第11話 最強の俺、仲間を紹介する

結論から言うと、俺が掘って進んできた距離は実はそこまでではなかった。

地上を通ると数十キロの距離になるが、それぞれのダンジョンに込められた魔力が引き合った結果距離が短くなるらしく思ったより距離が短かったのだ。

距離にして10kmほど。

俺としては朝のジョギングにちょうどいい、くらいの距離だが、レビアとしてはご不満なようだった。


「まったく。確かに想定よりは短かったけど、なんで私がこんなに歩かないといけないのよ」


ぶつくさ言いながら歩いていた彼女だったが、文句は言いつつ息一つ上がってない。高位神官殿は体力もピカイチなようだ。

そんな不満たらたらの彼女だったが、拠点につきクミの作った家具各種を見るとテンションが爆上がりした。


「なにこれ、素敵! うわ、このベッド、ふっかふか。あんたこんないい場所で毎日寝てるわけ? ていうか、この模様滅茶苦茶凝ってるわね。すっごい綺麗。高位神官御用達の家具職人にも劣らないんじゃない?」


使い始めたばかりだが、昨夜俺が寝ていたベッドに美少女が寝ていると思うと、なんだかよからぬ気分になってきそうでぐっと抑える。

うん、これから仲良くちょっと遠いがお隣さんとして暮らしていくのだ。先走るなよ、俺。


クミはというと、突然の来訪者を歓迎しているようだった。


「ええ、ええ、わかりますか。そこの装飾はわたくしとしても、かなり気を使って仕上げたところなのですよ。ああ、この良さがわかる人に出会えてよかった! ルード様は実用性重視でそう言ったところをまったくほめてくださらないのです」


おいおいと泣くクミ。

体から液体があふれ出しているが、まあ無視だ。


「ねえ、クミちゃん。私も、彼と同じようにあなたに家具作りをお願いしたいんだけど、いいかしら? ちゃんと体から切り取るときは、聖魔法で痛みを鈍化するから」


レビアの言葉に、クミは花弁を輝かせる。


「ええ、もちろんですとも。この家具の良さをわかる方に使っていただけるのであれば、私は本望ですよ。ただ、申し訳ないのですが、わたくし共には想像力がなく、一度レビア様に体に接続させてもらうことになるのですが、構いませんか?」


「それくらい、お安い御用よ。ほら、やってちょうだい?」


レビアが、クミの根の中に体を預ける。

ちょっと触手に絡まれてるみたいだな、と思ったが、げふんげふん。考えないでおこう。

お隣さん、彼女はお隣さん……


そう言って背を向けた俺の後ろで、静かな殺気が巻き起こる。


「ふっふっふ。馬鹿な人間め、この根に絡みつかれたが最後。お前は養分となるしか……」


「クミちゃん、必要なものは見れそう?」


とろーんとした表情をしつつも、自我を完全に保ったその発言に、クミは目を白黒させる。


「えっ、なんでそんな自我が……」


「言ってなかったっけ。たぶんレビア、俺並に強くて耐性あると思うよ。ていうか、お前それ毎回やらなきゃいけないわけ?」


ツッコみを入れるとしゅんとしたクミが、つぶやく。


「しょうがないじゃないですか。強そうってわかっていても、わたくしたち植物系モンスターの本能なのですもの、やらないと……」


本能に振り回されているのか、なんだか可哀そうになってきた。

夕食はちょっと大きめのボアでも狩ってきてやろう。

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