沈む箱

うめもも さくら

これは夢の話

 前も後ろもわからない。

 宵闇に充満する灰色の靄。


 遠くで鳴り止まない金属音。

 氷に金属の杭でも打ち付けているかのような音。


 歩いてみても周りの景色は変わらない。

 ただそこで足踏みでもしているかのように。


 帰り道に進んでいるのか。

 深淵の奥に向かっているのか。


 何もわからない道をいたずらに進む。

 何もかわらない道をひたすらに迷う。


 まるで誰かの作った箱庭のような場所。

 もしや誰かが語った昔話に似せた世界?


 遠くから聞こえる人の嘆きが止まらない。

 遠くから這い寄ってくる人の叫びが終わらない。


「――――っぁあぁぁぁっ!!」


 突然の悲鳴に胸が弾かれる。

 その衝撃に私の目は開かれた。

 開かれた目の先にあったのは見慣れた天井。

 スマホのアラームがなる前に私は目を覚ました。




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