にてお弁当を作っていた。




「ゼロ様、明日大会ですし。お弁当を作っておきましょう。お腹に優しいのがいいですかね」




 鼻歌を歌いながら明日のお弁当の惣菜を作っていく。



六教乱舞バトル・ウェスタなら、優勝はゼロ様でしょうね。優勝おめでとうと書いてあるお弁当にしましょうか」

「え!? 団長が出場するってマジのマジ!?」

「あ!? ろ、ロッテ様、な、なぜここに!?」

「だって、任務報告っしょ。副団長だからお知らせするのは普通っしょ! てか団長が明日出るってマジ!?」

「あ、いえ、その、あえ、その」




(あ、不味い。ゼロ様は秘密にしたいと言っていたのに……ばれちゃいまいた……てへぺろ☆ 神様だって間違うことあるんだぞ☆ ……これで許してくれないかな……)




「皆に知らせなきゃ。あーし以外にも見たい人いるし」

「あ、その」

「それじゃ。任務報告書は部屋に置いておくから」

「あ。あああ! ま、まってぇ!」




 その後、光の速さでゼロ・ラグラーが六教乱舞バトル・ウェスタに出場することが革命団に知れ渡る。




 【アルカナ幹部】はすぐさま迅速に行動をし、明日のチケットを確保した。






【一般女性団員の場合】



「団長が明日出るんだって!」

「うわぁ、チケット欲しいなぁ!」

「買おうよ! どっかで売ってるし!!」

「闇市場でも売られてる」

「幹部の人はすでに手入れてるって」

「流石は幹部は動き早いわね!!」

「買いましょ!」

「転売してる人から買っちゃおうよ」

「団長かっこいいから楽しみ!」

「もうワタシ持ってるぅ!」

「いいなぁ!」

「クッキーとか持っていこうかな!」

「団長と前握手してもらったことあってね! 魔力がものすごいから観に行きたいなぁ」

「戦闘経験としても見るだけで数千万の価値あるよ」

「観たいみたい!」

「行きたいなぁ。今から転売しているところ探してきます!!!」





 【一般男性団員の場合】


「──この中に、団長が六教乱舞バトル・ウェスタ出場するのに見にいかないとか言ってる奴いる?」

「いねぇよなぁ!!!」

「おいおい、どこで手に入れればいいんだよ!!」

「ギリギリになって出場を広めるとか団長が俺達を試してるんだよ!! こっからどうにかして手に入れるのも訓練だよ!!」



 一般男性団員が壇上に上がり、声を上げる!



「──俺達は飢えた狼だ!!! 転売してるチケット全部買い占めろ!! いいか!? 転売なんてしてる奴の喉に金貨を詰め込んでやれ!!! 窒息するまでな!!!」

「喉元に詰め込め!! 咽せてチケットを明け渡すと言うまでだ!!!」

「うわああああああああああああ!!!!」

「祭りじゃああああああああ!!!!!!!」

「とことん金を使ってでも買え!!!!!」

「貯金を全部崩してでも買うんだ!!!!」


 一般男性団員が再び壇上で声を上げる。


「──ここで貯金とかしておくやつは財産を全部墓に埋めて、死ぬのと一緒だ!!! 死んだ後の埋蔵金なんてクソ喰らえだ! 金はここに使う為にある!! 今日金使えないやつは去勢を覚悟しておけ!!!!!!!!」

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!」

「買うぜえぇええええええ!!!」

「うぃぉおあああああああああああ!!!!」



 買え買え! どんなに大金を叩いででも!!! と男性団員から声が上がり続ける。




「──よーし、野郎ども!! 買って買って買いまくれーーーーー!!!!!!!! 明日の朝食代とランチ代が無くなったしてもだぁああああああああああああああああああ!!!!」










 アルカディア革命団こそこそ噂話……団長は男女共にかなり熱狂的なファンがいる。

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