第02曲 僕等が笑う理由は:ASCA『VIVID』

 二〇二三年三月十三日の水曜、「ASCA(あすか)」さんの三枚目のアルバム『VIVID』がリリースされ、それに伴い、CDの発売を記念したリリース・イヴェントが全国五か所で催される事になっている。


 この論考の末に、その収録曲と、曲ごとの作詞、作曲、編曲者の一覧を付しておいたのだが、その作成時に気付いたのは、ASCAさん当人が、作曲や作詞に携わっている曲が数多く含まれている事である。

 

 作曲をしているのは、最初の「Overture」と最後の「Departure」の二曲なのだが、作詞に関しては七曲を手掛け、うち五曲は、共作ではなく、単独の「ASCA」名義である。


 二〇一九年発売の一枚目のアルバム『百歌繚乱(ひゃっかりょうらん)』では、四曲の作詞をしつつも、単独の作詞は一曲、二〇二一年リリースの二枚目のアルバム『百希夜行(きゃっきやこう)』では、六曲の作詞をしつつも、単独は、一枚目のアルバム同様に一曲であった。


 つまり、作詞に関わった曲数は、四、六、七と徐々に増え、さらに、単独で作詞をした曲の数は、一、一、そして三枚目は五と大幅に増えているのだ。


 このような単独名義での作詞数の増加は、制作者サイドが、ASCAさん一人に作詞を全面的に任せても問題無し、と判断した故の事かもしれない。

 そしてさらに、作詞した本人以上に、詞の内容が分かっている者はいないのは道理なので、アルバム収録曲は、歌詞への深い理解に裏打ちされた歌唱が期待できよう。


 このアルバム・タイトルの「VIVID」は、〈鮮やかな〉という意味の英語の形容詞なのだが、文字の形に注目してみると、「Ⅵ」と、ローマ数字の〈六〉を認める事ができ、つまり、ニュー・アルバムは、昨年秋にデビュー六周年を迎えたASCAさんのある種の〈成長ノ証〉となっている次第なのだ。


 このアルバムの最後を飾っているのが「Departure」で、この曲は、ASCAさんが、作詞のみならず、作曲もまた単独で行なっている。


 〈出発〉を意味する「Departure」、ここに様々な意味付けを為す事ができようが、単独での作詞が増えた、集大成にして成長録である、最新のアルバムの最後に置かれた再〈出発〉の曲に、シンガー・ソングライター・ASCAの萌芽を感じられはしないだろうか。


 そんなASCAさんに、アルバムの感想を直に伝えられるリリイヴェが、アルバム発売日当日に渋谷で催された。

 しかも今回は、毎週水曜にやっているラジオの公開生放送が、リリイヴェの前に催される、というおまけ付きであった。


 こういった理由から、リリイヴェに参加している僕等は笑顔になっている分けなのだ。


〈参考資料〉

〈WEB〉

 『ASCA』、二〇二四年三月十三日閲覧。


〈曲情報〉

『VIVID』、レーベル:SACRA、二〇二四年三月十三日発売。

 [収録曲]

 一.「Overture」

 作曲:ASCA、編曲:戸嶋友祐

 二.「VIVID WORLD」

 作詞:ASCA、作曲・編曲:YOSHIHIRO (KEYTONE)

 三.「上海小夜曲(Shanghai Serenade)」

 作詞・作曲:熊谷和海、編曲:岸田勇気・熊谷和海

 四.「Stellar」

 作詞:杉山勝彦、作曲;杉山勝彦・GINPEI、編曲GINPEI・杉山勝彦

 五.「君が見た夢の物語」

 作詞・作曲・編曲:梶浦由記

 六.「カルペディエム」

 作詞:ASCA、作曲・編曲:石元丈晴

 七.「命ノ証」

 作詞:ASCA・Saku、作曲・編曲:Saku

 八.「あなたが居ないこの世界でも」

 作詞・作曲:阿部真央 編曲:ミトカツユキ

 九.「リンネ」

 作詞:ASCA・Saku、作曲・編曲:Saku

 十.「私が笑う理由は」

 作詞:ASCA、作曲・編曲:古川貴浩

 十一.「あげる」

 作詞・作曲・編曲:温詞

 十二.「No Voice, No Live」

 作詞:ASCA、作曲:ASCA・重永亮介、編曲:重永亮介

 十三.「Departure」

 作詞・作曲:ASCA

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