第四話 アビサルモー

 それから三十分ほど歩いた後、馬車に乗って、ダンジョンへ向かった。

 目的地の直前で馬車を降りて、それからさらに十分ほど歩いて、ようやく今回の仕事先に到着した。


 目の前に、豪奢な作りかけの建物がそびえたっている。

 いちおう二階建てのなのだが、二階部分が柱が何本か建っているだけで、あとはがらんどうだ。

 一階部分もぼろぼろで壁の塗装がいくつかはがれているのだが、白を基調としたこの建物は、どこか神聖さを感じさせる。

 隣りのニコラハム君がその建物を怪訝な表情で見上げて、言う。


「ここ、もとは何の建物だったんでしょうか?」

「たしか、もともとは神殿か何かを作るつもりだったらしいよ、それが建設途中で事故が多発したり、建設を担当していた会社が破産したりで、建造が中止になったんだって、で、中止していた間にモンスターが地下に住み着くようになって、そのまま放置されちゃったらしいよ」

「へー」

「ここの地下の二層が最終目的地ね、そこの回復ポイントを新しいのに変えないといけないわ、いい? これからダンジョンに入るけど、私からくれぐれも離れないでね?何が起きてもばにっくにならないように、常に冷静でいることが大切よ」

「は、はい」

「そうだ、入る前に、お互いの能力を確認しておきましょうか。私は攻撃魔法はほぼ使えなくて、防御魔法がメインね、その防御魔法も効果範囲は私を覆うくらいしかないから、モンスターが攻撃する際は私の後ろに隠れておいて」

「はい、承知しました」

「ニコラハム君はどんな魔法が使える?」

「僕は炎魔法が使えます、と言っても、初級魔法のファイヤーボールしか使えませんし、威力も低いですが」


 うーん、正直微妙な能力だなぁ、まぁ私も人のこと言えるほど優秀じゃないが。

 まぁ有能だったらこんな会社に入らず、もっといい会社に入ってるか、もしくは冒険者になってるか。

 今後の成長に期待するとしましょう。


「わかったわ、場合によってはファイヤーボールを使ってもらうことになるかもしれないから、心の準備をしておいてね」

「はい!」

「うむ、いい返事で大変結構、じゃ、ダンジョンに入りましょうか」


 建物の中に入ると、広々としたロビーに出た。少し先に、二回へ続く大きな階段と、その横に、地下へと続く階段がある。

 私たちは地下へと続く階段を進んだ。

 長い階段を下ると、薄暗いところに出た。

 私は光魔法が込められた魔道具を取り出す。

 これはホタルという虫の形をした魔道具で、これを起動すると、お尻が光る虫が起動した人物の周りを飛んでくれるのだ。

 その虫型の道具の下腹部にあるボタンを押すと、光が出して宙に浮き、先の道を照らした。


「さ、いくわよ」

「便利ですね、この魔道具」


 私たちの周りを飛ぶ、光を出す虫を眺めて、ニコラハム君が言う。


「ニコラハム君はあまり魔道具について詳しくない?」

「そうですね、全然知らないと思います」

「それじゃあ魔道具についても勉強した方がいいわね、私みたいなほぼ防御魔法しか使えないみたいな、

使用できる魔法に偏りの多い人は弱点を補えるから大事よ」

「勉強になります」


 と、メモを取るニコラハム君。


「メモを取るのはいいけど、ここは危険なダンジョンの中だから、前後左右を常に見てないとだめよ。

メモを取るのはダンジョンを出てからのほうがいいかな」

「なるほど、わかりました」


 とそれもメモ帖に書くニコラハム君。

 いや、わかってないじゃん、と私は隣にいる新人が不安になった。


 どうしよう、この子、だいぶ無能な感じがするんだけど、大丈夫かな。

 ま、まぁ、新人なんて最初は無能で当たり前か。

 と私は大目に見ることにする。

 メモを取り終えると、ニコラハム君はきょろきょろと辺りを見て、


「ここって、もとは神殿を立てるつもりだったんですよね? なんでこんな膨大な地下があるんでしょうか?ここで何をするつもりだったんですかね?」

「それは……」


 カタコンベを作るつもりだったとか、なんらかの宗教的な儀式を行うつもりだったとかいろいろ考察はされているのだけど、この建物の建造には当時の宗教組織とか政府とか他にも素性のよくわからない怪しい団体とかがいろいろ関わっていたみたいなので、けっこう深い闇を感じさせる問題なんですよね。

 そのためここで人体実験をしていた、とか、裏の政府がここで秘密の談合をしていた、とか、陰謀論的なことをいう人たちもいる。


 以前、この地下について詳しく研究し、考察していた考古学者の人が一人、数年前に行方不明になっていて、陰謀論者たちは闇の組織に消されたんだとはしゃいでいたが、真相は謎のままだ。

 まぁ、結局、何のつもりで作られたか、現状ではわからないとしか言いようがない。


「ニコラハム君、世の中にはね、知っていいことと知らなくていいことがあるのよ?」


 と言うと、「は、はぁ……?」とニコラハム君は困惑した表情を浮かべた。


「さて、楽しいおしゃべりはここまでよ、ニコラハム君、前を見て」


 前方からスライムがヌルヌルの体を這うようにして私たちのほうに向かってきている。

 ニコラハム君が体をびくっと震えさせる。


「ひっ、も、モンスター」

「あの程度のモンスターでおびえちゃだめよ、冷静に対処すれば、なんてことない相手なんだから」

「そ、そうはいっても、僕、モンスターと戦うなんて、初めてで」

「大丈夫、私の言うとおりにしていれば、なんてことないから。私の後ろに隠れて、ファイヤーボールの呪文を詠唱しておいて、私が防御魔法で相手の攻撃を防ぐから、その隙をついて魔法を放つのよ、いい?」

「わ、わかりました」


 と頼りなくはあるが、ニコラハム君はいちおう戦う顔になった。

 じゃ、私も防御魔法をいつでも出せるように準備しておきますか。

 手のひらに魔力を込めておく。

 私の後ろにニコラハム君が隠れ、呪文を詠唱し始めた。


「火の聖霊よ、我、貴殿の力を欲す、目前の敵を焼き払う力を貸し与え給え――」


 後は魔法の名称を言うだけ、という状態までニコラハム君は準備した。

 スライムが私たちの前まで来て、とびかかってくる。

 その瞬間、私はプロテクションを発動した。

 ガンっとスライムの体が見えない壁に当たり、反動で何歩分か後退した。


「今よ、魔法を放って!」

「ふぁ、ファイアーボール!」


 ぼんっと火の魔法をニコラハム君は放った。

 スライムは炎に包まれて、少しして、跡形もなく消えていった。

 私はほっと一息ついた。


「や、やった、倒せた、案外モンスターを倒すのって、楽勝なんですね」

「こら、調子に乗ったら駄目よ、スライムなんて弱い方なんだから、気を引き締めてね」

「はい、わかりました!」


 と浮かれた調子でステップ気味に歩く新人君。

 うん、返事はいいけど、ちゃんとわかってるんでしょうか?

 これはモンスター倒したの失敗だったかな?


 いつもはいちいち雑魚モンスターを相手にせず、避けながら進んだり、防御魔法で攻撃を防ぎながら進むのだけど、今回は新人も同行しているし、私が避けられてもニコラハム君は避けられない可能性もある。

 ニコラハム君はファイヤーボールが使えると言っていたし、倒すこともいい経験になるかなと思って、今回は倒すことにしたのだ。


 だけど……

 じとっと目の前で上機嫌に鼻歌なんて歌いながら、前後左右をろくに確認せずに前を歩いていく新人を見つめる。

 うん、やっぱり失敗だったかも。


 油断は大きな失敗を生むんですよねぇ、危険なことにならないといいけど。

 まぁ、今回は二層までなので、そんな強いモンスターと遭遇しないはずなので、大丈夫か。

 と思い、私は「こら、私の前を歩かない」とニコラハム君を注して、彼と隣り合わせでダンジョンの奥へ進んだ。


 それからも、何度か敵に遭遇したが、似たような作戦で倒していった。

 一時間ほどして、第二層に到達した。

 二層ではあるのだけど、あまり景色は一層と変わらない。

 ニコラハム君が隣の私を見て、言う。


「ここって何層まであるんですか?」

「第10層まであると言われているけど、実際はどうかわからないわ、もっとあるのかもしれないし、もっと少ないのかもしれない。私は5層までしか行ったことないからその先はわからないわ」

「なんか一層と二層で違いはあるんですか?」

「モンスターが若干強くなる。といっても、一層と二層じゃ大した差はないわ、

第三層からはモンスターが一気に強くなるわよ、潜れば潜るほど、強いモンスターが出てくると言われているわ」

「そうですか、今回は二層までなんですよね?」

「ええ」

「なら安心ですね」

「まぁそうなのだけど、油断はしないでね?」

「はい!」


 と相変わらず返事だけはいいニコラハム君。

 ほんと不安を感じさせる子だなぁ。

 はぁ、まったく新人との仕事なんて気苦労が絶えませんよ。

 次、研修を頼まれそうになったら、断ることにしましょうかね。


 そんなことを考えながらも前後左右の警戒は行わずに、私は前へ進んでいく。

 回復ポイントを貼り替える場所はここからもう少し先のところにある。

 まぁでもここまでくれば、もう少しで仕事は完了する。あとは数十分くらい歩いて、回復ポイントを張り替えて、ダンジョンから出るだけだ。


 と少し私は気を緩めてしまった。

 仕事はもうすぐ終わるというときこそ、警戒しないといけないということを以前、課長に言われていたというのに。


 第二層を奥に進んでいき、もうすぐ回復ポイントがある場所に着く、というところで、前方から不穏な気配がした。

 ぞくっと体に怖気が走る。


 強力なモンスターはそこにいるだけで重たい空気にさせる。

 たぶん、大気中にある魔力の元である魔素の流れが、その魔物の放つ魔力で、乱れているのだろう。

 新人君はこの重圧を感じていないようで、どうかしましたか? と能天気な顔を向けてくる。


「新人君、前を見て」

「へ?」


 ニコラハム君が前を見る。

 顔の中心に大きな口が開いた禍々しい姿の怪物が、のっしのっしとでかい頭には見合わない短い足でこちらへやってくる。


 あれは、たしか……アビサル・モー。

 たしか六層以降にいるモンスターだったはず、なんでこんな下層に……。

 くそっ、よりにもよって、新人がいるときに、こんなトラブルに遭遇するなんて!


「な、なんですか、あのやばそうなやつは!?」


 新人君が目をぎょっと見開いて、あわあわとしだす。


「アビサル・モーよ、本来、こんなところにはいない奴なんだけど……」


 アビサル・モーが私たちを視認して、立ち止まると、大きな口をがばッと開いた。

 あっ、なんか絶対やばい攻撃がくるやつだ、これ。

 防御魔法をすぐに展開しないと……。


「ニコラハム君、私の後ろに隠れ――」

「ひぃぃぃぃっ、き,聞いてないですよ、あんなやばそうなモンスターがいるなんて!」

「あっ、ちょっと、私から離れないで!」


 ニコラハム君が後ろに向かって、走り去ってしまう。

 アビサル・モーの口から何か衝撃波のようなものが放たれた。

 私はあわてて「プロテクション」と唱えて、防御魔法を眼前に展開したのだが、私の方には来ず、

 背後で走り去っていたニコラハム君の方へ行った。


「へ?」


 間抜けな顔をニコラハム君が浮かべ、その直後、衝撃波は命中した。


「ぎゃあぁぁぁあぁっ!」


 と鼓膜が破れそうなほどの絶叫が響き渡る。

 血しぶきを激しく上げて、ニコラハム君は吹っ飛んで、地面を転がっていった。

 それから、彼は地に伏したまま、まったく動かなくなってしまった。


 体中から冷や汗が流れる。

 ど、どうしよう、あれ、死んじゃったよね、たぶん。

 ああ、もう、これだから新人を連れていくのは嫌だつたんですよ。

 私の言うことを守らないからこうなるのですよ、まったくもう!


 帰ったら課長に怒鳴られるんだろうなぁ。

 きっと始末書も書かされるだろう。

 見た感じ、そこまで体の損傷はないし、あれなら蘇生魔法で生き返らせることができるでしょうが、でも、蘇生は基本的に教会でしかできないし、すごい高額なんですよねぇ。

 よく利用させてもらっている教会の神父様がすごく嫌な奴なので、できればあそこ行きたくないんですよねぇ。


 と憂鬱な気分になっていた時、大きな魔力を前方でまた感じた。

 前を向くと、アビサル・モーがまた大口を開けて、二回目を放とうとしている。

 今度は私を屠ろうというわけですか、今はあれこれ考えている場合じゃないですね。


 私は衝撃波がやってくる直前で、プロテクションを発動した。

 いちおう攻撃は防げたのだけど、勢いは殺しきれず、何歩分か後退する。

 たぶん、このまま防御していれば死ぬことはないでしょうが、これからどうしましょうね。

 防御魔法を使えるのはあと五回といったところですし、帰りに敵と遭遇する可能性もあるので、できるだけ残量を残しておきたいところ。


 うん、非常にやばい状況ですね、このままだと仕事を完了できません。下手したら私も死ぬことになるかも。

 回復ポイントはこの先、ちょうどアビサル・モーの後ろくらいにあります。

 なんとかしてあいつをどかさないといけません。


 なんか使えそうなアイテムないかな、とバッグを探っていると、今朝入れた激辛玉が目に入った。

 これ、あいつに効くんでしょうか?

 まぁ、試しに使ってみますか。幸い、あのモンスターなら口に入れやすいですし。


 アビサル・モーーが再び口を開けた。また衝撃波を放つつもりなのでしょう、その口に、私は激辛玉を放り投げてみた。

 あまりコントロールに自信はないのですが、的が大きいのが幸いして、見事にあの大口の中に入りました。

 その直後、


「ぐおおおおおお!」


 悲鳴を上げ、アビサルモーはのたうち回った。

 あ、これ、効くんだ。

 今のうちに、回復ポイントを張りなおしましょう。


 地面に倒れ伏せ、苦しそうにもがくアビサル・モーの後ろを通り、回復ポイントを急いで張りなおした。

 そして張りなおした後、ダッシュで後方へ行き、ニコラハム君が倒れた場所に行く。

 倒れ伏したニコラハム君を見る。呼吸をしていなかった。


 あー、やっぱり死んでるな、これ。怒られるの確定だ。はぁ……。

 ちらっと前を見ると、アビサル・モーはまだもがいていた。

 まだ苦しんでいるのですか、どれだけ辛いんだ、あれ?

 まぁでもその内回復するでしょうし、今のうちに逃げましょう。

 煙玉を取り出し、地面に叩きつけた。

 もくもくと煙が立ち込める。


 さて、急いで逃げましょう。

 ニコラハム君の腕をつかみ、彼の体を引きずりながら私は後ろへ逃げた。

 そのまま、死体をえっせ、ほいせと引きずって、三十分くらいして第一層まで下りて行ったところで、少し休憩することにした。


「ふぅ、ここまでくればもう大丈夫でしょう」


 と地面に腰を落ち着ける。

 その時、重大なことに気づいた。


 あ、血だらけの体を引きずってきたから、血がぽたぽたと落ちているな、

 このままだと血の跡を追ってくるかも。

 私は今朝、バッグに入れておいた大きな袋を取り出した。

 これは死体袋、死体を見つけたときに、持ち運びやすくしたり、人目につかないようにするためのものです。


 いつもは持って行ってないけど、今回ニコラハム君がいるので死んだときの場合を考えて一応バッグの中にいれておいたのだ。

 本当はひとりで任務に行くときも持って行かないといけない。

 ダンジョンとかで冒険者の死体とかがあったら、極力それを回収するように言われているからだ。


 でも、死体を運ぶのは大変なので、だいたい私は放置している。

 まさか使うことになるとはね、はぁ。


 私は袋に死体を入れて、また歩き出した。

 休憩はもう少し先でした方がよさそうですね。

 それから何度か休憩をはさんで、ダンジョンを出て、会社に戻ったのは数時間後のことだ。


「ただいま戻りましたー」


 と私は死体袋を引きずって課長の前まで来ると、課長が何それ、とニコニコとした顔で訊いてきた。


「ニコラハム君です、死なせちゃいました、てへ」

「てへ、じゃねぇよ、なにやってんだおまえぇぇ!」

「ひぃぃ、ごめんなさいごめんなさぁぁい、でも、聞いてください、これには事情が!」


 私は今回の仕事の詳細を語った。

 その際に、新人のニコラハム君がいかに無能だったかを少し盛って話した。


「ふむ、たしかにニコラハム君の行動には、いろいろ問題があっただろう」

「で、ですよね、私、悪くないですよね?」

「だが、新人は至らないところがあって当たり前だ。それをフォローするのが先輩の役目だろうが」

「うっ」


 た、たしかにそうかもしれません。

 このハゲ、なんだかんだいって正論を言うから嫌なんですよね。

「今回の件はお前に大きな責任がある、始末書確定な」

「そんなー」

「あ、でも、始末書の前に、ニコラハム君を蘇生させないといけないな、あと、第二層にアビサルモーがいたということは冒険者ギルドに報告しておいた方がいい、教会に行って蘇生した後で、冒険者ギルドに行ってくれ」

「げぇー、私、あの毒舌イケメン神父嫌いなんですよー、顔だけはいいのがなおさらむかつくんですよねー」

「わがまま言うな、これはお前への罰も込めてるんだぞ」

「はぁ、しかたないですね」

「ちょっと待って、蘇生しに行くの? その前にその死体、ちょっと絵にさせて!」


 とメリンダさんが筆と髪を持ってしゅばってきた。

 そして死体袋を開けて、仲の死体を見ると、彼女は目をきらきらと輝かせた。


「素晴らしいわ……急いで絵にするからちょっと待ってて」


 と凄まじいスピードで絵を描いていく。

 私も課長もドン引きしていた。


「私は金庫から蘇生にかかる費用を引き出してくるから、手短に済ませるんだぞ」


 と言って課長は奥の倉庫に消えていった。

 十分くらい経過して、課長はジャラジャラと音がする袋を持って戻ってきた。


「ほら、これが蘇生費用だ」

「これ、いくら入ってるんですか?」

「金貨十枚だ」

「えー、そんなにいるんですか、前より高くなってないですか?」

「最近、値上げしたらしいんだよ、もうこれ以上、こんなことが起きないようにしろよ、蘇生ばかりしていたら赤字になってしまうからな」

「はーい」


 メリンダさんはいまだ絵を描いている。


「メリンダさん、まだですか」

「もうちょっと、あと三十分待って!」


 三十分……。

 こうなると何を言ってもメリンダさんは止まらない。

 しかたないので、私はその間に机で事務作業をすることにした。

 そして四十分後くらいして、メリンダさんは私に完成した絵を見せてきた。


「できたわ、見て見て、リシアちゃん、よくかけてるでしょ?」

「あーはいはい、そうですね」

「もっとよく見てよ!」

「あーはいはい、見ました、すごいですねぇ、あ、教会に行かなくちゃ、私」


 席を立ち、死体袋を引きずって、私は教会へと向かった。

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