第38話 スタンピード

 ケイテラレントの街に襲い来るスタンピード魔物の氾濫



 オレが『火の壁ファイヤーウォール』を発動させると、人間の魔法使いたちも各々魔法を行使する。


 ここの街の冒険者ギルドに所属する冒険者たちのランクは高くはないという事を聞いた。


 なんでも、オレのいた『ドトフトの森』にはそれほど強い魔物はおらず、多くの冒険者は浅層にて薬草等を採取する活動がメインなんだからだそうな。


 そのほとんどは、登録したてのGランクからEランクの帯とのこと。




 集まった冒険者の数はおよそ200人。


 それに街の衛兵が約30人。


 普段は普通の職に就いている、街の自警団の人たちの数が約300人。


 そして質としては最高戦力になると思われる、領都から早馬で救援に来た騎兵が10騎という陣営だ。







 

 魔法攻撃をしているのは主に冒険者の魔法使いであり、その威力は単発の火球や水球、風の刃等が散発的に飛んでいく。


 そんな中、ひときわ大きな炎の壁が形成される。


 あれは、さっき森で出会った『煌めきの狩猟団』の魔法使い、ハーフエルフのパーリフォーシュさんの魔法だろう。


 なんでも『煌めきの狩猟団』は本来領都の方をメインに活動するパーティーのようで、そのランクもBランクと、この街では頭一つ抜け出ている実力を持っているらしい。


 そんなパーティーの魔法使い、かつハーフエルフだけあって、その魔法の威力はすさまじい。


 オレの『火の壁ファイヤーウォール』がLv2であることを踏まえると、おそらくパーリフォーシュさんの火魔法はLv6くらいはあるんじゃないかな?


 とても幅広く、とても高い炎の壁が魔物を焦がしていく。



 当初、見張り台の冒険者の見立てでは魔物の総数は2千体くらいとの報告であったが、これまでの魔法戦で500体くらいは削れただろうか?


 オレの魔法でも300体以上は倒したような気がしていたのだが、それを裏付けるかのように、脳内にアナウンスが流れ出す。



【角狼ゾンビを100体討伐しました。同一種族の100体討伐ボーナスとして、討伐種の特性の一部が付与されます。――付与該当スキル、ありません。】


【牙狼ゾンビを100体討伐しました。同一種族の100体討伐ボーナスとして、討伐種の特性の一部が付与されます。――付与該当スキル、ありません。】


 って、先頭集団の狼はゾンビだったのかよ!


 まあ、たしかに元が狼なうえに疲労も損傷も気にせず走ってくるんだから足が早くて当然か。 


 ゾンビだったら道理でよく燃えるはずだわ。



 それにしても、そのアナウンスの意味あったのか?


 該当スキルってあんた。


 まあ、ゾンビのスキルなんざもらっても困るかもしれねえしな。


 たとえば『腐敗促進』とか『腐肉増殖』とか、そんなスキルはいらねえ。


 

 で、足の速い先頭集団の狼ゾンビ共はあらかたかたずけ終わったとみていいだろう。



 となると、お次は生きている狼さんが突っ込んでくる番かな。


 そう思っていたら、何やら頭上でバサバサやかましい羽音がする。


 そうか、この森には飛行系の魔物も生息していたんだな。


 そういえば、地面に掘った巣穴で寝ている時に上空から狙われたりとか、洞窟のなかにコウモリさんとかいましたね。


 んー、どうしよう。


 ウサギに対空能力はねえんだよな。


 土魔法は頭上に撃てねえし。



 接近してきた飛行系の魔物たちに、申し訳程度に『火球』を頭上に放って数体の鷹みたいな魔物を打ち落とすと、櫓の上に立つ冒険者たちから弓矢が放たれ始めた。


 よし、空飛ぶ奴は弓隊に任せ、オレは地を這う者どもに注力しよう。




 ◇ ◇ ◇ ◇


 魔法や弓の遠距離戦がひと段落し、それを潜り抜けた魔物の群れがいよいよ街門の近くに押し寄せてきた。


 この距離での魔法の使用は味方を巻きこむ恐れがあるため、そろそろ魔法は打ち止めだな。


 オレは、今にも突撃を始めようとしていた騎馬に乗る騎士の前に出て先頭に立つ。



「おいおい、ウサギちゃん? まさか俺たちの先陣をきってくれるのかい?」


 なんか、騎士にしてはチャラい感じの奴が話しかけてくる。



「セブリアンよ、ウサギ殿に失礼な物言いをするな。失礼、ウサギ殿。わたくしはエルネスト・ハンブリナと申す者。領都エーリアドの騎士団で団長を務めています。この度のウサギ殿の活躍、誠に武人の鑑と感銘を受けております。それでウサギ殿。この場に現れて頂いたという事は、我らとくつわを並べてともに戦ってくれるという事で宜しいのですかな?」


 おお、こっちの人は騎士団長様か。


 道理でわきまえているというか礼儀正しいというか。その髭カッコいいな!


 オレは団長様の問いかけにおもむろに頷きを返し、魔物どもに正対する。



「かたじけない。では、ともに参ろうぞ」



 団長様はオレの隣に馬を寄せ、いざ出撃の合図を出そうと片手を上げる。


 団長様と視線を合わせ、互いに頷くと、団長様の声が高らかと戦場に響く。



「騎馬隊、突撃ーーーーーー!」



 団長様の号令と合図に合わせ、騎乗している騎士たちが一斉に進軍を始める。


 そしてオレもそれに合わせて進軍するのだが、ウサギが騎馬と一緒に並んでいいのかな? 騎馬隊突撃って言ったけど、ウサギ隊も一緒でいいのかな?


 絵づら的に結構間抜けになっているのではなかろうか?



 まあいいか。


 このまま魔物の群れに突っ込んで、ウサギ隊が風穴を開けてやるぜ!





 


 ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


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