社畜、緊急配信をする 後編

 突然と開始した配信にも関わらず、続々と人が集まってくる。


《なんぞやなんぞや》

《おいここ新宿じゃねぇか》

《今新宿やばいかったよな?》

《ダンジョンブレイク起こったって聞い

 た》

《おまけに虫型モンスターだから面倒だぞ》


「皆様こんにちは。俺は今、霧世社長からの命令で配信で情報をいち早く伝えろとの事なので配信してます。死体などが映るので閲覧注意です。話している時間も無いので……それでは行きましょうか」


 軽く一連の流れをリスナーに伝える。


 さて、まずは……ここにいるヤツらを片付けるとするか。


 数百メートル先に見える大蜘蛛目掛けて、短剣を構えながら突っ走る。

 大蜘蛛も俺が接近していることに気付き、こちらに振り向こうとしたが……次の瞬間には切り刻まれ、肉片になっていた。

 肉片を過ぎ去り、次の標的を見据えながら俺はリスナーへ向かって話しかける。


「これからこの処理方法で行きます。急にモンスターがバラバラになっても疑問に思わないでください」


《Q.虫型モンスターはどうやって討伐すればいいですか?A.肉片にします》

《※違います》

《始 ま り ま し た》

《伝説がまた作られるぞ》

《俺たちこんな呑気にしてていいんだろうか…》

《所々死体が見えるし…マズイね》

《渋谷ダンジョン大災害の再来だったら最悪だぞ》


 その可能性は無いと信じたいが…蔓延っているモンスターは全てA級モンスター。渋谷ダンジョン大災害はS級モンスターだったが、A級でも十分な脅威だ。


 大蜘蛛、巨大蟻、上空で痺れ粉を撒き散らしている巨大蛾を縄を括り付けた短剣で切り刻みながら新宿を駆け続けていく。


 時折生存者を見つけては新沙が合流し、引き取ってくれている。毎回毎回恨めしそうな目を向けていたが……


 ……それにしてもキリがないな。殺しても殺してもモンスターの数が減っている気がしない。現に後ろで倒したモンスターの周りで、モンスターが歩き回ってるし。

 かなり面倒だ。恐らく何処かで卵が孵化し続けているか、ダンジョンから出てきているかもしれない。


 俺はどう対処すべきか考え、またもや学生時代の記憶を思い出した。


 そういえば何かで虫は仲間思いが強いとか聞いたことがあるな……蟻だったか?女王から生まれた蟻は家族意識を持つと聞いたことがある。しかしダンジョンには女王などいない。層主はいるだろうが、モンスターを生んでいるのは……もしそうだったら、こうするしかないよな。


 そこら辺を歩いていた巨大蟻の首を落とし、胴体は肉片にする。

 首を持ったまま視界に映る高い建物に移動し、首を掲げて叫ぶように悲惨な状態になった新宿へ声を響き渡らせる。


「おい害虫共!仲間が殺されて悲しいか?!だったら報復しに来い!!」


《うるせっ》

《おいおい死んだわあいつ》

《でも生き残るのが高橋なんだよなぁ》

《仲間呼ぶのは馬鹿すぎて草》

《自分の強さを知っているからこそこんなことができるんだろ》


 コメント欄は困惑2割呆れ8割ぐらいか……まぁいい、今は目の前のことに集中だ。


 やはり俺の仮定は合っていたらしく、続々と俺が居る建物の下にモンスターが集まってくる。


 ……かなりキモいが、これで一匹一匹殺す手間が省けた。


 俺は普通の短剣を片方アイテムボックスに仕舞い、代わりに違う短剣を取り出す。

『空落』…落ちた高度によって威力が変動するいった短剣だ。

 ここの高さから地上までは…ざっくり50mと言ったところか。これぐらいの高度でも十分な威力は出るし…それじゃ早速!


「レッツスカイダイビング!」


 モンスターが最も集まっているところ目掛け

 て降下していく。

 更に勢いを上げるためにアイテムボックスから数十キロはする重りを取り出す。


 重りによって上がった勢いで地上を降り立つと…丁度真下にいたモンスターがぺしゃんこになった。勢いは衰えておらず、地面を崩落させる。


 これやばいかな…?まぁ今一大事だし許してくれ。


 崩落に巻き込まれ、崩れた道路やビルで押し潰されたモンスターがちらほら見える。しかしそれでもモンスターの数は減らない。


 仲間を大勢殺され、怒り狂ったモンスター達が轟音を立てながら俺に向かってくる。


 空落を仕舞い、また普通の短剣を取り出す。


「こいつら片付けたらダンジョン探しに行くか…」


 俺は短剣を構え、モンスターの軍勢の中に駆けて行った。


 *****


 最後の一匹の頭を潰し、身体中に掛かった返り血を払う。


 数分前まで無数にいたモンスターは跡形もなく居なくなっていた。


《やりやがった》

《伝説です》

《お前ならやるって俺は信じてたよ》

《お か し い だ ろ》

《皆さんこれは現実ですか?》

《※現実です》

《現実で有り得ちゃダメなことしてる》


「駆除できたから良いんだよ駆除できたから。さてと、後はダンジョンを見つけるだけだな」


 俺は先程登っていたビルへ上り、新宿を見渡す。

 溢れかえっていたモンスターは一匹も居らず、その代わりに浮き彫りになったジャングルのような入口をした形をしたダンジョンを見つけた。


 あそこが今回のダンジョンブレイクの発生源か…


 ビルとビルを乗り移っていき、ダンジョンの近くのビルから観察する。


 ダンジョン内から滲み出る膨大な魔力……この感じ…最深層主か?かなり厄介そうな層主だ。

 これは…武蔵が10体居ても勝てないな。


 だが、やることはただ一つだけ。

 被害を増やさない為にも、ここで害虫駆除を終わらせる。


 刃こぼれした短剣を新しい短剣へ替え、俺はダンジョンへ潜って行った。




 ------------

 えちょまです。

 部活の大会があって書けてませんでした。

 さーせん。

 それじゃ

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