九月十日

 拝啓、いかがお過ごしですか。お姉様のことですから、その大変美しい黒髪をなびかせて、海辺で物思いにでも耽っておられるではないかと、愚弟めは心配しております。だから、どうか電話に出てくれませんか? 問いただしたいことがあるのです。


 この前にお返事に書いてあった、私に中学時代の日記を持っているというのは本当でしょうか。

 はったりはよくありません。そんなものはない、なぜならもう処分したはずだからです。私はかつて、資源ごみの日にちゃんと捨てました。それを拾って脅迫材料としてこっそり保有していたのだとすれば、なんて悪魔的なことか! 占有離脱物横領罪だぞ!

 今ならまだ間に合います。その日記をどうか私のところに送ってください。

 確かに、私は今まであなたに、いい歳こいてなにやってるんだ、と思っておりましたし、実際そのように申し上げたこともあるかもしれません。あなたがいい歳してなにやってるんだと言ってくるのが嫌で、電話も着信拒否にしました。しかし、メールの方は拒否しておりませんでしたし、この度こうして心を入れ替え、電話の方の着信拒否も解除しました。偶にはかわいい弟の頼みを聞いてはいかがでしょうか。

 

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