こんなオレでも異世界に行った。そして無事に帰ってきた!文句があるか?野郎ども!?

奈那美(=^x^=)猫部

第1話

 オレには三分以内にやらなければならないことがあった。

それは三分以内に魔王を倒すこと。

そんなこと、オレにできるはずないだろう!!

三分だぜ?たったの三分。

三分なんていったら、カップ麺すら作れねえんだぜ?

 

 あ?そこのお前、三分あればカップ麺作れるだろうって?

馬鹿言ってるんじゃねぇ。

カップ麺ってのは、まわりのフィルム包装をはがして、ふたをめくって、お湯を注いで、それからできあがるんだ。

カップ麺を手に取ってから、三分以上は確実にかかるんだ。

 

 いや、そんなことよりも!

今は目の前にいる魔王ってやつを倒さないといけない。

一体誰だよ?こんなバカらしい罰ゲーム考えたのって……オレか。

 

 事の発端は、盛り場の路地裏に突然現れた一枚の木の扉だった。

ほんとうに、昨日まで何もなかったブロック塀に突然現れたんだ。

めちゃくちゃボロい木の扉には一枚の板が下がっていた。

 

 板の表面には、こう書いてあった。

【異世界への扉】

はぁ?ってやつよ。

オレはその時ちょうどダチとつるんで飲みに出てて、いい加減に酔っぱらってたんだ。

もちろん、ダチの野郎も酔ってる。

 

 「なんだよ?これ。はぁ?異世界への扉だって?マジかよ」

オレは看板の文字を読んで言った。

「なんだぁ?さとし。今さらの異世界か?だっせぇ」

「だよなぁ。でもさ、マジだったら……けんはどうする?」

 

 異世界という言葉はオレたちにはめちゃくちゃ馴染みがある。

馴染みというか、読んでるマンガも観てるアニメもみんな異世界ものだ。

むしろそういうものしか観ていない。

ださいって言った健も、そういうものしか手にしていない。

あれは……カッコつけで言ったとみた。

 

 いや、ふつうの小説があるのも知ってるよ?

半分以上寝てたからうろ覚えだけど、ソウセキだとかアクタガワという名前は記憶してる。

教科書でも読ませられた。

けど、あんなのつまんねぇし。

 

 というか文字ばっかの本なんて理解できねえし。

その点マンガやアニメは楽しいし、面白いし。

異世界ってのも憧れるじゃね?

非モテ野郎が超すげぇスキルもらったりして、魔物から美少女助けたりして超モテモテになったりとかさ。

 

 オレのような……ダチも含めてだけど、カノジョいない歴=年齢からしたら、夢のような憧れの世界なわけよ。

現実では不可能だけど、読んでる間だけはその世界にいる気分になれるしな。

 

 ……話がそれた。

で、板には続いてこんなことが書いてあった。

【扉をくぐったものには、ある指令ミッションが下される。指令をクリアできた者のみが再度扉をくぐる権利が与えられる】

 

 「指令かぁ。なんかマジで異世界っぽくね?」

健が言った。

「そうだけど、どんな指令かがわかんないとな」

「なあ」

 

 「っていうかさ、この再度くぐる権利って、どういうことだ?」

それまで黙ってたまことが言った。

「そのまんまだろ?もう一度扉をくぐれるってこと」

「いや、だから。向こうに行くのに一度扉をくぐるだろ?健」

「だな。そうしたらもう一度っていうのは……」

「こっちに戻ってくるときにくぐるってことじゃないかと思うんだ」

 

 「……指令をクリアできなかったら、戻ってこれないってことか?」

ブルったような声で健が言った。

「そう、かもしれないってことだけどね。聡はどう思う?」

信のやつ、オレにふりやがった。

 

 「知らねぇよ、そんなこと。気になるなら、試してみればいいだけだろ?」

健と信は顔を見合わせている。


 「じゃあさ、罰ゲームでだれか一人が扉をくぐってみるってのはどうだ?」

三人のうちふたりが残っていれば、万一の時も警察にでもかけこめる。

ふたりが全く同じ証言をしたら、警察もただの夢物語だと一笑にはふさないだろう──と、信じたい。

 

 「入るときからさ、動画に残しておくといいかもね」

信が言った。

「そうだな。それだったら安心だな」

健も同意した。

「だったら、なんのゲームで決める?」

 

 今までにも何度か『罰ゲーム』遊びはしてきている。

五百円使ってクレーンゲームで獲った景品数だったり、十分以内でナンパ成功だったり。

大食い競争に早食い競争もやった……そのすべてがドローだった。

 

 「いっそのこと、じゃんけんはどうだ?」

オレが提案した。

「小学生みたいだけどさ、いちばん確実に勝敗が決まるだろ?」

「ああ」

「そうだな」

 

 じゃーんけーんぽん!

健と信がチョキ。

オレは……パー。

言い出しっぺのオレが行くのか。

 

 「仕方ねぇ。行ってくるから、あとは頼んだぞ」

「オッケー!」

「きっと帰ってくるんだぞ」

……演歌の歌詞かよ。

 

 オレは扉の取っ手に手をかけて手前に引いた。

キィ。

軽い音を立てて開いた扉の向こうは、白く輝く光で満たされていた。

 

 扉の向こう側に足を踏み入れる。

パンパカパーン

ファンファーレが鳴り、どこかから声が聞こえた。

[いらっしゃいませ。異世界へようこそ]



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