第31話 カウントアップ

 直樹なおきの提案に、誰もが即答できずにいた。

 直樹は説得するのではなく、皆の考えがまとまるのをじっと待っていた。

 すると、先に手を挙げたのは、またしてもあおいだった。

「いいよ」


 それに続くように、莉奈りな亮平りょうへいも同意した。


「朝になったら、脱出を試みるか? 確か、三人以上はルール違反だと言っていたな? 二人が山を下りている間、二人はここで待機、ということで合っているか?」

「ああ」


「一人は私道を駆け下り、一人は……」

「日中、この辺りを見て回った時、人ひとりが通れるような獣道を見つけた。どこに繋がるのか分からないが、山道を下るならそこしかないか、と」


 と話している間に、山中に再び不穏な空気が流れ始め、四人は言葉を止めた。

 

 さわさわ、さわさわ……。

 またもや風もないのに、木の葉が揺れている。


 さわさわ、さわさわ……。

 その時だ――。



『いぃぃぃち』



 という女の子の声がこだまのように響き渡ったのだった。

「……っ!」

 四人は咄嗟に立ち上がった。



『にぃぃぃぃぃっ』



 何のカウントアップだ。

 あの子の遊びが始まるのか。

 かくれんぼか。鬼ごっこか。



『さぁぁぁぁぁんっ。フフフ……、フフフ……』

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