第21話 あたしがグランディの下僕に?! ファルネーゼ視点

【ファルネーゼ視点】


「冗談じゃないわよ……っ!」


 クロード殿下が負けるなんて、あり得ない。

 絶対にあり得ないことだった。

 なのに……それが現実になってしまった。


 (もしかして……あたし、すごくピンチじゃない?)


 こういう時は――逃げるが一番。

 とにかく今は逃げて、あとで対策を練れば……


「さ。ファルネーゼ様。前に出てきてください!」


 アリシアがあたし呼ぶ。


「…………」

「あれ? ファルネーゼ様?」


 観客席の真ん中にいたあたしは、コッソリ逃げ出そうとする。

 姿勢を低くして、アリシアに見つからないように……


【あっ! ファルネーゼ様が逃げようとしているわ!】

【逃げんなよ! ファルネーゼ様!】

【ファルネーゼ様の裸……じゅるっ!】


 あたしの取り巻きたちが、騒ぎ出してしまう。


 (ウソでしょ……? あたしを裏切って……)


 今までいろいろしてあげたのに……っ!

 取り巻きたちに手のひらを返されたあたし。


「ファルネーゼ様! まさか逃げようしているんですかー! 早くこっちに来てください!」


 アリシアが嬉しそうな声で呼ぶ。


「に、逃げようとなんてしてないわよ! 今、そっちに行ってやるわ……!」


 (ぐぐぐ……! ムカつくぅ……っ!)


 平民のくせに、あたしに指図するなんて……!

 あたしは(渋々)決闘場へ行く。


「で、何よ? あたしに用でもあるわけ……?」

「えっ? 忘れたんですか……?」


 アリシアが驚いた顔をする。


「忘れたって、何を……??」


 このままとぼけよう。

 うん。あたしは何も約束していない。

 あたしは何もかも、(都合の悪いことは)忘れるんだから……っ!


「賭けのことですよ。もしかして……忘れたフリですか?」


 (……ギクっ!!)


 アリシアがあたしに迫ってくる。

 忘れたフリして、なんとか切り抜けないと……!


「誓約魔法をシドさんと取り交わしたと思うのですが」

「せ、誓約魔法……? 何のことかしら……?」

「ファルネーゼ様の左手に、誓約魔法の刻印があるはずです」

「そ、そんなのないわよ……っ!」


 とっさにあたしは、左手を隠す。

 たしかにあたしの左手には、誓約の刻印がある。


「さあ、左手を見せてください」


 アリシアがあたしの左手を掴む。


「いやよ。なんでアンタに手を見せないといけないのよ……っ!」

「……ふう。ファルネーゼ様、本気ですか……?」


 やれやれと、アリシアが呆れた表情をする。


 (アリシアのくせに……何様のつもりよっ!)


 あたしはどんどんムカつてくる。


「へ、平民のアンタに手を触れたら、手が腐るわよ! 触らないで……っ!」


 アリシアの手を、あたしが振り払うと、


「バッカもおおおおおおおおおおおおん……っ!」

「ひい……っ!」


 あたしとアリシアのやりとりを見ていた国王陛下が、キレてしまう。


「平然と平民を差別するとは……っ! お前は本当に侯爵令嬢なのか? 馬鹿者がぁ!」

「す、すみません……っ!」


 国王陛下に、叱られるあたし。


 (なんであたしが怒られるのよ……っ!)


 全部、準男爵と平民に負けたクロード殿下が悪いのに!


「さっさと左手を見せなさい。これは国王命令だ!」

「ぐ……わかりました。見せます」


 国王陛下に言われたら仕方ない。

 あたしは左手を国王陛下に見せる。


「ふむ。たしかに、誓約の刻印があるな。では、お前はどんな誓約したのだ?」

「そ、それは……」


 (言えるわけないじゃない……)


 裸で踊る――あたしはあの時、そう言った。

 まさかあの時は、クロード殿下が負けるなんて思っていなかったからだ。


「ファルネーゼ様は、【裸で踊る】と言っていました」


 アリシアが横からさらっと言う。


「えっ? ちょっと! い、言わないでぇ……っ!」


 あたしは顔がすごく熱くなる。


 国王陛下の前で「裸で踊る」と言われるなんて――っ!


 (た、耐えられないわ……)


 あたしは意識が吹っ飛びそうになる。


「なるほど……そうか。お前は【賭けで負けたら、裸で踊る】という誓約をしたのだな……。ならば仕方あるまい。ファルネーゼ侯爵令嬢には、裸で踊ってもらって――」


 国王陛下が、ドン引きしがら言う。


「いやだあああああああああああああああああああ!!」


 あたしは叫んでしまう。


 (侯爵令嬢のあたしが、準男爵の前で裸になるなんて……無理っ!!)


「……国王陛下。いくらなんでも女の子を裸にするのはダメです」


 グランディが、国王陛下に言う。


 (えっ? もしかして、あたしを庇ってくれるわけ……?)


「しかし、ファルネーゼは誓約した。貴族が誓約を破ることは許されない」

「俺は……賭けなんてどうでもいいんです。ファルネーゼがアリシアいじめをやめてくれたら、それで構いません」

「グランディ殿、キミは本当に優しいな。キミがそう言うなら――わたしが誓約の内容を修正しよう。二人とも、刻印のある手を出しなさい」


 あたしとグランディは、国王陛下の前に手を出す。


「……契約、修正。ファルネーゼはアリシアをいじめない。そして――ファルネーゼは、グランディ殿の【下僕】とする!」

「げ、下僕?! あ、あたしが? グランディの?!」

「そうだ! ファルネーゼよ。お前の貴族にあるまじき愚かな言動の数々……! お前はグランディ殿の下僕として側に侍り、その腐った性根を叩き直すのだ……っ!」

「い、いやです……っ! 侯爵令嬢のあたしが、格下の準男爵令息に仕えるなんて……」

「ならば、当初の誓約通り、裸で踊るか?」

「そ、それは……」


 横にいるグランディをちらっと見ると、かなり驚いている。

 グランディだって、きっと嫌に違いない。


「国王陛下……ファルネーゼ様は、今までシドさんを、散々バカにしてきたんですよ? そんな人をシドさんの側に置くなんて……絶対ぜったい反対ですっ!」


 アリシアが、猛烈に反対する。


 (妙に強く反対してくれるわね……?)


「これはもう決めたことだ。優れたグランディ殿に仕えれば、腐った貴族のファルネーゼも、立派な貴族に生まれ変わる! グランディ殿、引き受けてくれるな?」


 ポンっと、国王陛下はグランディの肩を叩く。

 さすがのグランディも、国王陛下にここまで言われたら……


「……わかりました。引き受けます」

「ありがとう! この腐れ侯爵令嬢を、再教育してくれ!」


 国王陛下は、グランディの手を強く握る。


 (ど、どうしてこんなことに……?)


 グランディをあたしの【犬】にするはずだったのに、これではあたしが逆に、グランディの【犬】になってしまった……

 信じられないわ……!


「あと、もうひとつ、グランディ殿に頼みがある。グランディ殿に、我が国の外交官となってもらい、バレンシア帝国との交渉を任せたいのだ」


 (ウソでしょ……?!)


 バレンシア帝国は、この王国の隣にある強大な国。

 バレンシア帝国との外交を任されるのは……王位継承者候補が慣例だ。


「グランディ殿と、アリシア、我が娘のシャルロッテ、そして――腐れ下僕女のファルネーゼを連れて、バレンシア帝国へ行ってくれ」


 (あ、あたしのことを【腐れ下僕女】呼ばわりなわけ……っ!)


 いくらなんでも酷すぎない……?


「ち、父上! バレンシア帝国との外交は、わたしに任せたはずじゃ……」


 クロード殿下が割って入ってくるが、


「バカもん! 決闘で負けた無能なお前に、重要な任務を任せられると思うか!」

「し、しかし……グランディは準男爵令息ですよ? 準男爵令息に外交を任せるなんて――」

「有能な者に任せるのは当然だ。これ以上、お前は文句があるのか……?」


 国王陛下が、クロード殿下を睨みつける。


「ぐ……っ! 父上の言う通りです……」

「よし。では、グランディ殿を我が王国の外交官に任命する! 我が王国の運命はグランディ殿にかかっておる。期待しておるぞ!」


 (くぅ~~っ! あたしがグランディの下僕だなんて……っ!)



_________________

※ ファルネーゼの再教育が始めるのだった……


【★お願い】


1章完結です!


読者のみなさまにお願いがあります!


現在、この作品は異世界ファンタジーランキング7位っ!


大きく表示される異世界ファンタジー4位まで、あと少しです……っ!


何とか今日中に4位を取りたいっ! 

が、ここからの伸びが本当に難しいんです……っ。


この下にある【★で称える】から、1人★3つまで応援することができます……っ。★3つは、冗談抜きで本当に大きいです……っ!


どうかお願いします。


少しでも


『面白いかも!』


『続きが読みたい!』


『次の話も応援してるよ!』


と思われた方は、下の【★で称える】を3回押して、応援していただけると嬉しいです!


レビューもいただけると最高に嬉しいです!


今後も『毎日更新』を続けていく『大きな励み』になりますので、どうか何卒よろしくお願いいたします……っ。


明日も頑張って更新します……!

(今も死ぬ気で書いてます……っ!)


こちらもよろしくです!


序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

https://kakuyomu.jp/works/16817330669027010005


ダンジョン犯罪の犯人と決めつけられて配信されたけど、真犯人捕まえたら相手が炎上して俺の配信がバズった件

https://kakuyomu.jp/works/16818093073741238588


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