第2話 君に逢いに来る理由

そして、今日も君に会う。


 「やっほ、会いに来てあげたよ」


 素直に言うのは照れ臭くて、つい上から目線になってしまう。でも、ある意味素直だとも言える。心を開いていない子には、無理をしてでも、笑顔で愛想良く接するけれど、君の前ではそんなの必要としないから。


 「全く、素直じゃないね。逢いに来てくれてありがとう」


 そう君は、私の心を見透かしたかのように、肩につく白い髪を揺らして微笑む。

 そんな優しい君の隣は、どこか懐かしくて、とても落ち着く。


 君から見た私はきっと、黒い猫のように映っているのだと思う。気分屋で、素っ気なくて、それでいて繊細。直そうとは思わなかった、君にそう思ってもらえているのなら、私はこのままでもいいと思えた。猫の様に可愛く見られているのなら。


 君は、私を笑顔にさせることが上手い。悔しいから、私もそれに負けじと冷たく接するのだけれど、君には敵わない。

 けど、そんな君の笑顔は、どこか嘘くさくて、人間味を感じない。

 だから、私は決心した。あの偽の仮面を、いつかは剥がしてやると。

 君の、本気の笑顔を見るまで、私は君に挑戦し続ける。














 



――君に逢いに来るのを辞めない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る