第2話  竜になったボク

 ものすごい勢いで、地上に向かって落下して行った

 突然、何の前触れもなく、床がぬけたように放り出されたのだ。

 翠は、ビックリしてチビってしまった。

 それと共に、大きな叫び声をあげた。


「わ~~~~!!」


《少しは落ち着くニャ》


 パニックを起こしてるすいの頭に声が聞こえてきた。

 天界で、女神と話していたペルシャ猫の声だ。不思議とそれだけは確信が出来た。


「この状態で、どう落ち着けっていうんだよ!! 間違えなくぺしゃんこだぞ?」


 落下しつつも、大声で翠は叫んだ。


《女神が頑丈な体を与えるって言ったニャ》


 翠の目の前に空中を浮く神獣が現われた。


「何処が、頑丈なんだ?」


 翠の頭は回らない。


《女神は前に失敗してるのニャ。地球世界から女の子を転生させて精霊にさせたら、すぐに死んでしまったニャ。だから今度は男の子で、屈強な竜族に転生させたニャ》


「竜~~!?」


《しかも、風竜ニャ。飛べるハズニャ》


 翠には、竜なんて言われてもピンとこない。


《僕は、天界と地上のことを繋げる神獣二ャ。女神の頼みで君を迎えに行ったニャ。身体はもう竜になってるはずニャ》


 ますますパニックになる翠。

 とにかく、手をパタパタと鳥の様に羽ばたかせてみたが、飛んでるようには見えなかった。



 もうすぐ地上だ__

 そう思った時、翠は風の流れを受け止めることが出来た。重力に引っ張られるのではなく、風に身を委ねることが出来るようになっていた。


《風を感じることが出来たんだニャ?もう少しニャ》


「ありがとう、ボクは翠だよ。君は?」


《神獣のラルカだニャ。じゃあ、僕はもう帰るニャ》


「まって!! トラは?僕が助けた子猫はどうなったの?」


《あの子は、無事ニャ。ケガをしたみたいだけどニャ》


 余裕の出てきた翠は安心した。トラまで巻き込まれていたら悲惨だったから。こんな思いをするのは僕一人で十分だ……。翠は思った。


 やがて、翠は目にすることになる。

 自身の背中から、白銀色に輝く翼が出ていることに。

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