謎の男の正体

タケ殿達の協力も得ながらアヨータヤーで交易をしていたある日、アヨータヤーの王宮からワン殿が呼び出しを受けた


帰ってきたワン殿曰く、アヨータヤーの王子がわしやノブナガ様達に一度会って話がしたいとのことで、王宮に伺うこととなった


「余がアヨータヤーの王子、ナレスワンである

そなたらが最近この街にやってきたイープン(ジパングの人間)であるか ポルトケー(ポルトガル)の傭兵団…ではなさそうだな」


は、我々はマカオのルイコスタ商会の者で、この者はヒデカズ タキガワ、その横におります者がノブナガとヤスケと申します

傭兵団ではございませんがこちらのヒデカズやノブナガはヒノモトではサムライをしておりましたので戦は少々


「ふむ…ノブナガ、か

先日死んだと言われるイープンのサムライの王もノブナガという名であったな

…まぁよい、実はそなたらに頼みがある

恥ずかしながら、王子とはいえこの国は先年西のビルマのタウングーに負けたため従属しており、父王はタウングーに立てられた傀儡に過ぎず、余の姉に至ってはタウングーの王の妻という名の人質よ 惨めなものだ

しかしこのアヨータヤーもいつまでも従属しているわけにもいかん

独立せねばならん!…ならんのだが、タウングーがそれを黙って見ているはずもなかろう

遠からず奴らがここにも攻め寄せてくるであろうから、戦の際に手を貸してはくれぬか?無論それなりの褒美は取らせる」


私どもは商人でございます故…

ワン殿は恐縮しながらそう答える

たしかにいまの我々は商会の一員としてきておる故、勝手に手伝い戦などできるわけがない

ノブナガ様なら性格上そんなことを無視して参戦しそうであったが、意外にも黙っていた

そしてこのナレスワン王子、ヒノモトの情勢も把握しているとは侮れないな


「そうか、残念だが止むをえまい

ところでそのヒデカズが持っておるのは鉄砲だな

…鉄砲はよいものだな

前回奴らが攻めてきた時に川を挟み攻め手の前線の大将を余が鉄砲で討ち取ったのよ

あの戦いは我らの自信となった

鉄砲や弾薬が積荷にあるようであればぜひ買わせてほしい」


は、私物ではなく積荷の分でよろしければ喜んで


「やはりそなたらポルトケーの商人や宣教師は船に鉄砲を積んで売り歩いておるのだな 我らアヨータヤーにもタウングーにも… その鉄砲で我らは潰しあっておる …まるで我らはそなたらポルトケーの掌で転がされておるようじゃな、ははは 積荷には他にどんなものがある?良いものがあれば買わせてもらおうか」

ナレスワン王子は自嘲気味に笑われながらも積荷に興味を示され、王宮で色々とお買い上げのようだ


わしの横に控えておるヤスケだが、なぜかその表情には静かな怒りがあるな…わしの知るヤスケはあまり怒らない男のはずだが、なにがあったのであろうか?

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