11『番外編1』


この空間に一つの怒りが立ち込めた。



卑弥呼から、記憶を取り上げ、平安時代へと送った人物は、とても満足していた。

そう、アカシックレコードの管理者である。

アカシックレコードの管理者と名前は、とても長い。

だから、アカと呼ぼう。


アカは、あらゆる所から情報が欲しかった。

この地に全ての情報を保存したかった。

地球の情報は、習得出来ている。

だが、地球以外の情報が欲しかった。


この領域には、沢山の本があり、それらに情報は記録されている。


これまで未確認飛行物体や、恐竜との会話、過去の記録に、手段を選ばずに接触を続けていた。




この日も、月の情報が欲しくて、アカは、卑弥呼を使い、かぐや姫と接触をさせていた。

これで、卑弥呼が月へ行き、情報を得て、この地に来てくれれば、情報を教えてくれると思っていた。



しかし、このことが上に知られてしまった。



『アカシックレコードの管理者よ。あなたは、自分の私利私欲の為に、命を弄びました。よって、管理者を剥奪します。』


その一言により、アカは地上へと落とされてしまった。

アカは、地上で記憶と力を失ったが、助けてくれた人がいた。

その人は、ハルキといい、手芸がとても得意である。


ハルキは、アカに手芸の基礎から教えた。

段々と上達していって、ハルキと同じ力を手に入れた。

ハルキとアカは、二人で色々な服を作り始めた。

とても楽しかった。


だが、ハルキは血の病気を患った。

この時代は、医者といっても、呪いの部類であり、本当の医療ではなかった。

悪魔が憑いたとか言われ、ハルキは牢屋で監禁された。


アカは、その時、服を他の地域に売り歩いていた。

帰ってきた時には、ハルキはいなかった。

周りの人に訊いても、教えることが出来なかった。

教えなかったではなく、教えることが出来なかった。

この答えから、権力で口止めされていると感じた。


アカは、ハルキを取り戻そうと、この地域を取り仕切っている人の家に忍び込んだ。

だが、もう、遅かった。

ハルキは、食事に毒を混ぜられ、殺されていた。


逆上したアカは、この地域に住む人の首を噛みつき、虐殺していった。

その情景には、春に咲く花、桜が舞っていた。





アカシックレコードには、今、管理者がいなかった。

転生を待つ魂は、とても不安になっていた。


その時、上からきた人物に抱っこされた、少女がいた。

少女は、アカシックレコードの地に足を付けると、少しだけ身を震えさせる。


『この子が、今からアカシックレコードの管理者になる。』


その一言を発するだけで、上に帰ってしまった。


一人残された少女は、見た目が三歳から五歳位と見られる。

左右を見て、おどおどしている。


「くしゅん。」


くしゃみをした。

それはそうだろう。

恰好が、真っ白な薄い生地で出来た布を、身体に巻き付けただけである。


この時、近くにいた魂が、急いで服を作って着せた。

服は、フワフワの生地で作られており、ポンチョのように羽織れるものであった。


「これ、暖かい。ありがとう。えーと、ハルキお兄ちゃん。」

「いいえ。ねえ。どんな服が欲しい?作るよ。」

「うーん、これみたいに暖かいの。」

「わかった。」


それを見た魂は、少女に何かしてあげたいと思うようになった。

今まで、自分の能力を文章に書いて、管理者に提出するものだった。

だが、この少女が来てから、自分の能力を思う存分発揮できる場所へと変わっていったのである。


「ねっ、お腹空いてないか?おにぎりとかって食べれる?」

「おにぎり?」

「お米を三角に握ったものだよ。」

「えーと、あっ、記録にあった。美味しそう。食べたい。」

「じゃ、少し待っててくれよ。」


少女は、今までアカが残してくれた記録が頭に入って来て、確認すると嬉しがった。


それから、アカシックレコードの管理者は、魂が見せてくれる食事、食器、ゲーム、絵画などに触れて行って、それらがとても愛おしくなっていた。

目に見える物全てが美術品になっていた。





それから、年月が経ち。


「二人一組になって、現世に住んでいる子供達の美術能力強化をする。」



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