第25話 最強の俺、敵の兵器を壊す
「なあ、これって敵の秘密兵器なんだろ。どう考えても警備が手薄すぎやしないか?」
「うーん、確かにそうミャ。これなら、ボク一人でも壊しに行けそうニャ」
アスキーを補佐につけ送り出されてきました敵地ど真ん中。
俺たちは小さな門と高い塀で囲まれた、屋敷近くの茂みに隠れている。
警備は手薄で5分もあれば攻め落とせそうなほど。
今すぐ暴れてやってもいいが、嫌な予感があって二の足を踏んでいた。戦争の鍵となる兵器だろ? どう考えても警備が手薄すぎる。
守っているのは明らかに経験も薄そうな冒険者たちであくびなんかしている。
「こっちの情報網を舐めてた可能性もあるミャ。警備を手薄くして、兵器がある場所の候補から外させる作戦かニャ」
頭の中で検討してみるが、そのやり方はサウ王国らしくない気がする。
選ばれた民が権利を持つにふさわしいと思っている彼らが、冒険者たちに重要拠点を任せるなんて想像がつかない。しかも、あんなひ弱そうな……。
「……手前の奴らは油断させるためで、中に強力な敵が何人も控えているのかもしれないな」
引き殺されてもいいつもりで冒険者を餌に使う。言ってみてそれが一番ありそうな気がしてきた。
けれどまあ、そろそろ腹を決めなきゃいけない。
いつまでもこうしていては、あの兵器が放たれてしまうかもしれないんだから。
そもそも俺の攻撃を阻める冒険者なんてサウ王国内でもそうはいないはずだし、突入一択。
元首も可能な限りの平和解決を約束してくれたし、まずは破壊ミッションをこなしていこう。
立ち上がろうと態勢を変えた俺の横でぼそりとアスキーが言う。
「……レビアがいたらいやだミャア」
「やなこというなよ、そう言ったら出会っちゃうだろう」
ぶるりと体が震えてしまう。
武者震いだと思っておこう、うん。
実際、レビアと一対一で戦った場合、どうなるのか。
冒険者の性で頭の中でシミュレーションしたことは何度もある。
自分が負けるビジョンは見えないが、勝てるビジョンも見えないというのがその結果だ。知る限り、俺に対して唯一正面切って攻撃が通る人間があいつだ。
泥沼の戦いは避けられないだろう。
まあ、考えてもしょうがないか。
出たとこ勝負と思考を放棄して、俺は、茂みから敵の前へと姿を現す。
監視役の冒険者が叫んだ。
「来たぞ、敵だ!!」
俺は伝令で敵が一目散に逃げてくれたりしないかなぁと思いながら、大剣を抜いて技を繰り出す。
「風月刃!」
狙いはなるべく上方。誰もいなさそうなところへ。
風の刃が門と壁を破壊し、その欠片すらも消し飛ばして塵にする。
「俺は冒険者ルード。その名を知っているものは恐れろ。逃げるものは追わない!」
自分で言っていて恥ずかしくなるような口上を彼らに向けて放っ……たつもりだったのだが警備していた冒険者たちは俺のことを見向きもせずに一目散に逃げていた。
「あれ?」
不審に思いながらもとりあえず走り、屋敷の中心を目指す。
そう。おそらく俺の先ほどの予測が正解だったのだ。
本命が中にいる……!
入ると、図面で見たあの大きな魔動装置が正面に鎮座していた。
そしてその周りには殺気を放った人影が――いるなんてことはなかった。
「へ?」
俺が不思議に思って足を止めている間に、後ろから追随していたアスキーが攻撃を放つ。
「ウィークショット!!」
魔動装置の弱点を狙った一撃で、装置は原型をとどめず、もろくも崩れ去る。
いや、ほんとに、一国の危機をこんな簡単に回避しちゃっていいの?
俺はちょっと心配になりながら、
「任務完了ですミャ!」
と、ハイタッチを交わしてくるアスキーの手に戸惑いながら応えるのだった。
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