放逐TS転生元公爵令嬢のやりたい放題な日々

天露らいむ

プロローグ

 物心ついた時からなんでもできた。


 勉強やスポーツ音楽絵画造形美術やはやりの動画制作にプログラミング、それこそだ。


 子供のころは学校の勉強は授業で十分理解できたし宿題は休み時間にいつも終わらせていた。テレビ番組でピアニストがかっこいい音楽を奏でているのをみて興味本位に手を出してはその通りにひけるようになったり高校や大学ではカードゲームブームやオンラインゲームに手を出して全国レベルの成績を出すこともあり、いつもの成果を出すことができた。


 そのせいか……どうしても飽きっぽかった。


 いつもそこそこの結果で満足してしまい、決して長続きしなかったし極めることなんて出来っこなかった。テストで満点は取れずピアノはできて猿真似程度、カードゲーム大会では優勝できずに引退したしオンラインゲームでも上位の維持はできなかった。


 正直に言うと、この飽きっぽい性格にコンプレックスを持っていた。


 どんな事でも心の底から楽しむことができなかったのだ。


『楽しんで、努力して、必死になって結果を出している彼らが羨ましい』と、いつもそう思っていた。


 でも結局そこそこの人生を歩んでいる自分に満足してしまっていたのだ。


 そんな折、40代半ばを過ぎてこのまま自分の人生を無難に歩んでいくのかと悟りかけた矢先、体が病魔に侵されていることが発覚した。


 末期の癌だった。ここ数年の忙しさを理由に会社の健康診断から逃げていたツケだったかもしれない。もう少し早く診断を受けていれば初期治療を期待できたかもしれないが今更だ。


 普通の人ならどうするのだろう。生きるために足掻いたり死を前にして絶望したりするのだろうかもしれないが……


 病院帰り、夜の高台でコンビニで買ってきたペットボトルのコーヒーを一口飲む。

 夜景を眼下にほっと一息吐いた息は白かった。


「生きるのにも飽きたなぁ」そう呟いた。


 重く分厚い雲に覆われた夜空に溶けていくはずだった呟きは一人?の闖入者に拾われた。

 白い呟きが夜空に消えていく先を目で追った夜空に、一匹の白黒の猫が浮いていたのだ。


「もったいないなぁ!キミの魂とその才能、活かしてみない?」


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