第13話 メイド

◇ルクスside◇

 入学祝いパーティーが終わると、僕と青髪の少女は一緒に会場から出て貴族学校の門に到着した。

 そして、僕が別れの挨拶をしようとした時、青髪の少女が言った。


「ルクス・ロッドエル様、本日はありがとうございました……名乗り損ねていたので、最後に名乗らせていただきてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、そういえば……お願いします」


 僕がそう言うと、青髪の少女はドレスのスカート部分を上に持ち上げて優しい表情で言った。


「私は公爵家のフローリア・フローレンスと言います、改めて……今後もよろしくお願いします」

「公爵家のフローリア・フローレンスさん───こ、公爵家!?公爵家の方だったんですか!?」

「はい」


 特に誇示した様子もなく、フローレンスさんは俺に微笑みかけた。

 公爵家と言えば、王族の人を除いて貴族の中では最上位に位置する人だ……でも、そうか。

 優しく穏やかでマイペースなゆっくりとした口調、どこか今まで会ってきた人とは雰囲気が違うと思ったけど、公爵家の人ならそれも納得だ。

 でも、公爵家の人とも何人かは話したことがあるけど、こういう人は会ったことがない……不思議な人だ。


「公爵家だからと言って、特別何か気を遣ったりはしないでくださいね」

「わ、わかりました」

「では……失礼します」


 そう言って軽く僕に頭を下げると、フローレンスさんは迎えの馬車に乗って、その馬車は道路を走って行った。

 ……公爵家の人だってことには驚いたけど、特にそのことは意識しなくて良いということだったし、ロッドエル家のためにも最低限無礼を働かないようにだけ気をつけることにしよう。

 そんなことを考えながら、僕も迎えの馬車に乗って家の屋敷へと帰った。


「おかえりなさいませ!ご主人様!」


 家に帰ると、明るい表情をしたシアナが僕のことを出迎えてくれた。

 シアナは僕に距離を近づいて聞いてくる。


「ご主人様、入学式はどうでしたか?」

「うん、色々とあったけど、とりあえず無事に進んだよ……それより、シアナは大丈夫だった?」

「私は大丈夫です!」


 昨日の夜寂しいって言ってたから少し心配だったけど、このシアナの様子を見ると本当に大丈夫だったみたいだ。

 あの夜だけでちゃんと折り合いが付けられたなんて、やっぱりシアナはすごいな。

 僕とシアナは一緒に僕の部屋に入って、僕の今日あったことをシアナに話すことになった。


「ご主人様、お紅茶をお入れしました」

「うん、ありがとう」


 僕がシアナの入れてくれた紅茶を一口飲んでそのカップを机に置くと、僕は口を開いて言う。


「えっと……僕の今日あったこと、だよね?」

「はい!」

「そうだね……普段じゃ絶対あり得ないことが起きたっていう意味で、やっぱりフェリシアーナ様が入学式にいらっしゃったことが結構大きな印象だったかな」


 僕がそう言うと、シアナは一瞬体を反応させて聞いてきた。


「……フェリシアーナ様の入学式でのお話は、ご主人様から見てどうでしたか?」

「凄かったよ、言ってる言葉もとても良い言葉なんだけど、言葉以外にも伝わってくる思いがちゃんとあって、王女様っていう感じの風格もあったかな」

「そ、そうでしょうか……」


 シアナはどこか照れた様子でそう言ったけど、僕はそれがどうしてかわからなかったから特に気にせず続きを話す。


「それでね、入学式が終わった後で、僕とフェリシアーナ様の二人で話す機会があったんだけど、話してみても本当に優しくて良い人で、近くで見てみると綺麗な人だったよ」

「き、綺麗……私から見れば、ご主人様も十分かっこよくて、素敵だと思います!」

「ありがとうシアナ、でもフェリシアーナ様は僕なんかの何倍も素敵な人だったよ……ううん、何十倍かもしれない」

「そ、そんな……」


 シアナは頬を赤く染めて、どこか嬉しそうにしている。

 そして、シアナはそのままの様子で聞いてきた。


「ご主人様は……もし、フェリシアーナ様と婚約できるとなったら、婚約したいと思いますか?」

「思わないよ」


 僕が即答すると、さっきまで頬を赤く染めていたシアナは、次第に顔を青ざめながら言った。


「ど……どうして、でしょうか?ご主人様から見て、フェリシアーナ様は綺麗な方だったんですよね……?」

「僕は見た目だけで婚約者を決めたりしないよ……って言っても、フェリシアーナ様は、性格を見ても良い人だったけどね」

「でしたらどうして────」

「だからこそ、僕なんかがフェリシアーナ様と婚約なんてできないし、例え話でもそんなことを口にするのはフェリシアーナ様に申し訳ないよ」


 僕がそう言うと、シアナは首を横に振って言った。


「そ、そんなことはありません!ご主人様の努力は、私が一番理解しています!」


 そんなシアナのことを見て、僕は思ったことをそのまま口にした。


「ありがとう、シアナは本当に優しいね」

「私は、優しさで言っているわけでは────」

「それよりも、僕はシアナの方が心配だよ……今日から休日以外は日中僕は屋敷に居ないけど、本当に平気?」

「それは、平気……ですが、フェリシアーナ様────」

「フェリシアーナ様のことは今の僕たちには関係ないし、今日たまたま会えただけで本来なら会うことのできない人だから、シアナがそこまで気にする必要ないと思うよ」


 僕がそう伝えると、シアナは一度顔を俯けてから、明るい笑顔で言った。


「……そうですね!フェリシアーナ様のことは、また何かご主人様とフェリシアーナ様がお関わりになられてから考えます!」

「うん、そうだね」


 その後、僕とシアナは今日の僕のことや他愛もない話で楽しく話して、そろそろ僕が普段勉強している時間になったので、シアナが気を遣って僕に一礼してから僕の部屋から出てくれた……とりあえず、僕は今僕のできることをしよう。



◇シアナside◇

 自室に戻ったシアナは、その直後にシアナの自室に現れた黒のフードを被った少女に話しかけた。


「ねぇ、聞いて?ルクスくんが……ルクスくんが!私と婚約したいと思わないって言ったのよ!!」



 この物語は今、あなたがこうしてこの物語を読んでくださっているおかげでありがたいことに【ラブコメ日間ランキング 2位】と【ラブコメ週間ランキング 2位】となっています!本当にありがとうございます!

 この物語を読んでいて楽しいと思ってくださっている方は、そのお気持を☆やコメント、感想レビューなどで気軽に教えていただけると嬉しいです!

 また、ここまで読んでくださっている方、いいね、☆、コメントをくれた方に引き続きこの物語を楽しんでいただけるよう、作者は今後も楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、あなたも引き続きこの物語を楽しんでくださると幸いです!

 今後もよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る