第4章
第35話
いよいよ明日から夏休み!
この待ちに待ったサマーヴァケイションを目一杯エンジョイする予定。
まず朝は12時に起きて、ゴロゴロしながらご飯食べてダンTV見る。
そんで、夕方くらいからダンジョンに潜ってかわいいモンスちゃん愛でながらまったり散歩配信かな。
夜は、みのりちゃんと一緒にネットゲームでもしながら、27時くらいに寝る。
う〜ん、なんて最高で完璧なスケジュール!
これはワクワクがとまらない──んだけど。
「問題はダンジョンに潜れるかどうか、なんだよねぇ……」
終業式が終わって、みのりちゃんとやってきたのは駅前のカフェ、スターボックス。
ここで夏休みのダンジョン計画をみのりちゃんと話し合い中。
本当は部室であずき姉も交えてやりたかったんだけど、部室の鍵を持ったまま職員会議に行っちゃったんだよね。
ま、たまにはこういう場所でやるのも良いってもんだ。
ちなみに、ちずるんは幼馴染のスカベンジャー喜屋武ちゃんと今後のダンジョン探索計画を立てに行ってて、小鳥遊くんは……よくわからない。
ダンジョンに潜りに行ってるってわけじゃないと思うけど。
だって、スタンピードの影響で、日本中のダンジョンのほとんどが立入禁止になっちゃってるし。
「ふむふむ……ダンジョンナビによると、8割以上のダンジョンは入場制限がかかってるみたいでござるな……」
「だよね……」
はぁ、と重い溜息。
先日のクリスタルドラゴンちゃん……いや、「ぴかどらちゃん事件」が起きてから4日が経つのだけれど、未だにほとんどのダンジョンが立ち入り禁止状態なのだ。
ごくわずかに残った、スタンピードの影響を受けていないダンジョンも多くのスカベンジャーさんたちが殺到していて大混雑。
言わば、真夏の市営プール状態。
そんな中でのんびり散歩配信なんてできるわけがなくて、こうしてダンジョンナビとにらめっこしながら探索計画を立ててるってわけ。
多分、ちずるんと喜屋武ちゃんも同じことで頭を抱えてるんじゃないかな?
てなわけで、先日から始まった大魔王軍オーディションも一時中止している。
立入禁止のダンジョンに入っても罰せられるわけじゃないけど、大量のモンスちゃんに襲われて参加者さんがリセット食らっちゃうかもしれないしね。
だけど、なんか勿体ないよね。
だって大量のかわいいモンスちゃんがいるわけでしょ?
完全に生殺し状態だわ……。
「そう言えばまお殿、例の掃除屋の件はどうなったでござるか?」
お上品に、クリームがのったなんちゃらフラペチーノに口をつけるみのりちゃん。
ハァハァしながら「オスみ」なんて言葉を放つ女子には見えない。
「うん、あれから正式にお手伝いすることになってね。近いうちに顔合わせをする予定なんだ」
「おお、そうでござるか」
先日、突然部室にあらわれてまおにダンジョン掃除のお手伝いを求めてきた八十神さんが代表を務めるクリーナーズ。
あの後、正式にメンバー選出のお知らせが来た。
それで、もうすぐ「掃除活動」がはじまるらしいんだけど、その前にメンバーの親睦を深めるために顔合わせをするんだって。
というか、スタンピードが起きてるのにダンジョンのゴミ拾いなんてやるんだね。
……あ、立入禁止になってるし、むしろ掃除しやすいのかな?
「部室にいらっしゃったクリーナーズ代表の八十神殿ですが、パパ上に聞いてみたところ結構すごい人らしくて」
「パパ上」
初めて聞く呼び方だけど、みのりちゃんが言うと可愛いからずるい。
そんなみのりちゃん曰く、八十神さんは「8SG-Robotics」っていうドローンメーカーの社長令嬢兼、執行役員なんだとか。
アメリカの超すごい大学を首席で卒業した「リケジョ」で、ダンジョン配信で一番使われているドローンちゃんの生みの親なんだって。
もしかしてあずき姉から借りてるのも八十神さんの会社のやつなのかな?
なんだかすごい人っぽい。
──まぁ、部室から帰るときに守衛さんに怒られて何度も頭を下げてたみたいだけど。無許可で学校の敷地内に入ってたらしい。
「しかし、流石まお殿でござるな。困ってる皆を助けるためなら労力を惜しまないなんて、利他精神が旺盛というか、献身的というか」
「お、大げさだよ。だって、ただのダンジョン掃除屋さんでしょ? いつもダンジョンを使わせてもらってる身としては、キレイにしておきたいじゃない?」
ほら、いつもかわいいモンスちゃんに出会わせてくれてありがとう的なさ?
そういう感謝の気持ち、大事だよ。
収益化も始まって、夢だったお小遣い稼ぎもできるようになったし、ホント、ダンジョンには感謝してるんだよね。
「……あ、そう言えばあずき姉から『掃除の意味、履き違えてない?』って言われたんだけど、どういうことなのかわかる?」
「え? 掃除は掃除でござるよ?」
「だよね」
「ええ。きっとダンジョンの合同ゴミ拾いでござるよ」
それ以外、ないもんね。
ガチ令嬢のみのりちゃんがそういうなら、間違いなしだわ。
ちなみにクリーナーズだけど、はまお以外にも何名か新規メンバーが選出されたみたい。
八十神さんの話では「実力が認められたスカベンジャーを選定した」らしいんだけど、トモ様もいたりするのかな。
顔合わせ、ちょっと楽しみだな。
「……あっ、みてくださいまお殿!」
なんてワクワクしてたら、みのりちゃんがいきなり声を挙げた。
「表参道25号ダンジョン、中層まで開放されてるみたいござるよ!!」
「えっ! ホントに!?」
すぐにまおもダンジョンナビから表参道25号を検索。
確かに中層まで「探索可」のマークが付いている。
25号って言ったら結構高ランクだし、探索してるスカベンジャーさんも少なそう。
これはチャンスかも!?
……あ、でも、25号はみのりちゃんが難しいか。まだ初心者さんだし。
まおは余裕だけど、う〜ん、どうしよう。
上層だけなら大丈夫かな?
上層エリアを散歩しながらかわいいモンスちゃんとかアイテムを探して──。
「……あ、そうだ!」
ピコーン!
いいこと思いついた!
「表参道25号に行って、宝箱を集めよう!」
「え? 宝箱?」
可愛らしく小首をかしげるみのりちゃん。
なでなでしたいくらいかわいい。
「宝箱を集めて何をするでござるか?」
「ふたりで宝箱開けて勝負するんだよ!」
「……?」
だけどみのりちゃんはピンときてないみたい。
「ダンジョンの各エリアって時間で宝箱が出てくるんだ。それを開けずに集めて、ふたりで交互に開封していくんだよ!」
「……あっ、知ってる! そういうのダンTVで見たことがあるでござるよ! ええっと……確か『宝箱開封配信』でござるな!?」
「その通り! どっちが高額アイテム引くか、勝負しようよ!」
「良いアイデアでござる! 楽しそう!」
ひとりでやっても結構盛り上がるみたいなんだけど、こういうのってふたりで勝負ほうが面白いよね。
どっちかが爆死したら大盛りあがり間違いなし!
「それじゃあ、負けた方は銀座の『ラデュレ・グランメゾン』のケーキを奢るというのはどうでござるか!?」
「おっ、いいね! 勝負には罰ゲームはつきものだもんね!」
思わずサムズアップ。
その、なんとかメゾンっていうのは良くわからないけど、銀座のケーキって言ったら間違いなく高級&美味しそうな雰囲気だし!
「よし、それじゃあ、早速表参道に向けて出発しよう!」
「はいっ!」
元気よく手を挙げるみのりちゃんにほっこり。
だけど──ふっふっふ、とてつもない墓穴を掘っちゃったね、みのりちゃん?
古参のまおファンなのに、まお様の運の良さに気づいてない?
我、千のスキルを与えられた女子ぞ?(誇張あり)
そんな幸運の星の下で生まれたまおが、宝箱ガチャなんかで負けるわけがない。
余裕で勝利……いや、ダブルスコア!!
あ〜あ、まいったなぁ!
勝負する前から、勝敗がきまっちゃったかぁ!
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