第24話 始まりを告げる声

 さわさわ、さわさわ……。


 木の葉が激しく揺らぎ始め、さすがの亮平りょうへいあおいもその異常事態に気が付いた。二人とも顔を引きつらせている。

 直樹がごくりと息を呑んだ。

 刹那、山奥から「フフフ」という笑い声が響き渡った。


 来た――。



『フフフ……』



 四人は立ち上がって、身を寄せ合った。

 直樹は歯を食いしばり、握りこぶしに力を込めた。

 葵は直樹のシャツにしがみついている。

 莉奈りなは、亮平の腕に自身の腕を絡めている。


 皆で息を潜めたその時だ。

 始まりを告げるあの子の声が、山中に響き渡ったのだった。



『だぁるまさんが、こぉろんだ……』



 その時だ。山頂から、ドガン、というけたたましい衝突音が聞こえた。

 直後、大きな物体が崖から転げ落ちていくような音がしたと思うと、


 ガシャン!


 という金属がひしゃげるような音が山中に響き渡り、四人は言葉を失った。

 この音が何を表しているか、想像に難くない。


 直樹なおき虚空こくうを見つめ、心の中で呟いた。

 事故だ。健人けんとが事故を起こしたのだ、と――。


 その証拠に、軽自動車が山荘に戻ることはなかった。

 先ほどまで聞こえていた木々のざわめきと笑い声は、いつの間にか霧散していたのだった。

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