第10話 昨日の事、誰にもバレなかったね

 二日目。星矢の方が先に目が覚めた。愛未は寝ている間ずっと星矢の手を離さなかったのだろうか、星矢が起きた時も手は繋いだままだった。

愛未は起きるまで何度も寝返りをうち、その度に星矢の頬に顔が接触した。


………か、かわいい!!いわゆるソフレってやつ?………


そんな青春のような時間を過ごしていると愛未も目を覚ました。


「あ、そういえば私、ここで寝たんだった」


思い出したかのように我に帰る愛未。星矢の幸せな時間は終わってしまった。


「昨日の事、二人だけの秘密ですよ?」


「もちろん。誰にも言うつもりはないよ」


「本当に楽しかったです。ありがとうございます!今日のイベントも楽しみですね!」


「そうだね!」


「じゃ、私、自分の部屋に戻りますね」


そう言って星矢の部屋から出て行く愛未。星矢は最初は幸せだったという気持ちを持っていたが、昨日の愛未の発言の好意自体は今の遠距離彼氏にあるという発言を思い出し、添い寝してても幸せを感じていたのは自分だけだったのかもしれないと虚しい気持ちも持っていた。愛未への不信感も募らせていた。

まさに一言では言い表せない感情。

それが今の星矢の心情だった。ちなみに愛未は昨日シラフだったらしい。



 時間が過ぎ、朝食の時間となった。愛未は周りのみんなとは普通にいつも通りの感じで接していた。星矢は昨日の状況がまだ整理できておらず、考え込んでいた。

そんな星矢の隣の席に愛未が狙ったかのように座り、耳元で囁いた。




「昨日の事、誰にもバレなかったね」



ゾッとした。本当に何考えてるか分からない愛未に恐怖を覚えていた。

さらに星矢の前の席には怖くて少し苦手な上司、内間さんが座った。


………うわ、ここ内間さんか。もう散々だな………


「真鍋くん。昨日の夜、何してた?」


内間さんにそう聞かれ、内心ビクッとした。昨日の出来事がバレてるのかヒヤヒヤしていた。


「昨日はすぐ寝ちゃいました。疲れてたんで。」


「そう。宴会場にいなかったから気になって」


ホッとした。


………それだけか。でもよくいないって気づいたな。結構人残ってたはずなのに。まあいいか。………



 昼はみんなで海に行った。


「星矢さん!私の水着見て興奮しないでくださ〜い」


からかって愛未は走って逃げて行った。


はあ。ため息しか出なかった。色んな感情が混ざっている。


「ずいぶん疲弊してるみたいだな。」


博が声をかけてきた。


「もう疲れちゃってて」


「でも愛未、誰にでもあんな感じだし気にしなくていいと思うけど」


そうか。博は昨日の出来事を知らないからいつものお調子者な愛未の印象なのか。


「今日の夜さ、ちょっと話せる?」


「いいよ」


今日の夜、博に相談して落ち着きたい。そう思った。


結局、海の時間は博や春花と遊んでいた。



 夜はBBQを行った。交流がメインだから自由な場所で食べていい。星矢は昨日の事を整理したかったため、愛未には近づかず博や春花の近くで食べていた。

しかし、いつものお調子者な感じで愛未が星矢の近くに来て、星矢の眼鏡を奪って「没収でーす」と茶化した。星矢は普段はコンタクトだがお風呂の後だったので眼鏡をしていた。眼鏡がないとボヤッとするくらいまで視力が落ちるが全く見えないわけではなかったので取り返そうとはせずにそのまま過ごした。

添い寝は幸せを感じたが、それ以上に相手するのに疲弊していたため、相手するのが億劫だった。

すると近くの卓の社員たちの声が聞こえてきた。


「愛未さ、ちょっと調子乗り過ぎだよね」


「わかるー。明らかに男モテ狙ってるのもあざといし距離近すぎだし正直うざいよね」


星矢はその言葉を聞き、あざとい部分は共感していたし、愛未の周りからの評判も気になったため、春花にも聞いてみた。


「中野さんはさ、愛未の事どう思う?やっぱり距離感おかしいなーとか調子乗ってるなーとか思う?」


「愛未とは仲良いので悪くは言いたくないんですけど、、。正直距離が近いなぁとは思います。狙ってやってるのか天然なのかは分からないですけど抑えた方がいいなとは思いますね。だからといって嫌いとかではないです」


………何て完璧な解答だ。凄いよ俺の彼女的存在の人!!………


「どうしました?何かありました?」


「大した事じゃないんだけどさ」


「相談乗りましょうか?今日の真鍋さん、いつもよりソワソワしてましたし何かあったのかなーと」


正直、後輩に相談するのは少しダサいと思ってたが昨日の事が整理できておらず、誰かに話したい気持ちはあったため、春花に相談することにした。それに春花ならその相談を誰にも漏らさずに黙っててくれる信頼があったからだ。


「うん。なるべくみんなに聞かれたくないからさ、宴会が始まった後、抜け出して海とかで話せるかな?」


「いいですよ。その代わりアイス奢ってください!」


………もちろんです。そんな可愛い顔で頼まないでください俺の彼女的存在の人!!………


その後もBBQは続いたが愛未はかなり酔っていて星矢の腕にしがみつきながら「もう2ヶ月も彼氏と会えてない〜」と寂しそうにゴネてきた。


星矢は本当に愛未が意味分からなくなっていたので腕を振りほどいて部屋に戻った。


………よく昨日の今日でそんなこと言えるな、、………



結局、愛未は上司たちに介抱されながら自分の部屋に戻った。



 そして宴会が始まって少し経過した頃。星矢は約束通り、春花にアイスを奢り、二人で海に行った。





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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!感想や主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。

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