第3話 悪役令嬢の所持品検査

顔に光を当てられている感じがする…朝日の光かな…

昨日はなかなか寝付けなかった気がしたんだが、


気が付けば私は朝までグッスリと熟睡していたようだ。

「起きたようね。よく眠れたかしら」


ヴァイオレットの声が聞こえる

「あ、はい…執事であるのにこんなに休みを頂いて申し訳ありません。」


私は眠い目を擦りながらベッドから体を起こし周りを見渡すと

ヴァイオレット率いるメイドと執事がベッドの周りを固めていた

「お、おはようございます…これはいったい…」

「眠っている間に貴方を解析させてもらったわ

 とんでもない力を隠し持っていたのね、知らなかったわ」


「これが何か分かるかしら?」


ヴァイオレットは手のひらの上に浮いている半透明の球を見せてくる

サイズは野球のボールほどでゆっくりではあるが回転をしている

まるで小型の地球のようだ。


それはそうと、とんでもない力ってなんのことだろう。

…もしかして転生した時にチートでももらったのかな?


「…それが何かわかりませんが、綺麗な球ですね」

「これはラインが元々持っていた物ではない。転生した時に付与されたと思われるチート能力を抽出したものよ

 見ての通り、没収させてもらったけど。」

「えっ?」


チート能力!?そんなものを持っていたのか私は!?

全く覚えがない!


…まさか、

未来の情報をしゃべり、チートも取り上げられたこの状況。

これはもう用済みとして扱われる流れなのでは…?


「過去に現れた転生者も神様からチートをもらったと聞きます

 あなたもそうなのね?」

「いえ、神様からもらった覚えはありません。…何故そんなものがあるかなんて私にもよく…

 それはそうと、いったいどんな能力なんですか?」


「それは…」

「お嬢様、朝食の準備が整いました」

「分かったわ。ライン、続きはあとで話します。

 貴方の分の朝食を持ってこさせるから、ここで待っていて。」


ヴァイオレットはそれだけを告げると部屋から退出する

周りを固めていたメイドと執事もそれに続いて退出した

いったいどんなチートだったんだろう。気になる…





Sideヴァイオレット


部屋を出た私は外に待機させていた3人の偽証感知の天秤を持つメイドに声をかける


「それで、天秤の動きはどう?」

「特に異常はありません。ラインは真実を述べています。」

「同じく」

「同じく」


「そう、まずは一安心だわ。こんな危ない物を意図的に隠していたわけではないみたいで

 ではラインの部屋に朝食を運び込み、軽く世間話をしながら探りを入れてきなさい

 今の彼は割としゃべるタイプだわ。」

「かしこまりました。」





Sideライン@カナタ


ヴァイオレット率いるメイド、執事が部屋を出て行って数分

新たなメイドがカートワゴンに食事を乗せて運んできた。

量も多い、昨日はろくに食べ物を食べてなくてお腹が空いていたからありがたい。


「ラインさーん朝食を持ってきましたー♪」

「あ、ありがとうございます。」

「そんなに固くならないでー同じお嬢様に使える身なんですしー

 それよりも、いつもと雰囲気が違うラインさんとちょっとお話してみたいなー★」


そのメイドは軽い口調でおしゃべりなタイプなのか、共に会話が弾んだ

どうやら私の前世の話に興味を持っているようだ

そこで私はメイドとの会話が楽しくなり、互いに口も緩んできて色々な事を話した。


前世の自分はどんな人物で何をしていたのか、

住んでいる場所はどんなところなのか、

趣味や娯楽、

この世界がゲーム、物語の世界であることを話してしまった



会話をしながら一通り食事を終え、メイドは食器をカートワゴンに乗せて退出する

「今日は面白い話を聞かせてくれてありがとーございました~♪

 また今度続き聞かせてね~★」

「はい。ではまた…」






Sideメイド


「お嬢様…はもういないわね。ということは会話内容は全て真実…」

「はい。天秤に反応がなかったようです。」


「前世の記憶を思い出したライン、チョロすぎませんか?ニコニコ世間話してたら全部しゃべりましたね。」

「お嬢様は前世の記憶が強く出ているのではないか、との見解です。完全に別人になっているとのこと…」


「ラインがこのままだといいんだけどなー。以前のラインは常に不愛想で堅苦しくてしょうがなかったわ

 仕事を実直に取り組む姿勢は悪くなかったんだけど…」

「同感です。」

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