第4話 テイム


 僕はどうやら最強のモンスター図鑑を手に入れてしまったようだ。

 このモンスター図鑑さえあれば、どんなモンスターでもテイムできる。

 これを活かさない手はないな。


「さっそく、仲間を増やそう……!」


 これから冒険者としてやっていくにも、まずは戦力が必要だ。

 リルムは魔力こそ9000万もあるけど、今までろくに戦わせたことがないしな……。

 リルムに戦闘能力があるのかどうかはわからない。

 ゴブリンたちも、それほど強いとはお世辞にも言えない。


「とりあえず、森にでもいくか」


 僕は宿を出て街を出て、近くの森へやってきた。

 ここならいろんなモンスターがいる。

 とりあえず、出会ったモンスターをテイムできるか試してみよう。

 この図鑑に書いてあることが本当に正しいか、それで確かめられるはずだ。


 ――ガサガサッ!


「……!?」


 茂みの中から、一匹の小さな獣が飛び出してきた。

 白くて丸っこい、ウサギ型のモンスターだ。

 角が生えていて、可愛い見た目に反して凶暴だ。

 たしか名前は――。


「こいつは……!」


 そのときだった。

 手に持っていたモンスター図鑑が、宙に浮いて、ひとりでにページが開く。

 パラパラとページがめくれて、とある箇所で止まる。

 そのページを見ると、そこには目の前のウサギモンスターと同じ見た目の絵が描かれていた。

 どうやら、このモンスター図鑑は勝手に目的のページを開いてくれるみたいだ。


「すごい……どうなっているんだ……」


 図鑑にはこう書かれていた。



――――――――――――――――

【ツノウサギ】

 ★★★


 ・魔力 160

 ・テイム難易度 C級

 

 ◆説明

  白いもふもふのお尻が特徴的。

  可愛い見た目だが意外と凶暴。


 ◆テイム条件

  後ろから尻尾を捕まえてテイムする。

  辛口キャロットをあげるとよい。


 ◆特性

  憤怒:敵にダメージを与える度に攻撃力が1上がる。

――――――――――――――――



「ツノウサギか……」


 そういえばそんな名前だった。

 えーっと、テイムするには辛口キャロットが餌として有効なのか。

 辛口キャロットなら、ちょうど持ってる。

 僕はポケットから辛口キャロットを取り出し、それを放り投げた。

 するとツノウサギは辛口キャロットにかぶりついた。


「今だ……!」


 ツノウサギが辛口キャロットに夢中になっているあいだに、僕はうしろから近づいて、その尻尾を捕まえた。

 よし、この状態でテイムすればいいんだな……?


「えい! テイム発動! 汝、我が呼びかけに応えよ!」


 すると、僕の手から魔力でできた緑色の紋章が飛び出して、ウサギの額に吸い込まれて、消えた。

 ツノウサギの額に、しっかりとテイムの紋章が刻まれる。


「すごい……! ほんとうに簡単にテイムできた……!」


 いままでこんなに簡単にテイムできたことなんてないから、驚きだよ。

 やっぱりこの図鑑は本物だ。


「名前がいるよね。じゃあ、ハクトにしよう。よろしくね、ハクト」


 僕はツノウサギの頭をそっと撫でた。


「ツィ~♪」


 新しく仲間が出来て、とてもうれしい。

 この調子でどんどんいろんなモンスターをテイムしていこう。


 僕は図鑑の攻略情報を頼りに、どんどんモンスターをテイムしていった。

 次にテイムしたのは、ニワトリのモンスターである【ニワコッコ】だ。

 テイムしたニワコッコには「コッコ」と名前をつけた。


 最終的に、これだけのモンスターをテイムした。

 以下がそのモンスターの種類と付けた名前だ。



 ・ツノウサギ ハクト

 ・ニワコッコ コッコ

 ・キノコマン キノ

 ・吸血バット サイコ

 ・モグライダー モグモグ



「ふぅ、かなりの種類のモンスターが集まったなぁ……」


 これだけ数がいれば、今の僕らでもけっこう戦えるんじゃないだろうか。

 薬草採取のクエストとかを受けるにしても、これだけ数がいれば効率よくクリアできることだろう。


「さて、日も暮れてきたから、そろそろ戻ろうか」

「きゅぃ~」


 ポケットからちょこんと顔を出しているリルムに話しかけて、戻る準備をする。

 明日はいろいろクエストを受けてみよう。

 お金を手に入れるには冒険者ギルドに行って、クエストを受けないとだからね。

 これだけ仲間がいれば、きっと冒険者としてやっていけるはず。

 理想はどこかのパーティに入れてもらえればいいけど、まあこれだけモンスター仲間がいるし、ソロでも簡単なクエストならこなせそうだ。


「よし、戻ろう」


 そのときだった。


 ――ガサガサッ……!


 茂みから現れたのは、一匹の巨大な狼モンスターだった。

 

「ガルルルル……!」


 お腹を空かせているのだろうか、牙を剥きだしにして、こちらを激しく威嚇している。

 どうやら戦うしかないみたいだね……。

 けど、めちゃくちゃ強そうだけど……今のメンバーで戦えるのか……?


「ゴブ……!」


 ゴブリンたちが警戒しながら、僕を守るようにして前に出る。

 他のモンスターたちも、みんな狼モンスターに立ち向かおうとしている。

 そのとき、図鑑が開いて、狼モンスターのページが表示された。



――――――――――――――――

【ハクロウ】

 ★★★★★★★


 ・魔力 2300

 ・テイム難易度 A級

 

 ◆説明

  かなり強力な狼モンスターの上位種。

  真っ白な毛並みが特徴。

  その牙は人間を噛み千切り真っ二つにするほど。


 ◆テイム条件

  喉の奥にある青いコアの破壊。


 ◆特性

  俊足:周囲の味方の動きを一時的に速める

――――――――――――――――



「こいつ……ハクロウっていうのか……!? ただの狼モンスターじゃない……!」


 ★が7もあるなんて……。

 しかも魔力も相当だ。

 これは、今いるメンバーじゃ束になっても倒せそうにない……。

 逃げるにしても、ハクロウを撒ける自信がない……。

 どうする……!?


「でも、やるしかない……!」


 大丈夫だ、倒す必要はない。

 こっちにはテイムがあるんだから……!

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