第14話 山荘に戻る

 亮平りょうへいの豪快な笑い声と健人けんとの底抜けに明るい声が山中にこだまし、じゃりじゃり、という小さな足音はすっかり鳴りを潜めていた。

 振り返っても、あの子の姿はない。


 ほっとしている反面、あの子はいったい何だったのだろうと改めて思う。


 もし本当に道に迷っていたのであれば、あの子の家族が血眼になって探しているのではないだろうか。そうであるなら、警察も動くはずだ。こんな田舎町なら住民総出で探していてもおかしくはない。けれど、その様子は微塵も感じられなかった。


 やはり、あの子は見てはいけない類のものだったのではないか。ネットの都市伝説サイトに記載されていた通りの……。


直樹なおき莉奈りな! なんで、そっちから来た?」

「バス通りに降りて行ったんじゃねぇの?」


 何も知らぬ亮平と健人が、山道を降りてきた二人を見て、目を丸くしている。


 なぜかと問われても、分からない。逆に聞きたいくらいだ。そう思いながら、直樹は今しがた自分たちの身に起きたことを説明しようと口を開きかけたところで、莉奈が「帰るよ!」と一言放った。


 亮平と健人が、狂ったように荷物をまとめる莉奈と、どうしたものかと頭を悩ませる直樹を交互に見ている。 

 あおいは椅子から立ち上がり、狼狽えていた。

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